国家安全法制定でキャピタルフライトリスクがあっても元安を容認せざるを得ない中国

0

    JUGEMテーマ:国際金融情勢

    JUGEMテーマ:中国ニュース 

    JUGEMテーマ:中国

     

     今日は「国家安全法制定でキャピタルフライトリスクがあっても元安を容認せざるを得ない中国」と題して論説したく、まずは日本経済新聞の記事をご紹介します。

    『日本経済新聞 2020/05/28 16:21 中国、香港に「国家安全法」導入方針決定 全人代閉幕

     【北京=羽田野主】北京で開いた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は28日、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針を採択して閉幕した。中国が国家安全に関する機関を香港に設置して直接取り締まりができるようになる。香港で言論の自由が中国本土並みに制限され、高度な自治を認める「一国二制度」が形骸化するとして、米国や香港の民主派は反発を強めている。

     北京の人民大会堂で習近平(シー・ジンピン)国家主席らが出席して採決し、賛成2878、反対1、棄権6で可決した。方針には「外国勢力が香港に干渉することに断固反対し、必要な措置をとって反撃する」と明記。中国の分裂や共産党政権の転覆、組織的なテロ活動、外部勢力による内政干渉を禁止する。「中央政府の機関が香港政府に組織を設置し、国家安全に関連する職責を果たす」とした。

     李克強(リー・クォーチャン)首相は全人代後の記者会見で「決定は一国二制度を確保して香港の長期繁栄を守るものだ」と述べた。米中は「互いに核心的利益を尊重すべきだ」として、米国の介入をけん制した。

     6月にも全人代常務委を開き、立法作業を進める。9月に香港立法会(議会)の選挙を予定しており、夏までに成立させるとの見方が強い。中国共産党序列3位の栗戦書(リー・ジャンシュー)全人代常務委員長(国会議長)は「香港の同胞を含む中国人全体の利益となる」と述べた。

     香港の憲法といわれる香港基本法は23条で香港政府が自ら国家分裂や政権転覆などを禁じる法律を制定しなければならないと定める。香港政府は2003年に立法を試みたが大規模な反対活動にあい条例案の撤回に追い込まれた。

     19年には香港に逃げた容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」を巡り香港でデモ活動が長期間続いた。このため習指導部は香港政府が自力で国家安全に関する立法措置を進めるのは難しいと判断し、自ら制定に乗り出した。

     習指導部は香港基本法の例外規定を使い、中国本土の法律を直接適用する立法措置をとる。国家安全法の施行で、香港の抗議活動への締めつけがさらに厳しくなるのは確実とみられる。中国国営中央テレビ(CCTV)によると、中国軍の香港駐留部隊の司令官は同法に関して「分裂勢力や外部の干渉勢力を震え上がらせる」と強調した。

     全人代は例年3月5日に開幕するが、今回は新型コロナウイルスの影響で2カ月半遅れた。22日採択した政府活動報告では、20年の経済成長率の目標設定は見送り、景気対策として財政出動を拡大する方針を示した。』

     

     以前、◆世界各国がコロナ対応で苦慮する中で行われた香港民主派一斉逮捕と習近平国家主席国賓来日の再調整 でも触れさせていただきましたが、中国は5/28、ついに全人代で国家安全法を制定しました。

     

     2度と香港でデモを起こさせないため、2020年9月の立法会選挙で民主派が多数を占める状況になる前に、急いで国家安全法を制定し、香港の自治に関与して、自由な言論活動を統制しようというもので、これはとんでもない話です。

     

     そのことによって中国経済はどうなるのか?米国の制裁などで中国経済は崩壊してしまうのでしょうか?

     

     見ておくべきことは2点あると考えられます。それは人民元安と輸出の減少の2点です。

     

     まず為替について見ていますと、人民元安に向かっていますが、人民元安によって中国国内に投資された外国資本の投資が流出する可能性があります。

     

     人民元の為替レートは、1ドル=6元台で安定しているのが中国共産党政府にとっては安定して居心地がいい水準なのですが、先月5/29には、1ドル=7元台となり、人民元安ドル高のトレンドとなっております。

     

    <人民元とドルのチャート>

    (出典:サーチナ)

     

     

     人民元は、米ドルや日本円と異なり、完全な変動相場制の通貨ではありません。マーケットが決める変動相場制ではなく、中国の中央銀行の人民銀行が、その日の朝に基準値を幅で決めています。固定為替相場制と変動相場制の間のような仕組みで、幅レンジで相場を管理しているのです。

     

     仮に1ドル=6.5人民元と基準値を決めますと、1日の変動幅は1ドル=6.5人民元の基準値から上下2%となります。基準値を決めるのはマーケットではなく、人民銀行が決めます。

     

     例えば2020/05/29は、基準値が1ドル=7.1316元だったのですが、これは元安のトレンドに設定されているということになります。

     

     なぜならば前日の2020/05/28は1ドル=7.1277元だったからです。日本経済新聞の記事をもう1つご紹介します。

    『日本経済新聞 2020/05/25 12:29 人民元基準値、12年ぶり安値 香港巡る米中対立懸念

     【上海=張勇祥】中国人民銀行(中央銀行)は25日、人民元取引の基準値を1ドル=7.1209元に設定した。2008年2月以来、12年3カ月ぶりの安値となる。前週来、香港問題や新型コロナウイルスを巡って米中対立が一段と激しくなるとの懸念から主に海外市場で元安が進んでいた。人民銀が容認する形で基準値に反映した。

     基準値は毎朝、人民銀が公表する。大手銀行などの報告をもとに算出するという形式をとっているが、実際には通貨当局の意思を反映しているとの見方が一般的だ。元安を批判するトランプ米政権へのけん制も念頭に、輸出下支えにもなる元安を一歩進めた。

     25日午前の取引では国内市場で一時1ドル=7.14元、海外では同7.15元まで元安が進んだ。19年秋には突破しなかった1ドル=7.2元台の元安を当局が認めるかが当面の注目点になる。』

     

     日本経済新聞の記事の通り、トランプ政権へのけん制を念頭に、輸出を下支えするために元安を中国の当局が容認する旨が報じられています。2020/05/25に設定された基準値1ドル=7.1209元という水準は、2008年2月以来の12年3か月ぶりの安値と報じられています。

     

     中国当局は人民元を望んでいるか?といえば、諸刃の剣で中国の輸出に有利というメリットがある一方で、人民元安によって他国の資本の流出(キャピタルフライト)というデメリットがあります。

     

     中国共産党政府の高官などの幹部は、もともと人民元の価値を認めておらず、米ドルに換えて海外の口座に貯めています。もし人民元安トレンドがさらに進むようであれば、中国共産党政府の幹部らが海外にお金を流出させることを促進するのみならず、他国が中国に投資している資金を引き上げようとする動きも出てくるでしょう。

     

     人民銀行は元安方向に誘導しようとしながら、一方で過度な元安とならないよう微妙に基準値を設定しているとみることもできます。

     

     その状況下で為替市場の基準値を決める際に考慮しなければならなくなったのが、香港に対する国家安全法の制定です。

     

     トランプ大統領は中国に対して制裁を発表し、中国の輸出を減らさせる制裁を発表しました。

     

     中国はGDPの5割以上を輸出が占める輸出立国であるため、国家安全法制定で米国から輸出減少につながる制裁を受けるならば、輸出減少を食い止めるために、たとえキャピタルフライトのリスクがあっても、国家安全法制定によって米国の制裁によって元安に誘導せざるを得ないのです。

     

    <外貨準備高ランキングTOP10>

    (出典:グローバルノート)

     

     上記グラフの通り、外貨準備高を見ますと、下記の通りです。

     

    1位中国:3兆2,223億ドル

    2位日本:1兆3,222億ドル

    3位スイス:8,547億ドル

     

     世界一の外貨準備高を誇る中国ですが、世界の工場として外国に中国製品を売りまくって外貨を獲得してきました。その外貨がどんどん貯まって世界一の外貨準備高となりました。

     

     実は中国にとって外貨準備高は非常に重要な指標です。日米は外貨準備高に関係なく、管理通貨制度の下で自由に通貨発行ができます。

     

     一方で中国はそういうわけにいきません。中国は発展途上国でかつ人民元が完全な為替変動相場制の通貨ではなく、しかも経済を他国への輸出に依存しているため、 外貨準備高に比例して人民元を発行しているのです。

     

     輸出依存で外貨を稼いだ中国にとって、輸出への依存が起きすぎているため、輸出が激減した場合に、3兆ドル強の外貨準備高を抱えていても不足する可能性があって、全く安泰ではないのです。

     

     企業のキャッシュフローを考える場合、手元資金を豊富に抱えてキャッシュリッチの状態だったとしても、突然何かが発生して、急に収入が断たれ、売り上げが激減し、手元に資金が無くなって倒産するということが起こり得ますが、内需ではなく外需に依存した状態で、外需が激減するとなれば、同じようなことが中国という国家の中で起きる可能性があります。

     

     何しろ新型コロナウイルスの影響で、世界の貿易は減少方向(スロートレード)に向かっているため、中国製品が売れなくなって輸出が激減している状態です。

     

     そのため、中国当局はキャピタルフライトのリスクがあっても元安に誘導せざるを得なくなって、1ドル=6元台→7元台に容認せざるを得なくなっているのです。

     

     

     

     というわけで今日は「国家安全法制定でキャピタルフライトリスクがあっても元安を容認せざるを得ない中国」と題して論説しました。

     今から遡ること15年以上前に、私は2004/11/30に初めて香港株の江蘇省高速道路有限公司の株式を購入し、翌年2005年に買い増しして、以来ずっと中国経済について指標などをウォッチしていましたが、今の状況は非常に危ない状況で、中国が香港の自由を縛る国家安全法を制定している時点で、間接投資の株式のみならず香港への直接投資そのものを見合わせて、むしろ投資を引き揚げることを検討すべきではないか?というのが私見です。

     欧米諸国が安全保障強化で、本気で中国を潰しにかかっている状況で、国家安全法を制定しようとしていることは、海外の投資家からすれば中国への投資魅力の激減以外の何物でもありません。

     私は2019年に香港のデモが報じられて以降、香港株は全株売却しました。3倍以上で売れてめちゃくちゃ儲かりましたが、そもそもこの期に及んで中国への投資を継続することなど、人権弾圧に手を貸しているようなものであり、私は売却は正しかったと思っております。

     

     

    〜関連記事(香港株)〜

    香港株の江蘇省高速道路有限公司(証券コード:0177)とインフラ会社の民営化

     

    〜関連記事(コロナウイルス関連)〜

    世界各国がコロナ対応で苦慮する中で行われた香港民主派一斉逮捕と習近平国家主席国賓来日の再調整

    台湾を排除するWHOに対して166億円の緊急支出をした安倍政権

    WHOのパンデミック宣言が1ヶ月以上も遅れた真の理由(パンデミック債について)

    日本政府・安倍政権がオリンピック開催のためにWHO拠出した166億円で得たものは?

    必死になって習近平に不愉快にさせまいと中国人の入国を禁止しない安倍首相

    日本国民の人命よりも”オリンピック開催”と”財政再建”を優先する安倍政権

    中国におもねて忖度する安倍首相と違って中国と戦った聖徳太子

    新型肺炎コロナウイルスの対策における台湾の素晴らしい政策と能天気な日本

    新型コロナウイルスについて海外メディアはどのように報じているか?

    地獄と化した武漢の真実が日本に伝わらない理由(日中記者交換協定について)

     

    〜関連記事(中国による人権弾圧)〜

    中国の習近平ではなく台湾の蔡英文総統を国賓として招聘すべきでは?

    中国は反日で、台湾が親日である理由とは?

    米国務省による台湾への大量の武器売却について

    ブルームバーグ紙が報じる香港への人民解放軍動員の可能性

    国際社会は香港問題について、英国と約束した一国二制度を、中国に守らせるべき!

    香港で起きているデモの本当の狙いとは?

    中国ウイグル自治区の再教育キャンプで行われているウイグル人への拷問

    中国共産党によって人権と民主主義が脅かされている香港を支援する米国と何もしない日本

    ”逃亡犯条例改正案”に反対している香港のデモ活動は日本人にとって他人事ではない!

    トランプ大統領の国連の武器規制条約からの撤退の意味とは?

    「高度な能力や資質を有する外国人を受け入れる」の欺瞞と「中国による洗国(せんこく)」の恐怖

     

    〜関連記事(日本の対中政策)〜

    台湾の地政学上の重要性を理解している米国と、カネ儲け優先で理解しない愚かな日本

    日中通貨スワップは誰のため?

    中国の一帯一路の被害国を増やすことに手を貸す日本企業と、中国とのプロジェクトを決別宣言したマレーシア

    中国の公平でないグローバリズムに強硬な姿勢をとる米国と、製造2025をビジネスチャンスと考えるアホな国

    中国のAIIBと一帯一路に手を貸す銀行・企業は、中国の侵略に手を貸すのと同じです!

    血税3,500億円を突っ込んだジャパンディスプレイ社を800億円で中国企業に売ろうとしている日本の官民ファンド

     

    〜関連記事(中国という国の本質)〜

    ”タタールのくびき”と”従軍慰安婦””南京大虐殺”の虐殺性について

    中国はどれだけ経済発展したとしても民主化することは絶対にありません!

    権力のためなら平気で他人を裏切る人間が頻出するのが中国の歴史です!

    「中国は経済成長すれば、やがて中国人民が豊かになって民主化する」という言説と「沖縄はもともと中国の領土だ」という言説の真偽

     

    〜関連記事(中国の外貨準備高)〜

    中国の外貨準備高3兆ドル割れ

    中国の爆買い規制と400兆円の外貨準備高の中身について


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031 
    << July 2020 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    recent comment

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM