主権国通貨ルーブルを持つロシアがデフォルトした理由

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     ロシアがかつて、デフォルトになったことがあります。

     ”自国通貨建てのデフォルトはあり得ない”は事実で正しいですが、固定為替相場制を導入している場合、デフォルトする可能性は捨てきれません。そこで今日は「主権国通貨ルーブルを持つロシアがデフォルトした理由」と題して論説します。

     

    1.固定為替相場制の概要

    2.大量のモノを他国から輸入して、原油・天然ガスの輸出で稼ぐ構造のロシア経済の弱点

    3.外貨を調達できないロシア政府は緊縮財政という政策を打つことができるのか?

     

    上記の順でご説明します。

     

     

     

    1.固定為替相場制の概要

     

     為替市場というものは、需要と供給で決まります。もし為替市場で1ドル=100円と固定するためには、政府が為替介入をするしかありません。

     

     では、なぜ固定為替相場制の場合に政府の介入が必要になるのでしょうか?

     

     その理由の一つとしては、自国通貨が外貨に両替される圧力が高まることに加え、貿易黒字側も米ドルを持ちたくないという事情もあります。そのため、逆のオペレーションをしなければならず、そのオペレーションについて政府が介入するのです。具体的には、日米で1ドル=100円で固定する場合、米国が日本円という外貨準備高を取り崩し、ドルを買い戻すというオペレーションが必要になります。

     

     では、変動為替相場に移行すると、どうなるでしょうか?

     

     実は自国通貨建ての国債がデフォルトするのは、固定為替相場制の国が、変動為替相場制に移行したときにデフォルトが発生します。

     

     具体的な例としては、ロシアが1998年に財政破綻した例があります。

     

     ロシアは財政破綻する前、ロシアの自国通貨ルーブルは、1ドル=6.45ルーブルで固定化されていたのですが、それはロシア政府が対ドル固定為替相場の維持を望んでいたためです。

     

     原因として考えられるのが、ロシアは原油輸出国であり、財政の大部分を原油や天然ガスの輸出に依存しているため、財政が組めなくなってしまう恐れがあるということです。例えば同じ量の石油や天然ガスを他国に売ったとしても、ルーブルが為替相場で暴落してしまえば、手に入るお金が変わってしまうため、財政が組めなくなってしまいます。そのため、1ドル=6.45ルーブルで固定していました。これによりロシア政府のロシアの自国通貨ルーブル建て債務は、事実上ドル建て債務と化します。

     

     例えば1億ルーブルの国債を買おうと思っていたとして、もしルーブルが暴落している状況であれば、ルーブル建て国債を買いたいと思う人は誰もいないでしょう。しかしながら、”米ドル建てロシア国債”もしくは”円建てロシア国債”であれば、基軸通貨ドルもしくは円建てということで、ロシア国債を買ってもいいという人は多いでしょう。

     

     仮に米ドル建てロシア国債、日本円建てロシア国債を発行しなかったとして、ロシアが固定為替相場制にした場合、例えば1ドル=6.45ルーブルで固定化すれば、ルーブルは対ドルで為替変動しないため、ドル建てで国債を買ったことと同じことになります。

     

     実際に国際金融市場では、ロシア政府が発行するルーブル建て国債が買われていましたが、その理由はドル固定であったからこそ、投資家らはロシア国債を買うことができたのです。

     

     しかしながら、ロシアは原油と天然ガスしか売り物がありません。ロシア製の製造物など、ソビエト連邦の頃からありません。

     

     ロシアは国土面積こそ大きいですが、シベリアのような巨大な資源宝庫があるので、科学技術投資や素材投資などやらなくても、原油や天然ガスを他国に売って稼げてしまうため、逆に言えば原油と天然ガスの発掘・採掘の投資以外は、ほとんど投資しないというのがロシア経済の特徴です。

     

     ゆえに他国に売るものは原油と天然ガスしかないため、原油価格や天然ガスの価格がちょっと暴落するだけで、貿易赤字が巨大に膨らむ構造になっているといえます。

     

     そもそもロシア国内で生産しているものがないために、多くのモノを他国から輸入しなければならなくなるので、必然的に貿易赤字が膨らみやすいのです。

     

     

    2.大量のモノを他国から輸入して、原油・天然ガスの輸出で稼ぐ構造のロシア経済の弱点

     

     石油や天然ガスの資料を発掘することに傾注し、エネルギー分野以外の産業を育成しないロシアにとって、ロシアルーブルはどうなるでしょうか?

     

     まず、輸入量が変わらず、輸出量は減少するとなれば、物を買う量の方が多い状態です。輸出は外貨を稼ぐ、具体的には外貨をルーブルに戻すのでルーブル高の要因です。

     

     一方で穀物などの食料を買う場合、ルーブルを売って外貨を買い、外貨で穀物などの食料を買いますが、これはルーブル安の要因です。

     

     例えば、石油と天然ガスを売って輸出した場合、輸出で稼いだ外貨をルーブルに交換するため、外貨売りルーブル買いとなりますが、もし国際市場でエネルギー価格が下落した場合、ルーブル高の要因が減少することで、ルーブル安外貨高の圧力が高まることになります。

     

     他国からいろんなものをたくさん輸入している一方で、輸出品目は原油と天然ガスという貿易構造のロシアが、国際市場におけるエネルギー価格の変動によってルーブルが下落して貿易赤字が膨らんだ場合、固定為替相場制を採用しているロシア政府には何ができるでしょうか?

     

     まず自国通貨のルーブル安を支えるため、外貨準備高を取り崩してルーブル安を支える方法があります。

     

     実際にロシア政府は外貨準備高を取り崩してルーブル安を支えたのですが、それでもロシアルーブル安の強い下落圧力がかかりました。その後、ルーブル安を買い支えて外貨準備高を取り崩したロシア政府は、外貨準備高の減少に直面し、ルーブル安を支えるために必要な外貨準備高が足りなくなってしまいました。

     

     外貨準備の減少に直面したロシア政府は、その後、外貨が無くなっただけでなく、必要な資金を外貨で借りることすらできなくなりました。

     

     それもそのはず、国家が危ない状況でロシア政府がドルを貸して欲しいと言ったとしても、貸した側は、ロシア政府が本当に返してくれるのだろうか?と投資家は疑心暗鬼になるため、ロシア政府は外貨を獲得できなったのです。

     

     そのような危ない状況でロシア政府が「ドルを貸して欲しい!」といったところで、貸してくれる投資家はほとんどいないでしょう。

     

     結果、ロシア政府は外貨を獲得できませんでした。

     

     

     

    3.外貨を調達できないロシア政府は緊縮財政という政策を打つことができるのか?

     

     為替相場を固定化させるための他の政策として考えられるのは、緊縮財政です。


      緊縮財政をやれば、輸入が減少するため、ロシアルーブルの売り圧力は弱まります。

     

     しかしながら1998年の破綻した以前のロシアは、ソビエト連邦の崩壊でめちゃくちゃになっていました。

     

     そのため、失業率を上昇させる緊縮財政はできませんでした。

     

     1998年当時はエリツィン大統領ですが、彼は権力を奪った立場であったため、緊縮財政をやって失業者が増えることになれば、国民がエリツィン大統領を引きずり降ろすことになっていたことでしょう。

     

     そこで緊縮財政ができないと考えたロシア政府は、為替変動相場制に移行しました。

     

     ところが為替変動相場制移行後、ロシア政府にはルーブルでの支払いの意欲が無くなりました。これは為替相場制に移行後、為替市場に自由に任せたとして、ルーブル建ての国債が償還される際にルーブルを通貨発行した場合、ものすごいルーブル暴落圧力となります。そうすると輸入物価が上昇し、国民生活が苦しくなることが予想されます。

     

     もともとロシア国内でモノを製造せず、モノを他国から輸入しているという状況で、輸入価格が暴騰するルーブルの暴落だけは受け入れることができなかったため、ロシア政府は債務不履行を選びました。

     

     本来ならば、ルーブルは自国通貨なので通貨発行ができます。しかしながら自国通貨を発行してルーブルが大暴落して輸入物価が大幅に上昇することは受け入れることができなかったでしょう。だからこそ、債務不履行を選んだのでした。

     

     緊縮財政と債務不履行以外に打てる手はありません。なぜならば、ロシアは貿易黒字を維持できる経済ではなく、むしろ原油・天然ガスが暴落するだけで、貿易赤字が膨らみやすい体質だったと言えるでしょう。

     

     しかも固定為替相場制にしなければ、国家の財政を組めなかったという状況にもありました。

     

     では、どうすればよかったのか?といえば、固定為替相場制にすべきではなく、むしろ国内の生産能力を引き上げて、海外からモノやサービスを買わなくても、ちゃんとロシア国内だけでやっていける経済にしていくべきでした。

     

     ところが逆にロシアの場合、原油と天然ガスがおいしすぎました。原油と天然ガスが山のように存在し、しかも売却する先は世界中たくさんあります。

     

     そのため、原油と天然ガスの発掘投資に注力して、他の産業を育成しませんでした。その結果、輸入に頼ることになるというのは、ある意味でロシア経済の宿命的な構図かもしれません。

     

     

     

     というわけで今日は「主権国通貨ルーブルを持つロシアがデフォルトした理由」と題して論説しました。

     資源がたくさんある国といえば、資源がない日本の人から見れば、うらやましく思えるかもしれません。またロシアは、原油と天然ガスの他に宇宙開発や軍事の投資はしていましたが、それ以外は全部輸入です。そのような環境ではルーブルの下落圧力は高まるのは、当然の帰結と言えるでしょう。

     では固定為替相場制でルーブルを固定するとなれば、外貨準備高を増やすしかありませんが、外貨準備高が不足していれば、外貨を借りるしかありません。しかもその外貨すら借りれないとなれば、緊縮財政か変動為替相場制へ移行するしかありません。

     緊縮財政が選択できなければ変動為替相場制にならざるを得ませんが、ルーブルが暴落するとロシア経済危機になるため、物価上昇してロシア国民が暴動を起こすかもしれません。そこでロシア政府は、デフォルトを選んだのでした。


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