典型的なレントシーキング “マスコミが報じない「民泊の不都合な真実」”

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    今回は「レントシーキング」について意見します。

    【1】「レントシーキング」の定義
     付加価値が増えるわけでもないのに、既存の業者のパイ(マーケット)を価格競争により新規参入させる動きをレントシーキングと言います。我が国では、再生可能エネルギー法による電力販売会社、薬事法改正によりインターネットで薬が販売できるようにするといった動き、PFI・コンセッション方式によるインフラ事業への民間会社参入(例えば空港運営会社や刑務所運営会社などの民営化)されていますが、これらも典型的なレントシーキング。

     フランスの失敗例を見れば、民泊推進は慎重な議論が必要と考えます。私はイデオロギー的に規制緩和を反対するつもりはありませんが、デフレに苦しむ我が国において、価格競争を強いる規制緩和を推進すれば、既存のホテル・旅館業者らが、価格競争でサービス価格引下(名目GDP減少)となり、稼働率低下(実質GDP減少)となります。

     宿泊先は客が選ぶものですが、民泊はほとんど経費やイニシャルコストがかからず、多くの脱税を生み、業界の雇用を奪い、必要な人が普通に住む環境を不当な競争によって破壊する可能性があります。
     フランスのホテル職業産業連合の試算によれば、規制なし・監査なしの安全面放置(警察用登録シート無、警備体制の盲点)、24時間管理体制の不在、消費者保護の為ホテルに課される義務が民泊には不在。ホテル事業者の粗利益が売上の5%10%程度なのに対し、民泊の場合は60%70%となるとのこと。

     これだけ粗利率が違えば、既存のホテル・旅館業から見れば、脅威であることに違いません。このように付加価値が増えるわけでもないのに、既存の業者のパイ(マーケット)を価格競争により新規参入させる動きをレントシーキングと言います。

    【2】民泊推進はデフレ促進策
     貸す側の賃料を得られるメリット=消費者が安く宿泊できるメリットとはいえ、各種法規制の対象外で、規制なし・監査なしの安全面放置、24時間管理体制の不在。ホテル・旅館業という免許により管理という規制があって警備会社の警備、フロントの人の雇用もしくはそれらの人に代わるロボットの設備投資(ロボットのメンテナンス投資)が生まれますが、民泊の場合は雇用や設備投資につながりにくい。民泊参入者に雇用や設備投資に求めれば利益が減るので、参入予定者側からすれば反対するでしょう。

     こうした観点で雇用や設備投資増につながらず、付加価値の増加につながらず、既存のパイを脅かすだけの規制緩和には、デフレに苦しむ我が国において急ぐ必要が全くないものです。GDP的には、新規参入者のGDPが増えても、既存ホテル・旅館業者とホテル・旅館業の規制に関連する業者のGDPが減り、行って来いになるだけ。しかも既存業者は一人当たりGDPを減らすことになります。

     例えば人手不足を補うために、「測量技術やインフラ点検の打音検査でドローンを活用」となると、ドローンを遠隔操作するために無線法の規制を緩和することが必要になります。上記のドローン活用のための規制緩和は、物・サービスが安く買われるといった価格競争に影響しません。むしろ測量作業について一人で5人分、10人分の仕事ができるようになり、一人当たりGDP向上となり、GDP3面等価の原則で賃金UPいたします。生産年齢人口減少の我が国にとって有益な規制緩和です。

     ホテル・旅館業においても、新幹線延伸エリアを中心に新築開発してロボットによる受付、ドローンを使った警備などで、24時間管理体制などの規制をクリアしていけば、安心と安全で快適な宿泊施設の供給と、そこに携わる業者のみんながWINWINになります。私は上述と比べれば民泊推進は有益な規制緩和ではないと思うのです。

    【3】フランスでの失敗事例
    以下はHARBOR BUSINESS Online から引用です。

    世界一観光立国からの「警鐘」
    2016317日、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の招聘で、フランスのホテル&レストラン関連業界団体を招き「基調講演 テーマ:民泊の不都合な真実 〜世界最大の観光大国フランスで起こっていること」と題した緊急フォーラムが東京都内で開催された。フランスからは、ホテルGNI会長のディディエ・シェネ氏らが参加した。
    「もうフランスはAirbnbにやられてしまった。日本はまだ間に合う、フランスと同じ轍を踏まないでほしい」
    世界一の観光立国であるフランスから、なぜこのような悲痛の声が上がったか?
    「フランスで民泊と言えば、Airbnbを指して差し支えない状況ですが、現在フランスでは1日に1軒のホテルが廃業か倒産に追い込まれているのです。」(シェネ氏)

    パリを襲ったホテル廃業と住宅難の渦
    問題はホテル業者だけでない。
    「アパートなどの所有者がより利益の上がる民泊営業に物件を回したため、パリ市内の家賃相場は数年で急上昇。民泊物件へ回すために賃貸契約の約25%が契約更新されず、住民は住居を失い高額な物件を探してやむなく賃貸し直すか郊外へ引っ越しを余儀なくされた。特に観光客が多い地域では、住民が減り学級閉鎖に陥る学校も出ています。」(シェネ氏)

     民泊は既存業者を脅かすだけでなく、我が国の街づくりにも影響を与えます。自由貿易(米韓FTANAFTA等)やユーロ通貨統一など、世界の失敗に学ぶものは数多くあるのですが、民泊もまた世界の失敗事例に学ぶものの一つであると思います。


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