”法人税を上げるなら日本を出て海外に出ていく”というのは企業側の単なる脅しに過ぎません!

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     私こと、杉っ子が初めてブログを書いたのは、2016年11月27日で、この日がブログデビューの日といえます。そのとき書いた記事は、『「所得税を減税しないと富裕層が逃げていく!」は本当か?』でした。今回は、その法人版として、「”法人税を上げるなら日本を出て海外に出ていく”というのは企業側の単なる脅しに過ぎません!」と題して論説します。

     

      今この記事を書いている時間は、7/21未明ですが、今日の夜には参議院選挙の投票結果が出ます。おそらく自民党が勝利して、消費増税10%が実施されることが確定されるでしょう。

     

     私は消費増税に反対の立場で論説しているのは、読者の皆様もご承知のことと思います。

     

     仮にも増税するとするならば、それは法人税ではないでしょうか?

     

     にもかかわらず、安倍政権は消費税率を引き上げる代わりに、法人税を下げます。

     

     何しろ「海外から投資してもらうためには法人税を下げなければ・・・」と日本は先進国なのになぜ海外に投資してもらわないといけないの?というレベルの低いバカげた理由で、法人税を下げようとしています。

     

     そもそも法人税を下げる必要などあるのでしょうか?法人税を引き下げればデフレ脱却できるようになるのでしょうか?

     

     法人版トリクルダウン理論で、「企業の内部留保がそこそこ溜まってくれば、やがて企業は設備投資をやるはず!」とか思っている方、完全に甘いです。お金のプール理論とも呼ばれるのですが、お金がプールされて溢れたものが投資になるなど、あり得ません。

     

     デフレで儲かりにくい環境では、企業経営では設備投資を控えざるを得ません。どれだけ法人税が下がろうとも、銀行の借入金利が下がろうとも、デフレ環境では設備投資は増えようがないのです。

     

     なぜならば儲からないからです。

     

     よく考えていただきたいのですが、モノの値段を下げないと売れないとなれば、銀行借入でなくても、自己資金で設備投資をしようにも、投資の将来の期待収益率が下がります。そのため投資したお金の回収期間が長くなり、回収しにくくなるのです。

     

     いうまでもなく銀行借入の需要は増えず、自己資金を投じようにも期待収益率が下がっている以上、躊躇する経営者が多いのは当然の帰結です。

     

     では、「法人税を上げたら、企業は海外に行ってしまう!」というのは、本当でしょうか?

     

     これは明確にウソです。法人税を上げたとしても、日本国内がデフレ脱却してマイルドなインフレ状態であれば、需要があるので設備投資は増えます。法人税が上がったからとという理由で投資を躊躇することはあり得ず、あくまでも需要があるか否か?です。

     

     この需要には、名目需要(値段を下げなくても売れること)と実質需要(数量が多く売れること)の両方が影響します。

     

     需要があれば法人税を上げたとしても、企業は設備投資をするのです。

     

     「法人税を上げれば海外に企業が出ていくぞ!」というのは、企業側の単なる脅しに過ぎません。例えば法人税を上げたからといって、トヨタ自動車や日立製作所といったグローバル企業が、海外移転することは絶対にありえません。

     

     そもそも日本の法人税は、東南アジア諸国からみれば、名目の税率が高いのは事実なのですが、いろんな抜け道があり、実質的な税率は低いのです。

     

     元国税庁OBでフリーライターの大村大次郎氏によれば、日本国内の年間売上高は、だいたい1,500兆円前後であり、90%以上即ち1,400兆円以上が経費で支出されているとのこと。法人税は年間10数兆円に過ぎず、企業の支出全体から見れば、1%程度とのことです。

     

     一方、法人税は利益が出ている企業にしかかからず、あのトヨタ自動車でさえ、リーマンショックの頃、赤字に転落して5年間法人税を納めていないという時期がありました。

     

     何がいいたいかと言えば、利益が出ている企業に対して、支出の1%程度を徴収するという話であって、赤字に転落した年は税金の徴収はなく、企業経営を圧迫しているというようなことは、全くあり得ません。

     

     仮に法人税が今の倍になったとしても、せいぜい支出が1%増えるにすぎないのです。

     

     その一方で、海外に進出するとなれば、言葉の問題から、文化の問題や商習慣の問題など、非常に大きなリスクを伴います。そのうえ、インフラの充実度も違います。

     

     新たな莫大な投資を必要とし、人材の発掘・育成や教育にも時間とコストがかかるうえ、相手国の治安情勢などの影響も受けます。たとえ法律に詳しかったとしても、文化の問題や商習慣の問題で、日本国内のビジネスとは比べ物にならないくらいのリスクがあります。私の会社で海外勤務のある方がいるのですが、その方によれば、インドでのビジネスにおいて、約束すっぽかしは当たり前だとおっしゃっていました。

     

     私はいろんな海外に行っていますが、インドでいえば普通に停電が発生しますし、ロジスティクスでは、州を通過するごとに税金を徴収されます。日本では停電など、大地震以外で発生することはまずあり得ず、都道府県を超えるたびに税金がかかることなどあり得ません。

     

     また電車は時間通りに走らず、バスに至っては時刻表が存在するのは日本ぐらいなものです。

     

     何がいいたいか?といえば、日本の企業のほとんどは、日本国内の事業をコアコンピタンスとしており、日本の文化になじんでいます。日本の文化は独特なものであって、海外に出て行ってそう簡単にビジネスができるというほど甘くはありません。

     

     だいたい法人税が高かったバブル以前は、今よりもはるかに海外進出は少なかったわけで、環境が整っていなかったという理由はあったかもしれませんが、日本国内に十分な名目需要・実質需要があったからこそ、わざわざ大きなリスクをとって海外に出ずともよかったのです。

     

     今は環境が整ったといっても、日本とのインフラ環境と異なるでしょうし、法人税が日本より格段に安いという程度の理由で、企業活動の主要部分を海外に移転することなど、現実的にはできないのです。

     

     

     というわけで今日は「”法人税を上げるなら日本を出て海外に出ていく”というのは企業側の単なる脅しに過ぎません!」と題して論説しました。

     

     

     

    〜関連記事〜

    国際競争力を高めるために法人税を下げなければならないという言説の欺瞞

    税金の役割とは何なのか?

    「法人税が高いと企業が海外に流出してしまう!」というウソ

    「所得税を減税しないと富裕層が逃げていく!」は本当か?

    金利が下がれば設備投資が増えるは本当か?(魚の仲買人さんのビジネスモデル)

     


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