EU加盟後に国民の所得が激減したイギリス
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今日は「EU加盟後に国民の所得が激減したイギリス」と題して論説します。
2016年に英国でEUからの離脱を問う国民投票を行い、結果はEUからの離脱ということになりました。これをブレグジットと呼んでいます。ブレグジット問題については、本ブログでも何回もテーマとして取り上げておりますが、ブレグジットという事象が起きた背景について、下記の順で論じたいと思います。
1.EU加盟国間の所得格差の問題
2.全く違う文化圏であるイスラム教徒・アフリカ人らの大量入国
3.変な法律を押し付けられるデメリットも・・・
1.EU加盟国間の所得格差の問題
EUの最大の問題点であり、かつ英国がEU加盟のデメリットとして気付いたこと、その中で一番大きいデメリットとして考えられるのが「人の移動の自由」です。「人の移動の自由」を妨げてはならないとするルールに加え、そもそもEU加盟国間の所得格差が大きいという状況も問題です。
その問題となっているEU加盟国間の所得格差を知っていただきたく、下記の一人当たりGDPの表・グラフをご参照ください。
<2007年と2017年の一人当たり名目GDP(単位:USAドル>
(出典:グローバルノート)
上記はバルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)などの東欧諸国が2004年〜2006年に順次EUに加盟し、東欧諸国のEU加盟が終了し終わった後の2007年のEU主要国の一人当たりGDPについて、10年後どうなったか?を示したグラフです。英国だけが一人当たりGDPが減少しています。
2007年の数字で見ますと、英国は約50,000ドル、ブルガリアは約6,000ドル、ルーマニアは約8,000ドル、ポーランドは約11,000ドル、ハンガリーが約12,000ドルとなっておりまして、ポーランドと英国の一人当たりGDP(=国民の所得)の差は約5倍であり、ポーランドに至っては10倍近い差があります。
この状況で英国に低賃金労働者が大量流入しないと思う方が間違っていると言えるのではないでしょうか?なぜならばEU加盟国間では国境の移動の自由があるからです。実際に2017年の数字で見ますと、英国以外の東欧諸国の一人当たりGDPが上昇する一方で、英国は激減しています。
英国の場合はシェンゲン協定に加盟していないため、パスポートをチェックする国境審査はありますが、EU加盟国間の構成国の人々らは、ビザなしで入国し、そして働くことも可能です。そしてそれを妨げることができない(規制することができない)のがEUの移民の問題なのです。
結果的に低賃金で働く労働者が大量流入した英国の実質賃金は抑制されます。そのことに対してイギリス国民が反発しても、どうしようもできません。なぜならば移民制限ができないからです。
そして、このデメリットに気付いたということでブレグジット問題につながりました。
皆さんは、「移民制限ができない」というデメリットがどれだけストレスがかかることか、想像できるでしょうか?
例えば、日本の国民が従うべき法律が、東京の霞が関の国会議事堂ではなく、北京とかで決定されるというイメージです。実際にイギリス国民は、ブリュッセルの欧州議会で決定された法律に従い、それに合わせて自国の法律を変えるということをやっています。
移民について様々な問題が発生したとしても止めることはできません。これがブレグジットの一番の問題なのです。
メイ首相の前のキャメロン政権時代、欧州からのEU離脱の国民投票をやってもいいと言い放ち、ただ移民制限をするとも言っていたのですが、キャメロン政権は移民制限ができませんでした。というよりEUに加盟している以上、人の移動の自由を妨げてはならないため、移民制限をすることは不可能です。
2.全く違う文化圏であるイスラム教徒・アフリカ人らの大量入国
EUに加盟している限り移民制限は不可能であるという話に加えて、EUだけでなく欧州全域にイスラム教の移民大量に入国しているという問題があります。
そもそもEU加盟国に移民が入ってくるルートとして主なものは、シリアからギリシャのルートで入国してくるアラブ人、リビアから地中海を渡ってイタリアに入国というルートで入ってくる北アフリカ人・サハラ以南のアフリカ人が多い状況です。
本来ならばダブリン協定という国際協定があり、EU加盟国は、移民が入国した場合、最初に入国したそのダブリン協定国が面倒を見なければならないというルールがあります。
ダブリン協定=EU加盟国で難民として庇護を求める者は、最初に到着したEU加盟国で申請を行い、審査が実施される
地政学的に欧州の南に位置するイタリア、ギリシャらは、非常に不利です。というよりイタリアもギリシャもダブリン協定を守る気がなく、そのため次々にイスラム教徒やアフリカ人らが北上し、ドイツ、スウェーデン、英国に流れ込んでくるのです。
言葉も文化も異なる国民が一緒に暮らすというのは、なかなかできないことであり、こうしたこともEUという制度の矛盾の一つといえます。
3.変な法律を押し付けられるデメリットも・・・
上述の2つに加え、3つ目として、変な法律をEUが押し付けるという問題です。
例えば掃除機のワット数は何ワット以内にしなければならないとか、保険を販売する際に、男女の差をつけてはいけないなど・・・。保険の場合、本来は女性が長生きするということで、男女の保険は異なるはずです。例えば料率も異なるはずであり、リスクも変わるため、通常は保険料が異なります。
にもかかわらず、同じにしなければならないとする法律があり、その法律に従わなければなりません。
仮にも、そのルールを自国で決めているというならともかく、日本でいえば、東アジア共同体とか中国韓国と国境を自由にヒト・モノ・カネの往来が自由にできるとして、北京で決まった法律を、日本でも守らなければならないという状況なのです。
そのような状況では、共同体から逃げたくなるに決まっているでしょう。共同体に加盟するというのは、共同体を構成する国々と仲良くなるということではなく、主権を失うということであり、主権を失うということは、自国のことを自国で決めることができないということなのです。
EUでいえば法律が押し付けられ、自国で独自の規制がかけられないということになるわけですが、統一通貨ユーロについても同じことがいえます。ユーロに加盟した場合、通貨発行権を失い、財政政策や金融政策が自国でできません。事実ユーロ加盟国はECB(欧州中央銀行)によって、金融政策が実行されます。財政政策についても、デフレで赤字を増やさなければならなかったとしても、EUに加盟している限り、マーストリヒト条約によって財政赤字対GDP比率は3%以下にしなければならないとされており、十分な財政出動ができません。結果、デフレから脱却できないということがあり得ます。さらに関税もかけることもできないのです。
このように、EUやユーロというのは、戦争を起こさないようにする仲良しクラブのように、融和的で平和的なイメージがあるかもしれませんが、現実は自国で自国のことを決められず、法律による規制も自国でできなければ、金融政策も自国でできないというのが実態です。
読者の皆さんは、それでもEUは素晴らしい制度だと思うでしょうか?私は全くそう思えません。矛盾が多い制度ですし、EUは数年後崩壊していくものと思っています。
というわけで今日は「EU加盟後に国民の所得が激減したイギリス」と題して論説しました。
EUに加盟している限り、イギリス国民の所得は減少し続けていくことになるでしょう。それは貧困化が進むということと同じです。イギリス国民の所得が減少すれば、内需が低迷し、景気も低迷するということになります。
英国がそうした状況から抜け出すためには、自国の法律で外国人の入国を規制することができるように、EUから抜け出すより方法がありません。EUとは、そうした矛盾の多い制度であるということを、私たち日本国民も認識し、日本国内で起きている人手不足の解消策として外国人労働者の受入れが本当に正しいことなのか?自国のこととしてブレグジット問題を考えるべきであると私は思います。
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- 2019.04.13 Saturday
- 世界経済(欧州)
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- by 杉っ子