国民の生命・財産を守ろうとする意志がないインフラ緊急対策7兆円

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     今日は、以前書いた記事「国土強靭化への緊急対策7兆円について」について取り上げ、今回の台風15号や台風19号の猛威を食い止めることができる予算だったのか?を検証すべく、「国民の生命・財産を守ろうとする意志がないインフラ緊急対策7兆円」と題して、昨年2018年度末に閣議決定された”インフラ緊急対策7兆円”について論説します。

     

     今回、台風19号による豪雨災害で堤防が決壊したのは、7つの県で55の河川、79か所に上り、多くの場所で浸水被害が発生しました。

     

     しかしながら、防災投資をして有効なものもありました。例えば八ッ場ダムや放水路などの堤防の整備です。

     

     とはいえ、79か所で川が決壊しました。堤防決壊は、1か所だけでも最悪の事態です。かつて鬼怒川の堤防が決壊したときは、大変なニュースになりましたが、今回は55の河川で決壊が発生しました。

     

     日本の河川は、まだまだ十分な水準に強靭化されていないといえます。先月9月、赤羽国交相は、相次ぐ大災害を受け、2018年末に政府がまとめた河川堤防の強化などのインフラ緊急対策を着実に進める方針を改めて示しました。具体的には、全国120の河川の堤防強化・かさ上げに加え、中小の河川を中心に簡易型の監視カメラを設置することが盛り込まれています。

     

     通常、インフラを点検するとなれば、インフラを点検チェックするわけですが、チェックする前に基準を決めます。その基準をクリアしていない個所を洗い出し、その箇所に対して予算を付けることになります。

     

     ところが2018年度末に政府がまとめた緊急対策7兆円は、そうしたプロセスを経ていません。仮にも十二分に日本国民を守り得る基準を定めたとして、その基準に満たないものを積み上げた結果が7兆円であれば、何ら問題ありません。

     

     しかしながら、予算ありきで、いわば「7兆円で何とかしよう!」という発想でまとめられたのでは?という疑義が極めて濃厚です。

     

     予算ありき、お金ありき、ということで7兆円とやっても、予算でできるものを優先度が高いと思われるものから順番にやっていくことになるでしょう。

     

     この場合、上から数えて累計が7兆円になったら、そこで打ち止め、終了です。たとえ国民を守る基準を下回っていたとしても、7兆円が上限で、お金がないからできませんという話になります。

     

     となれば、予算がつけられなかったその個所は強靭化されません。

     

     そのため、赤羽国交相が「2020年度までインフラ緊急対策でしっかりやる!」といっても、それは予算が既につけられたものを執行すると言っているだけの話で、本来のインフラ整備とは程遠いのでは?と考えられます。

     

     もちろん優先順位を決めるというプロセスそのものは悪くないのですが、7兆円までで打ち止めという話は間違っています。

     

     本来、日本国民の生命・財産を守るために、どのくらいかかるのか?基準値を下回るものを全て積み上げ、予算化することこそ、真のインフラ強靭化といえるでしょう。

     

     予算ありき、お金ありきで「強靭化にはお金がかかるのは知っているんだけど、そんなにお金があるわけではないから7兆円でなんとかやっておいて!」という発想は、例えば、自分の子どもが病気になったとして、子どもを救うのにたくさん手術しなければならないという状況で、手持ちが20万円しかないから、20万の範囲で子どもを救えるならば、20万でお願いし、死んでしまうんだったら、それは仕方ないと言っているのと、全く同じ発想です。

     

     2018年度末の緊急インフラ対策7兆円は、本当に日本国民の生命・財産を守ろうとする意図があったのか?というと、その意図はなかったのではないでしょうか?

     

     恐らく財務省に「7兆円で済むようにお願いね!」と国交省がいわれて、仕方なく7兆円まで積み上げたというだけなような気がします。

     

     もし国民の生命・財産をちゃんと守ろうとするならば、危険な個所は全部直そうとするに決まっています。基準を下回っている個所は、金額の過多を問わず積み上げ、その合計額でもって、可及的に速やかに建設国債(4条公債)を発行して、政府支出をすればいいだけのこと。

     

     金額の過多を問わず、基準を下回っている個所のすべてて直そうとした結果が7兆円でしたということになれば、あとは供給力を鑑みて、10年で終わらせるとなれば、毎年7000億円ずつやればいいですし、5年でやるとなれば、毎年1兆4000億円ずつやればいいのです。

     

     

     というわけで今日は「国民の生命・財産を守ろうとする意志がないインフラ緊急対策7兆円」と題して論説しました。

     お金がいくらかかるかわからないから「とりあえず7兆円ぐらいで…」という発想では、日本国民を自然災害から守ろうとする意図は全く感じられません。

     そうした発想は、ミクロ経済学でいうところの予算制約が頭にこびりついているからであり、国家の財政運営を、家計簿発想、企業経営発想で考えてしまうことが、起因しているものであって、国家の財政運営は予算制約はありません。

     そもそも国家の予算には、予算制約がないということを、特に政治家の皆さんに理解していただき、本当に必要な強靭化には、すべて予算化して「建設国債(4条公債)」の発行で対応していただきたいものと、私は思うのです。

     

     

    〜関連記事〜

    国土強靭化への緊急対策7兆円について

    八ッ場ダムや第一貯水池などの工夫によって回避できた河川の決壊

    財政法第4条について(公共事業の費用は国債発行して何ら問題なし!)

    「日銀の円建て国債購入が財政法第5条による財政ファイナンスに該当する」との指摘に対する反論

    増税して政府の財政を健全化させることは憲法13条違反です!

    ミクロ経済学の「予算制約式」について(「政府の負債は税金で返済しなければならない」のウソ)


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