グリーン・ニューディール政策と現代金融理論

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     今日は「グリーン・ニューディール政策と現代金融理論」と題し、米国の民主党議員が提唱する「グリーン・ニューディール政策」に絡めて、昨日もテーマとさせていただいた現代金融理論について論説します。

     

     グリーン・ニューディール政策というのは、オバマ政権のときにも打ち出された経済政策の一つで、ニューディール政策というのが、財政政策・財政拡大によって経済を活性化させるという政策で、端的にいえば、政府の財政出動によって経済成長率を高めていきましょう!ということです。

     

     では、グリーン・ニューディール政策というのは何なのか?というと、財政拡大の投資項目の中に、地球温暖化対策を中心に据えて財政出動していきましょう!という政策です。

     

     例えば再生可能エネルギーやスマートグリッド(次世代送電網)や公共交通システムに加え、ゼロ排気車を導入するなど、そういうことを徹底的に推進して経済を活性化させようという話です。

     

     このグリーン・ニューディール政策について、今年2月に米国の女性議員のオカシオ・コルテス下院議員が、気候変動問題に対して包括的に取り組むということでグリーン・ニューディール法案を発表いたしました。ところが残念なことに、下記ロイター通信の記事の通り、グリーン・ニューディール法案は廃案になってしまいました。

     

    『ロイター通信 2019/03/27 11:44 米上院、「グリーン・ニューディール」を否決

    [ワシントン 26日 ロイター] - 米上院は26日、野党・民主党が提出した温暖化対策に関する決議案「グリーン・ニューディール」の採決を行い、反対多数で否決した。

     共和党議員が反対票を投じたほか、民主党から2人が造反し、通常は民主党と歩みを合わせる無所属議員1人も反対に回ったため、反対は57票に上った。民主党側は、43人の議員が賛成でも反対でもない「出席」の票を入れた。

     決議案は風力や太陽光を含む再生可能エネルギーや環境インフラへの政府主導の投資を実行することで、化石燃料に依存し、温室効果ガスを排出する経済構造の転換を目指す内容。

     民主党は2020年大統領選に向けて、温暖化対策と経済成長促進の両立について議論を喚起する狙いがあるとしてきた。このため、早期採決は望まない姿勢を示してきた。

     一方、共和党のマコネル上院院内総務は国民的な議論となる前に、議会公聴会を経ずに採決を強行した。共和党側は、グリーン・ニューディールを民主党の左傾化の表れだと断じ、民主党内で足並みの乱れを誘うことを狙った。』

     

     上記の記事の通り廃案となったグリーン・ニューディール法案ですが、記事の内容が正しいとするならば、共和党が政治的に民主党をつぶすために早期採決をしたということで残念です。民主党は温暖化対策と経済成長促進の両立についての議論を喚起する狙いがあったと報じられています。

     

     ニューディール政策自体、ドイツ・フランスを中心としたEUや日本がやっている緊縮財政とは真逆の発想です。米国の場合は、オカシオ・コルテス議員の提唱の通り、「グリーン・ニューディール」として地球温暖化を中心に財政出動をやろうというものです。

     

     日本でいえば、防災減災ニューディールが必要といえます。2014年の消費増税以降、公共事業も増やしていない安倍政権が当初提唱したアベノミクスの第二の矢の国土強靭化は、まさに防災減災ニューディールといえますが、予算を増やすどころか減らしており、実行に移されていません。

     

     その防災減災ニューディールといえる国土強靭化と、オカシオ・コルテス議員の提唱するグリーン・ニューディール政策は、経済的にも同じ発想の話であるといえます。グリーン・ニューディール政策で提唱されている投資例として、再生可能エネルギー促進、次世代送電網の敷設、技術的に実現可能な限り米国の交通システムの抜本的見直し、高速鉄道投資の増大、技術的に実現可能な限り環境汚染や温暖化ガス・排ガスがないクリーンな製造業の促進などがあげられています。

     

     ではなぜ今、国土強靭化の必要性が米国で叫ばれているのでしょうか?

     

     米国では景気がいいといわれていますが、労働者の賃金がほとんど上昇していません。実質賃金が上昇していない問題を解決するためには、大企業が活性化すればいいということではなく、労働者の賃金が上昇していかなければならないと私は思います。

     

     そのためには、キャッシュをマーケットに供給していく必要があるわけですが、このとき裏付けとなるキャッシュは?ということで、オカシオ・コルテス議員が主張しているのは、昨日も本ブログで取り上げた現代金融理論(=モダン・マネタリー・セオリーで以下「MMT」)です。

     

     もともとリフレ派の議論に、マネタリーセオリーという理論があるのですが、これは中央銀行が金融緩和をやれば経済が活性化するという理論で、日本でも日銀が通貨を供給すれば経済が活性化してデフレ脱却ができるとした言説にも利用されています。

     

     しかしながら、それをさらに発展させたのがMMTで、日銀が通貨を供給するだけでは日銀当座預金に積まれるだけで、マネタリーベースは増加させるだけで、自動的に貸し出しが増加する・企業に資金需要が増える、即ち”マネーストックが増える”わけではありません。

     

     MMTのポイントは、政府が国債を大量に発行して、それを実際に政府支出として使っていく。そうしないとマネーストックは増えないという考え方であり、至極真っ当な考えで正しいです。

     

     内閣官房参与の一人である浜田宏一氏らは金融政策だけでお金が回りだして景気が良くなるという主張でしたが、私は金融政策でお金を供給するだけでは景気は良くならず、実際に政府がそのお金を使わない限り、お金が回りだすことはないと主張を続けてきましたが、MMTの考え方はまさに私の主張そのものであり、オカシオ・コルテス議員も、この考え方を踏襲しています。

     

     米国の場合はグリーンなシステムが技術的に立ち遅れ、CO2をたくさん出しているという現状があります。トランプ大統領は、温暖化対策にはネガティブな発言がある一方、オカシオ・コルテス議員は環境対策を世界のスタンダードに合わせて主張したということになります。

     

     要するにオカシオ・コルテス議員が提唱するグリーン・ニューディール政策は、「環境対策を米国としても世界のスタンダードに合わせましょう!」ということと、それに伴う財源について「MMT理論にもとづけば、自国通貨建ての国債を発行して借金を増やすことで何ら問題がないですよ!」という2つの意味があります。

     

     日本のような環境先進国になりましょうという主張は、米国では毎回つぶされてきました。しかしながら自国の経済成長のためにも財政出動によって、環境先進国を目指すというこの発想は、環境分野の技術革新を伴って経済成長もできるということであり、オカシオ・コルテス議員の主張は、素晴らしいと私は思うのです。

     

     

     というわけで今日は「グリーン・ニューディール政策と現代金融理論」と題して論説しました。


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