日中通貨スワップは誰のため?

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     今日は日中間で2018年10月26日に締結された日中通貨スワップについて取り上げます。

     

     まず、SankeiBizの記事を紹介させていただき、下記の順で論説いたします。

     

    1.通貨スワップとは?

    2.日中通貨スワップを締結した目的とは?

    3.人民元相場下落で外貨準備高を取り崩す中国共産党

    4.中国にはメリットがあるが、日本はリスクだけ

     

     

     下記はSankeiBizの記事です。

    『SankeiBiz 2018/10/27 06:13 日中首脳会談 通貨スワップ、第三国インフラ共同開発 経済協力へ環境整備は前進

     安倍晋三、李克強両首相は26日の首脳会談で、通貨スワップ(交換)協定再開や第三国でのインフラ共同開発で合意した。少子化で日本の国内市場が縮小する中、日系企業にとり、地理的にも近い中国経済の成長を取り込むことは喫緊の課題だ。安全保障面で中国を警戒する日本政府も、経済協力に向けての環境整備は進めざるをえない。

     「競争から協調へ、日中関係を新たな時代へ押し上げたい」。安倍首相は会談冒頭、こう述べた。

     日本銀行と中国人民銀行(中央銀行)が円と人民元を融通しあう通貨スワップ協定は、上限が3兆4000億円と、失効前の約10倍まで引き上げられた。

     今回の協定は、中国に進出している日系企業がシステム障害などで元決済ができなくなった場合、人民銀から日銀を通じて元を提供するという「日系企業の支援を目的としたもの」(財務省幹部)となっている。

     一方、インフラ開発での協力は日系企業の商機を広げる狙いがある。これまで日中は、海外でのインフラ開発をめぐり、激しい受注競争と値引き合戦を繰り広げてきた。協力が進めば無駄な競争がなくなり、値引き合戦がもたらす企業収益の悪化も避けられるようになる。

     中国の経済成長率は6%台に達し、日本の1%台を大きく上回る。日系企業にとって、中国市場の取り込みは不可欠となっている。

     財務省幹部は、すでに日中経済は「一体化している」と指摘する。貿易統計によると、2017年度の対中輸出額が15兆1873億円で、輸出総額の19.2%を占め国別で首位だった。中国に進出している日系企業の拠点数は3万超。中国の景気が日本の企業業績に直結する状況となっている。

     もっとも、中国経済に頼りすぎるリスクは大きい。中国では民間企業や家計の債務が拡大する一方、不動産価格が上昇しバブルが懸念されている。バブルがはじければ、一気に景気が冷え込む恐れがある。中国側の“企業文化”にも懸念は強く、中国企業と合弁を組む日系企業は、技術を手放すよう強要されるといった問題点が指摘されている。

     制度上も「中国から簡単に撤退できず、より生産コストの低い東南アジアなどへ拠点を移すことが難しい」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)。協力強化には細心の注意が求められそうだ。(山口暢彦)』

     

     

     

    1.通貨スワップとは?

     

     記事に記載の通り、2018/10/26に安倍首相は李克強首相と日中通貨スワップ協定を締結しました。”通貨スワップ”という言葉は聞きなれない言葉かもしれません。通貨スワップの”スワップ”は、交換を意味し、通貨スワップとは異なる通貨を一定の価格で交換する取り決めです。

     

     金融機関に勤務されている方であれば、デリバティブという言葉をご存知でしょう。スワップ取引はデリバティブ取引の一種で、銀行で金利スワップといえば、固定金利と変動金利を交換するスワップです。

     

     また銀行の融資先で企業のファイナンス手法に、デットエクイティスワップあるいはデットデットスワップという手法があります。デットエクイティスワップは、銀行借入などの負債を株式に交換するファイナンス手法をいい、デットデットスワップは銀行借入などの負債を劣後ローンや劣後債など広義の自己資本に該当するファイナンスに交換するファイナンス手法をいいます。

     

     通貨スワップは、異なる通貨間のキャッシュフローを交換します。例えば米ドルで支払うためにドル建て社債を発行した企業が、ドル円の為替リスクの変動を固定化させるために、ドル円の通貨スワップを実施することで、通貨スワップ実施後の米ドルの金利支払いと米ドルの社債元本償還が、円貨で確定させることができます。

     

     記事にある「通貨スワップ協定」は、企業のファイナンス手法ではなく国家間の中央銀行、即ち日本の場合は日本銀行、中国の場合は中国人民銀行との間で締結したものであり、万一人民元で通貨危機が発生した場合、日本の通貨をあらかじめ定めた円人民元レートで交換するという協定です。

     

     日中通貨スワップ協定によって、中国で通貨危機が発生した場合は、日本銀行はあらかじめ定めたレートで日本円と人民元を交換し、人民元の通貨を安定化させることが可能になります。スワップ規模は3兆4000億円と報じられていますが、3兆4000億円を上限に、日本銀行は人民元を買って日本円を売るというオペレーションを実行するのです。

     

     日中通貨スワップ協定によって何が起きるか?といえば、日本銀行のバランスシートが毀損するリスクが発生します。日本の国富が失われます。

     

     

     

    2.日中通貨スワップを締結した目的とは?

     

     では、なぜ日中通貨スワップを日本政府は締結したのでしょうか?何を目的に国富を流出させてまでして、こんなことをするのでしょうか?

     

     一つには日本企業を助けるためという論説があります。実際に麻生太郎財務大臣は「人民元を安定的に供給できることは、日本の企業の活動を支えるという意味で意義がある」と述べています。

     

     2018年1月12日にみずほ銀行が日本で初めて「パンダ債」という債権を5億人民元(当時の人民元日本円レートで約86億円相当)発行しました。その後、2018年1月15日に三菱UFJ銀行も「パンダ債」を10億人民元(同約172億円相当)発行しています。

     

     「パンダ債」というのは、中国国外の企業が中国本土で発行する人民元建ての債券なのですが、中国本土は香港と違って資本市場を海外に開放していないため、通貨危機などの事件が発生した際に、資金調達できなくなるリスクが極めて高いため、「パンダ債」を発行するということ自体が、極めてハイリスクな取引といえるでしょう。

     

     そのような「パンダ債」をみずほ銀行、三菱UFJ銀行が発行し、日本企業が買っています。もし中国の債券市場に混乱が生じた場合、こうした邦銀や日本企業が損失を被る可能性があるため、企業の活動を支えるという側面があるのは事実でしょう。

     

    <日中通貨スワップによって日本銀行が邦銀や日本企業に人民元を供給する仕組み>

     

     

     

    3.人民元相場下落で外貨準備高を取り崩す中国共産党

     

     中国では2015年に株式バブルが崩壊し、経済を立て直すために輸出を増やそうとして人民元安への誘導を図りました。それまでは人民元は強いということで、人民元は右肩上がりで他通貨よりも高く推移していたのですが、内需国ではなく外需に依存する中国にとって、人民元高は痛手です。

     

     そこで中国は他通貨を買って人民元を売却するという露骨な為替介入によって人民元高とならないよう為替レートを操作していました。海外の投資家の中には、中国は人口増大と経済成長を伴って需要が増え続けて高い経済成長を維持するという見立てから、人民元を買っていた投資家も多かったのです。

     

     ところが中国は輸出を伸ばそうとして2015年秋口以降、人民元安に誘導しました。その結果、人民元安となって投資家らが慌て売り始め、キャピタルフライト(資産逃避)が発生し始めたのです。

     

     このキャピタルフライトが止まらず、中国は外貨準備高を取り崩し、米ドルを売って人民元を買うという対応を取り始めました。以来、人民元が下げ止まらず、中国は外貨準備高の取り崩しを継続し、ついには爆買い規制にまで発展したのです。

     

     中国の人民元安対応は、爆買い規制に留まりません。送金規制も始めています。日本企業が中国で稼いだ人民元を、日本円に換金しようとすると、難癖をつけるなどして送金を規制しています。これも人民元安を食い止めるためにやっていることです。中国にとっては幸いにも爆買い規制、送金規制、外貨準備高取り崩しによる為替介入が功を奏し、2016/12/16に1ドル=6.9615人民元という安値から、人民元高に反転。2018/04/13に1ドル=6.2750人民元まで人民元高となったのですが、米中貿易戦争が表面化して再び人民元安のトレンドに転換しました。直近では下表のチャートの通り、2018/12/21時点で1ドル=6.9065人民元まで人民元安が進行しています。

     

    <人民元と米ドルのチャート>

    (出典:ブルームバーグ)

     

     そうした中、中国がチャイナグローバリズム(不平等なグローバリズム)を続け、発展途上国に高金利でお金を貸し込んでインフラを整備し、お金が返せなくなると領土を占有するという事件が、スリランカのハンバントタ港、ギリシャのピリウス港で発生。トランプ大統領に2017/01/20、ホワイトハウス国家通商会議ディレクターに指名されたピーターナヴァロ氏は、中国の「中国製造2025」「一帯一路」といった政策に対して、米国のピーターナヴァロ氏は軍事拡大が目的だとする論文を掲載。米中貿易戦争が本格化しました。

     

     米中貿易戦争は今年4月以降に激化し、ZTE問題に加え、直近ではHuawei排除という事件にまで発生しています。このような米中貿易戦争の激化によって、巨額な人民元売りとキャピタルフライトが継続する中、人民元暴落となって金利の高騰と悪性インフレが発生する土壌が醸成され、外貨準備高を取り崩して人民元を買い支えしているものの、人民元下落を止めるにまでは至っていない状況です。

     

     

     

    4.中国にはメリットがあるが、日本はリスクだけ

     

     この状況で2018/10/26に日本政府が中国共産党と日中通貨スワップを締結したということは、中国にとっては通貨暴落による最大3兆4000億円相当の損失を回避できる一方、日本は最大3兆4000億円相当の損失を被ります。

     

    <日中通貨スワップによる日本銀行と中国人民銀行のバランスシートイメージ図>

     

     もし日中通貨スワップが締結された今、人民元が10%値下がりした場合、どうなるでしょうか?

     

     中国は3兆4000億円の10%相当の3400億円を得する一方で、日本は3400億円損をします。日本銀行のバランスシートが3400億円毀損する=3400億円もの国富の喪失です。

     

     人民元は対他通貨で値下がりしていることは、先ほど述べました。1ドル=7.0000元のラインを割らないように為替介入を実施。具体的には中国共産党は外貨準備高取り崩しを継続しています。

     

     日本にとって「パンダ債」を発行したみずほ銀行や三菱UFJ銀行やら、それを購入した企業が、人民元安による債券相場下落から守るために日中通貨スワップと締結するというのは、国家として国益としてどうなのでしょうか?私は日中通貨スワップ締結はネガティブに考えざるを得ません。

     

     一部の民間企業の利益確保のために外交で譲歩する国が、世界で他にあるのか?と考えると、今回の日中通貨スワップ締結は大変憤りを感じざるを得ないからです。

     

     仮に「パンダ債」の下落ではなく、邦銀や日本企業が中国国内でビジネスチャンスだとして、麻生太郎財務大臣が指摘する人民元が安定供給されないリスクを懸念して日中通貨スワップを締結したのだとすれば、これまたおかしな話です。

     

     ローカルカレンシーである人民元を、ハードカレンシーである米ドルや日本円に交換できないというならば、まだ理解できるのですが、人民元が安定供給されないから・・・というならば、本来日本政府は中国から日本企業に撤退を促すべきではないでしょうか?

     

     通貨がまともに供給されないような国でビジネスを行うのは危険であるとして、中国から撤退を促すのが日本政府の役割であると私は思うのです。

     

     端的にいえば、日中通貨スワップは、中国にメリットがある一方、日本はほんのちっぽけな一部の企業の利益を守るために、最大で3兆4000億円もの国富を流出します。そうしたリスクを抱えるだけにとどまらず、トランプ大統領が日中通貨スワップの真意を知ったら、どうなるか?という点も指摘せざるを得ません。

     

     米中貿易戦争をやっている最中、日本が金融面で支援してるとなれば、日米FTA(二国間貿易協定)において、トランプ大統領は、高圧的な交渉を仕掛けてくる可能性があります。

     

     具体的には、アベノミクスの金融緩和策が為替誘導条項に認定されたり、通商問題ではコメなどの関税をゼロにしろとか、日本の市場を強硬に開放を迫る可能性が極めて高いと想定できます。

     

     

     というわけで今日は、日中通貨スワップについて取り上げました。

     2018/09/27に日米共同宣言で中国の不公正なグローバリズムに日米欧で対抗しようと宣言したにもかかわらず、1か月後の2018/10/26に日中通貨スワップを締結するというのは、あまりにも矛盾しているのではないでしょうか?

     この矛盾を野党の国会議員らは、ちゃんと指摘するべきなのですが、彼らもまた中国寄りで中国と仲良くするべきという浅はかな思想で指摘することができないのです。

     日本は終わっている!と思うのは私だけでしょうか?私は諦めません。こうした言論活動を通じて少しでも日本をよりいい方向にしていきたいからです。ぜひ皆様におかれましても日中通貨スワップがどれだけ国益を損ねるか?知っていただきたいと私は思います。

     

     

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