米国企業が株主第一主義を見直し

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     今日は「米国企業が株主第一主義を見直し」と題して論説します。

     

     ロイター通信の記事をご紹介します。

    『ロイター通信 2019/08/20 企業は社会的責任重視を、米経済界トップが声明

    [ニューヨーク 19日 ロイター] - 米経済団体ビジネス・ラウンドテーブルは19日、米経済界は株主だけでなく従業員や地域社会などすべての利害関係者に経済的利益をもたらす責任があるとする声明を発表した。

     「企業の目的」を表明したこの声明にはアマゾン・ドット・コム(AMZN.O)やアメリカン航空(AAL.O)、JPモルガン・チェース(JPM.N)の最高経営責任者(CEO)など180を超える米企業のトップが署名した。

     象徴的な意味合いが強いものの、約30年にわたって企業は株主の利益のために存在するとしてきた視点から大きな転換となる。

    背景には、米民主党の大統領選候補者などから企業の責任拡大を求める声が強まっている状況がある。

     ビジネス・ラウンドテーブルの会長を務めるJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは、米国では貧富の差が拡大しており、すべての利害関係者を重視することがより健全な経済につながるとの見方を示した。

     同氏は声明で「アメリカン・ドリームは生きているが、揺らぎつつある」とし、「大手の雇用主は従業員や地域社会に投資している。長期的な成功にはそれが唯一の方法だと知っているからだ」と指摘した。

     声明では、公正な賃金や「重要な手当て」の提供を通じた従業員への投資、地域社会への支援と「環境保護」など5つのコミットメントを挙げた。

     MITスローン・スクール・オブ・マネジメントのバーバラ・ダイアー教授はビジネス・ラウンドテーブルの声明について、上場企業で現在当たり前になっているさまざまな決定のベースに株主第一主義があったことを踏まえれば、非常に大きな意味を持つ可能性があると指摘した。ただ、実際に転換点となるかは不透明で、例えば幹部報酬などの大幅な見直しが行われるかどうかは疑問だとの見方を示した。』

     

     米国では、主要企業の経営者団体のビジネス・ラウンドテーブルというのがあるのですが、上記ロイター通信の記事の通り、株主第一主義を見直し、従業員や地域社会の利益を尊重した事業経営に取り組むことを宣言したということで、非常に画期的なニュースです。

     

     なぜならば、これまで米国は、株価上昇、配当増加など、投資家の利益を優先してきたからです。

     

     投資家の利益を優先すべきという考えは、1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンの影響でした。何しろミルトン・フリードマンは、株主だけがリスク負担者であるとして、会社を「株主の道具」と捉え、私有財産である会社が社会的責任に従事する必要はないと考えていて、ミルトン・フリードマンからすれば「より大きな善」の名の下で実践されるCSR活動は窃盗に他ならないのです。

     

     仮にも、供給する製品・サービスが、無人工場で総務も人事も営業所も一切人が介在しないとするならば、ミルトン・フリードマンの考えも当たっているかもしれません。

     

     現実的に多くの企業では、供給する製品・サービスを、人間が介在してチームとなって供給します。そのため、従業員から見た場合、自分の努力だけでなく、自分以外のメンバーの努力によってチーム全体の利得の結果が変わるため、自分の努力が報われる保証はありません。誰かが手を抜けば、他のメンバーにしわ寄せがくるというのは、よくある話です。

     

     したがって株式会社という組織は、株主だけがリスク負担者というミルトン・フリードマンの考えとは異なり、従業員や業務のすり合わせ(配慮)を要求される取引先もリスクを負担しているといえます。

     

    <コーポレートガバナンス・コード(2018年6月版)の抜粋>

    (出典:(株)東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードから引用)

     

      上記は、東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」の基本原則2を抜粋したものです。

     

     日本では、上場会社は株主だけがリスク負担するという考えではなく、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会など、すべてのステークホルダーと適切な協働に努めるべきであるとし、会社とは、いろんな人々が介在して成り立つものであるという考え方に立っています。

     

     一方米国では、株主を優遇するという株主第一主義が毎年強化されてきました。普通の経営で考えれば、売上高から従業員の給料に回したり、将来の成長に向けて設備投資したりして、必要経費を除いたら利益が少し出ます。その利益から株主配当を回します。

     

     ところが株主配当をたくさん出さないと株主が株を買ってくれないため、株を少しでも買っても売らうために株主に媚びる傾向が強くなっていったのです。

     

     そうして株主に媚びる傾向が強くなった結果、株主への配当を増やすために、より多くの利益を出そうとして、従業員への給料を引き下げ、将来への設備投資を減らし、利益で自社株買いをするなど、株主に媚びを売るためにそうした動きが加速され、それが長期的な経済停滞をもたらすのみならず、資本で食べる人と、労働で食べる人との間に格差が生まれ、その格差が拡大していくことにつながっていったのです。

     

     株式会社組織はあくまでもプライベートであるため、株主第一主義という考え方は、価値観の問題と整理されてしまうかもしれません。

     

     とはいえ、米国の今回の株主第一主義を転換するということは、そろそろその考え方がしんどくなってきたということではないでしょうか?

     

     何しろ、将来的な展望を描くとするならば、自社株買いよりも、社員のモチベーションを上げるために給料を上げるとか、将来のための設備投資をしたいという声があるのも事実であり、社内のリソースの配分をそうしたところへ配分したくても、株主第一主義だとそれが実現できないという矛盾に気付いたとも考えられるのです。

     

     昔の言葉で「近江商人の三方よし」というのがあります。

     

     「買い手よし」「売り手よし」「世間よし」という精神で江戸時代から明治時代にかけて日本各地で近江商人が活躍しましたが、近江商人は自らの利益のみを求めることなく、多くの人に喜ばれる商品を提供し続け、信用を獲得していきました。近江商人は利益が貯まると無償で橋や学校を建てて世間のためにも大いに貢献したといわれています。

     

     内閣府参与の原丈二氏という方がおられますが、原丈二氏は、これからの資本主義は近江商人のような売り手だけでなく買い手もよくなって世間もよくなって未来も明るくなるような公益を大切にする資本主義にするべきだ!とした言論活動を推進しています。

     

     また私自身面識がある経済産業省の中野剛志氏も同様の言論活動をしています。

     

     ミルトン・フリードマン的あるいは竹中平蔵的な資本主義ではなく、公益資本主義でやっていくべきだ!という主張には、それなりの説得力があると私は思っています。

     

     特に原丈二氏は米国でそうした言論活動をやっておられたようで、米国企業の「株主第一主義の見直し」は、原丈二氏らの活動によって、ようやく米国にも公益資本主義という思想が広まっていった結果ともいうことができると私は思います。

     

     

     

     というわけで今日は「米国企業が株主第一主義を見直し」と題して論説しました。

     株式投資をされている方であればご存知と思いますが、日本の株式市場でも自社株買いをすると株価が上昇するといわれています。理論的には自社株買いをして償却すれば一株当たり利益が上昇するため、株価は上昇します。特に経営者がストックオプションを付与されているなどした場合、株価を上昇させたいと思って自社株買いと償却を組み合わせることは多いです。

     とはいえ、その分将来の投資をしていなかったり、従業員への配分が細らせて自社株買いをしているならば、それは将来に大きな禍根を残す可能性がありますし、仮にも同業者がみんな同じことをやっていた場合、国家全体の供給力が弱体化するということにもなります。

     私は、自社株買いなどしなくても株価が自然と堅調に右肩上がりになるためには、普通にデフレを脱却させればいいと思っています。ぜひとも米国の株主第一主義は見直されるべきですし、日本も竹中平蔵的な資本主義とは決別していただきたいものと思います。


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