原子力発電所の炉型の違い(BWRとPWR)と東芝問題

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    JUGEMテーマ:経済全般

     

    今日は、東芝のウェスチングハウスの米国連邦破産法11条の適用申請に関連して、東芝問題を取り上げます。

     

    下記は3月29日配信の産経新聞の記事です。

    『(2017年3月29日 16:21 産経新聞)東芝の米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(以下「WH」)が連邦破産法11条の適用を申請した。(後略)』

     

    原発工事の大幅な遅れにより、WH買収に伴う損失が拡大し、1兆円程度になる見込みとの報道でした。3月29日に取締役会を開き、米国破産法申請について承認されました。この結果、裁判所の許可が得られれば、WHは裁判所の下で経営再建を進めていくことになります。東芝にとっては連結子会社から切り離すことで損失を確定することを意味します。

     

    本件、「東芝の決算発表延期の影響について」と「東芝がウェスチングハウスの株式の過半を売却へ!」の記事でも取り上げましたが、東芝がWHを買う時に経済産業省やエネルギー庁の後押しがありました。その背中を押したエネルギー庁が、東芝に全責任を押し付ける点で、大変問題であると思っています。

     

    原発のインフラ輸出とか国家戦略もあるのに、いざ厳しい状況になったからと言って、東芝に全責任を押し付ける。

    原発の技術は軍事技術に転用される可能性もありますし、原発はこれからも必要です。

    米国が自動車メーカーのGMが危機のときに米国政府が資本注入したときと同じように、日本政府が資本注入するべき事案であると思っています。

     

    そもそも東芝がWHを買うに至った理由の一つとして、

    ・WHがPWR(Pressurized Water Reactor=加圧水型原子炉)に関する特許の40%を保有していること

    ・東芝はBWR(Boiling Water Reactor=沸騰水型原子炉)が主流であった

    ということで、東芝がPWR関連の特許を大量に持っているWHを購入し、ウランの購入からPWRでの原発ビジネスの川上から川下までの技術の全てを手に入れようとしていたと思われます。

     

    ここで、PWRとBWRという言葉が出てきたので、解説したいと思います。

     

    【図1】BWR=沸騰水型原子炉のイメージ。

     

     

    【図2】PWR=加圧水型原子炉のイメージ

    PressurizedWaterReactor.gif

     

    BWRもPWRも蒸気でタービンを回す点では同じですが、主な相違点は下記の通りです。

    BWR(沸騰水型)原子力発電プラントは、原子炉の中で蒸気を発生させ、その蒸気を直接タービンへ送り込みます。

    PWR(加圧水型)原子力発電プラントは、原子炉の中で発生した高温高圧水を蒸気発生器に送り、別の系統を流れている水を蒸気に換えて、その蒸気をタービンに送り込みます。

     

     BWR(沸騰水型)原子力発電プラントの特徴としては、原子炉容器の中で発生した蒸気をそのまま発電に利用する(タービンを回す)ということです。この結果、放射能を帯びた蒸気の取扱には最新の注意が必要です。具体的に言えば、蒸気を回収して再び原子炉の中を循環させるだけでなく、関係する設備を全て遮断し、放射能が外部に漏れることを防いでいるのです。

     一方でPWR(加圧水型)原子力発電プラントは、原子炉容器の中の水(一次冷却水)は沸騰しないように加圧させ、ウラン燃料から発生する熱エネルギーによって、約320度の高温水を作り、その高温水を蒸気発生器に送って二次冷却水を沸騰させ、その二次冷却水で作られた蒸気を発電に利用します(タービンを回します)。

     PWRの加圧水(一次冷却水)はウラン燃料で熱せられますが、液体状態であるため、放射能を含む蒸気が発生するBWRを比べれば、PWRの方が再循環が簡単です。またPWRの二次冷却水は、図の通り放射能を含みません。そのため外部への放射能漏れを防ぎやすいというメリットがあります。ただし、PWRは、BWRと比べて保守・回収の手間がかかる上に、コストが高いというデメリットがあります。

     

    BWRとPWRのプラントの違いということで改めて図を引用させていただきますので、ご参照ください。

     

    【BWR発電プラント】

     

    【PWR発電プラント】

     

     

    日本国内で原発のメーカーと言えば、東芝以外に、日立、三菱重工の2社が挙げられます。

    この3社における原発プラントの取扱は下記の通りです。

     

    ●東芝グループ(東芝がウエスチングハウスを買収して子会社化)

    企業名:東芝

    協力会社:Westinghouse Electric(米)

    保有技術:BWR PWR

     

    ●日立グループ(日立製作所とGeneral Electricの合弁)

    企業名:日立GEニュークリア・エナジー

    協力会社:General Electric(米)

    保有技術:BWR

     

    ●三菱重工グループ(アレバと協調)

    企業名:三菱重工業

    協力会社:アレバ(仏)

    保有技術:PWR

     

     東芝は従来、BWRが主流の技術メーカーでした。Westinghouse Electric(=略称「WH」)はPWRが主流で、PWR関連の特許の40%を保有していたとのこと。そのため、東芝は欧州などのPWR原発のリプレース需要を睨み、エネルギー庁の後押しを得て、WHを買収し、連結子会社としたのでした。

     また、3.11で事故が発生した福島原発は、第一原子力発電所、第二原子力発電所、すべてBWRです。BWRは東日本に多く、西日本はPWRが多いです。現在稼働中の原発は下表の通りです(停止中原発を除いています。)。

     

     東芝が絡んだ原発で言えば、3.11の福島原子力発電所は、東芝グループが主流とするBWRでした。PWRを主流とするWHを買ったのは東芝としては正しかったと思うのです。しかも経済産業省所管のエネルギー庁の後押し付きとなれば、なお買収しやすかったものと思っています。

     こうしてみると、背中を押した東芝に全責任を押し付けるのはいかがなものか?「自己責任です!」では済まされないものと思うのです。技術流出リスクもあります。中国に技術流出したら、それこそ軍事転用されて、防衛安全保障の脅威にもなります。そうしたことを考えますと、シャープ問題と同様、日本が国家として東芝も守らなければならない会社。にもかかわらず、そうした声が全く出ないことに私は違和感を覚えるのです。

     

     今日は原子力発電所の違いということで、BWRとPWRの炉型の相違点についてご説明し、東芝の大損失のきっかけとなったWH買収の経緯について論説しました。


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