EU離脱案が2度も否決された理由の一つである北アイルランドとアイルランドの国境のバックストップ問題
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今日は「EU離脱案が2度も否決された理由の一つである北アイルランドとアイルランドの国境のバックストップ問題」と題して論説します。
1.北アイルランドとアイルランドの国境問題
2.「バックストップ」について
3.ブレグジット問題=国家主権を取り戻す問題
上記の順に論説し、私たち日本人は、このニュースをどうとらえるべきか?論説いたします。
1.北アイルランドとアイルランドの国境問題
昨日もEU離脱問題について取り上げましたが、英国が主権を回復することを意味するということをお伝えしました。
そのEU離脱案について、2019/01/15に下院議会で歴史的大差で否決されたメイ首相が取りまとめた離脱案を、メイ首相が修正したにもかかわらず、2019/03/12に再び下院議会で否決されてしまったのです。
なぜ2度も否決されるのでしょうか?
その象徴的といえるのが北アイルランド問題です。
<アイルランドとイギリスの北アイルランドの位置>
(出典:ヤフーの地図から)
上記の地図をご覧いただきたいのですが、北アイルランドとアイルランドは国境線を挟んで同じ島になっています。北アイルランドは英国の領土ですが、もともと英国に所属すべきか?アイルランドに所属すべきか?武力で争ってきました。
1960年代〜1990年代まで争われ、1998年にベルファストという和平合意が英国とアイルランドの間で締結されるまで争いは続きました。
北アイルランド問題では、武装組織がロンドンでテロをやっていたのですが、そのテロによって、命を落としたり、手足を失った人も大勢いたのです。
ベルファスト合意締結以降は、大きなテロというのはほとんどないようなのですが、現在、英国もアイルランドもEUに所属しているため、地図上では北アイルランドとアイルランドで国境線がありますが、実際には国境がありません。
この地域の人々は国境がなく自由に往来できるのです。川などで隔てられているわけでもないため、日本でいえば、大阪府と京都府、東京都と山梨県のように自由に往来ができます。EUが「人の移動の自由」を謳っているうえに、国境審査をする施設がないので、当然そうなります。
しかしながら2017年1月17日にメイ首相がEU離脱を表明し、英国はEUから離脱するという道を選ぶことを宣言しました。
そうなると英国とアイルランドの間の上記の地図上の国境線で国境ができ、関税がかけられることになります。関税をかけるためには関税検閲所を作らなければならなくなります。
とはいえ、英国もアイルランドも再びテロ多発を誘発するような国境線を引くことは本意ではありません。そのため、英国はアイルランドとの間で、目に見える国境は作らないようにしようとしているのです。
実際に英国がEUから離脱した後、英国とEUがどのような関係になるのか?は、新たな協定を作る必要があるのですが、当然この協定を作るには大変な時間がかかります。そのため、英国とEUとの間で離脱移行期間が設けられました。
2019/03/29がブレグジットの日ですが、3/29以降2020年末までの21か月間を離脱移行期間といい、この移行期間の間に、英国はEUとの間で新たな協定を作るということが決まっています。
この新たな協定を作るということについて、現実的な見通しをいえば、2年弱で具体的な協定を策定することは困難でしょう。
となれば離脱移行期間中に新たな協定が策定されずに離脱移行期間は終了することになります。
「じゃぁ!やっぱり北アイルランドとアイルランドで国境を作るしかないのでは・・・?」となればテロ発生が懸念されるため、一時的な解決策として出てきたのが、この「バックストップ」と呼ばれるもので、北アイルランドとアイルランドの国境は自由に往来できるようにするという緊急一時避難策です。
2.「バックストップ」について
「バックストップ」とは、離脱移行期間の間に、英国がEUと新たな協定を結ぶまでの間、暫定的にアイルランドと北アイルランドの間に国境を設けず、国境の往来を自由にできるようにしておく緊急一時避難策であると申し上げました。
私見をいえば「バックストップ」は、ないよりあった方がいいと思う一方、バックストップの問題点として、バックストップが継続する間、英国はEUにそのまま残留するということで、事実上EUに残る点が大問題です。
このバックストップが継続する間、EUに残ってEUのルールに従うというのが、メイ首相とEUとの間で取り決めた離脱案であったため、英国の下院議員の多くが反対したというのが、2回否決された理由であるといえるでしょう。
英国の下院議員が反対した理由として、「ちゃんとEUから離脱しろ!メイ首相の法案ではEUから離脱していないのと同じだ!」と主張していることについて、マスメディアが真実を正しく報じないため、多くの日本人は知らないと思われます。特にEU離脱派の保守党の議員が反対しているのです。
バックストップは、英国がEUとの間で具体的な協定が締結されるまでは良いと思いますが、EUはそもそも本当に英国とそのような協定を結ぶ気があるでしょうか?
EUからすれば英国の離脱を認めた場合、「こんな風に離脱ができるんだ!」となってEUに加盟する他国においても、主権を取り戻すべく、離脱のドミノ倒しになる可能性は十分にあるため、離脱を認めたくはありません。そのためEUとしては英国からの提案に物言いをつけ、具体的な合意をせずに、ズルズルと何年も続けていくことになるでしょう。
となればバックスストップは継続し、英国は永遠にEUに留まり続けることになります。つまりブレグジットといっても、メイ首相の修正案では実質的にブレグジットは実現しないのです。そうした懸念がメイ首相のEUとの合意案には含まれているため、英国下院議会は2回も否決したのです。
3.ブレグジット問題=国家主権を取り戻す問題
ここで大きな問題として皆様にお考えいただきたいのですが、ブレグジット問題は国家主権を取り戻すという問題です。
そして一度失った国家主権をEUから取り戻すことが、いかに大変なことか?ということ。国家主権がいかに大切か?という教訓をブレグジット問題が国際社会に教えているといえます。
実は英国以外でEUに所属する国の中にも、国家主権を取り戻したいという国・政党はたくさんあります。もしブレグジットが成就した場合、多くの国がEUを離脱し、最終的にEUは解体されることになるでしょう。
国家主権の大切さを、日本も英国から学ぶべきです。
ところが日本は周回遅れでグローバリズム礼賛し、推進しています。今年4月からは外国人労働者が何十万人も入ってきます。
確実にいえることは、日本人の賃金が下がるということ。自国民の賃金が下がるという問題こそ、グローバリズムの大きな弊害の一つといえるでしょう。
逆に外国から入ってくる労働者を制限することによって米国人の賃金を引き上げることに成功したのは、トランプ大統領です。そして英国の下院議員らは、米国のトランプ大統領と同じことをやろうとしているともいえるのです。
ところが日本は、といようり安倍政権でいえば、種子法廃止、水道法改正、電力自由化などなど、グローバリズム礼賛の政策しかやっていません。これでは日本は主権を失い、中国の属国になることですら普通にあり得ます。
というわけで今日は「EU離脱案が2度も否決された理由の一つである北アイルランドとアイルランドの国境のバックストップ問題」と題して論説しました。
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- 2019.03.25 Monday
- 世界経済(欧州)
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- by 杉っ子