否決されてしまった英国のEU離脱案

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     今日は「否決されてしまった英国のEU離脱案」と題して論説します。

     

     下記は日本経済新聞の記事です。

    『日本経済新聞 2019/01/17 英離脱 出口なき混迷 合意なしか延期か 議会否決 首相、指導力を喪失  

    【ロンドン=中島裕介】3月末に迫る英国の欧州連合(EU)離脱の先行きが混迷してきた。英政府がまとめた離脱案は15日の英議会(総合2面きょうのことば)下院で与野党からの反対で大差で否決。代替案の展望は開けず、経済や社会が混乱する「合意なき離脱」か、離脱時期の数カ月延期かの選択を迫られる可能性が高まった。与党は野党提出の内閣不信任案を16日に否決する構えだが、指導力を失ったメイ首相に残された手立ては限られている。

     前身の欧州共同体(EC)時代から約45年続いてきた関係を解消するための離脱案の英議会での採決は202対432だった。与党からも130人近い造反が出たためで、当初は200票以内との予測もあった票差は230票差となり、歴史的大敗となった。

     離脱案の否決後、最大野党の労働党のコービン党首は15日、内閣不信任案を提出した。英議会は16日に不信任案を採決する予定で、可決なら首相の退陣や議会の解散・総選挙につながる。解散・総選挙を回避したい与党は不信任案の可決は阻止する構えだ。

     次の焦点は21日にも議会に提示される見通しの離脱に関する代替案づくりだ。首相は離脱案否決後に「(EUとの)交渉が可能で、下院の支持が得られるアイデアに的を絞る」と述べ、超党派の合意が得られる代替案を目指す方針を示した。だが与党が大量造反し、野党も退陣を求める中では現実味は薄い。

     そもそも反対票を投じた保守党内の造反組の中には経済の混乱を伴う無秩序離脱も辞さない強硬離脱派や、離脱の是非を問う国民投票の再実施を求める残留派など立場の異なる議員が混在する。与党内でさえ落としどころを見いだすのは容易ではない。

    首相が超党派の代替案をまとめられるメドが立たない段階ではEU側も首相に譲歩案を示せない。フランスのマクロン大統領は「我々はすでに最大限のことをした」と指摘、大幅な修正には応じられないとの立場をにじませた。

     3月末までに代替案がまとまらない状況になれば「合意なき離脱」回避のために唯一残された選択肢は離脱時期の先送りとなる。首相は16日の議会で「合意が得られる見通しがたってはじめてEUは離脱時期を延期する」と、離脱案の合意を前提にした離脱時期の延期の可能性を排除しなかった。

     ロイター通信によると、ハモンド財務相らが離脱案の否決直後、英企業幹部と電話会議し「離脱延期の準備が行われている」と伝えた。ただEUでは離脱時期を延期する場合にも欧州議会が5月の選挙を経て新体制を発足させる「7月はじめまで」(EU外交筋)との見方が大勢だ。延期には英を除くEU27加盟国の全会一致の承認が必要で、ハードルは低くはない。

     政治の混乱が続く中、経済界のいら立ちは頂点に達している。英産業連盟は「英国の経済を守るための行動を即座に取るべきだ」と議会を批判。企業は物流網の見直しなど、最悪の事態に備えを急ぐ。』

     

     

     上記記事の通り、3月末に迫る英国のEU離脱の先行きが混迷してきました。英国政府がまとめた離脱案は、2019/01/15の議会下院で与野党の反対で大差で否決されてしまったのです。

     

     保守党から想像以上の造反が130人近くも出たため、202対432の大差で否決されてしまいました。EU離脱は、もともと難易度が高い話だったため、こうしたことは想像できたかもしれません。

     

     なぜ難易度が高いか?その象徴は、北アイルランド問題です。北アイルランドがEUを離脱する場合は、EUに加盟しているアイルランド共和国と、UK(英国)に属している北アイルランドで、明確に国境を引く必要があります。

     

    <アイルランドとイギリスの北アイルランドの位置>

    (出典:ヤフーの地図から)

     

     

     英国がEUから離脱する場合、UKとアイルランドとEUの3つを同時に立てることができません。即ちUKとアイルランドとEUは同時に成立しえないトリレンマになっています。北アイルランドとアイルランドに国境を引くことができればいいのですが、地図にある通り、同じ島の中で普通に陸続きとなっているのです。

     

     この北アイルランドとアイルランドに国境を引くという作業は、たとえ話として、いわば東京都と埼玉県で国境を引くという作業に等しいのです。

     

     まさかUKが北アイルランドを切り離すこともできないでしょうし、EUを完全破棄するか?UKを破棄するか?アイルランドの歴史を破棄するか?どれも難易度が高いのです。

     

     そうした状況の中で作られたのが、今回のEU離脱案だったのですが、初めから玉虫色にならざるを得ず、中途半端な離脱案となってしまい、議会からすれば「こんな中途半端な離脱案は、離脱案といえない!」という反対論が大勢を占めたのです。

     

     フランスのマクロン大統領は、一切譲歩はしないとしています。そうであるならば、考え方として長期的に考えれば英国にとってEU離脱する方が絶対にプラスであるため、EUとの合意なき離脱もありなのでは?とも考えられます。

     

     もちろんその場合は、EUとの貿易を完全に止めてしまうということになるのですが、そんなことができるのか?という問題もあります。

     

     全く妙案がなく先行きがどうなるか?本当に不透明になってきました。ですが、反グローバルでトランプ大統領よりも早く狼煙を上げたメイ首相を、私は応援したい。なぜならば英国国民にとってもその方が幸せになれるはずですし、他国もグローバリズムの思想が欺瞞であることに気付き、一気に反グローバルの流れが加速することは日本にとってもいいことからです。

     

     

     というわけで今日は「否決されてしまった英国のEU離脱案」と題して論説しました。

     マスコミ報道では、再び国民投票をやるという声もあるようですが、メイ首相は民主主義の破壊につながるとして、これを否定しています。だいたい一度国民投票で決めたものを、もう一回やるというのは、意味不明です。じゃんけんで勝つまでやるというのと同じことであり、民主主義発祥の国では、絶対にありえないことでしょう。

     日本でも大阪維新の会が、市民投票で一度否決された大阪都構想について、もう一回市民投票をやると主張しています。一度否決されたものを、僅差だったからといって決議されるまで国民投票をやるというのでしょうか?これではもはや「じゃんけんで勝つまでじゃんけんやるの?」という民主主義として到底容認できない話です。

     英国でそのような愚かなことは無いと思いますが、今後も事態を注視し、無事EUから離脱できるようにと見守りたいと思います。 

     

     

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