米国債残高1位の中国は米国債売却で反撃するという言説について

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     米中貿易戦争について、有識者と呼ばれる人の中には、米国が中国に勝てるわけがないと主張する人がいます。なぜならば、いざとなれば米国債残高の保有が1位の中国が、大量の米国債を売ってくるからだと。

     この言説は本当でしょうか?というよりも明らかに馬鹿げた話であることをご説明したく、今日は「米国債残高1位の中国は米国債売却で反撃するという言説について」と題し、金融面から米中貿易戦争を論じたいと思います。

     

     下記は今年秋口の2018/09/19のロイター通信の記事です。

    『ロイター通信 2018/09/19 10:42 中国の米国債売却はあるか、貿易摩擦激化で再び注目

     [ロンドン 18日 ロイター] - 米中両国が過去15年間築いてきた経済・金融関係において確固として変わらなかった要素が1つある。それは中国が保有する膨大な米国債を決して売らないという想定だ。

     米国債の売却は、両国にとって金銭的な打撃をもたらし、金融面以外でも非常に深刻な影響を受けるとみられるため、単純に発生しないという理屈になる。これを無視すれば、冷戦期の軍事理論「相互確証破壊(核戦争をすれば共倒れになること)」に経済的な超大国同士が踏み込んでしまう。

     だが米中の貿易摩擦が激化していることから、全く現実味がないとは言い切れないのではないか。

     近年、とりわけ中国経済の落ち込みが国際金融市場を動揺させ、結局人民元の約2.5%切り下げにつながった2015年8月以降は、中国による米国債売却は一度な米国でグーグルのニュース検索における「中国 米国債」というワード、あるいはウェブ検索での「中国 売却 米国債」というワードは今や、15年8月以降で順位が最も高くなっている。 らず市場に浮上してきたシナリオだ。

     米国でグーグルのニュース検索における「中国 米国債」というワード、あるいはウェブ検索での「中国 売却 米国債」というワードは今や、15年8月以降で順位が最も高くなっている。

     少なくとも米国の一般社会では、中国の米国債売却が再び視野に入ってきている。そしてもし貿易摩擦がさらにエスカレートすれば、米国債市場のレーダーに投影される日も遠くないだろう。

     トランプ政権は24日から、新たに2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税をかけると表明。中国もすぐに600億ドルの米製品に報復関税を課した。

     しかし中国側が標的にできる米製品の範囲は相対的に小さい。だから為替レートを対抗手段として利用し、3月以降で10%下がってきた人民元の対ドル相場がさらに大きく下落するのを容認するかもしれない。

     もっとも人民元安が進んだのは米中が関税をかけ合う前で、中国政府はその後、貿易面の痛手を相殺するために通貨切り下げはしないと約束している。つまり中国が今後人民元の下げ圧力に抵抗したいと望むなら、ともかく保有米国債の一部を売らざるを得ないだろう。

     そこで登場するのは3兆1100億ドルに上る外貨準備資産で、このうち1兆1800億ドルを米国債が占める。中国とすれば、米国債の購入を縮小ないし停止するか、一層踏み込んで売り切ることができる。 』

     

     米国が仕掛ける貿易戦争に対して、中国が米国債を大量に売り込んでくるリスクについてロイター通信が報じています。日本のマスメディアもそうですが、海外のマスメディアでさえ、この程度のレベルと言わざるを得ません。

     

     そもそも米国債を大量に売却してきたら、FRBが買い取ればいいだけの話です。これは日本における政府の借金問題と同じです。

     

     日本の国債の場合、1000兆円のうち数%を海外の投資家が保有しています。とはいえ、海外投資家が保有する国債は100%円建てであるため、何ら問題ありません。

     

     仮に海外の投資家が日本国債を売却したとして、日本円は日本国内でしか使えないため、ドルやユーロなどの他のハードカレンシーに交換します。その交換する先は銀行です。邦銀あるいは日本で免許を持つ銀行が投資家が日本の円建て国債売却代金の日本円を例えば米ドルに交換したとしましょう。

     

     邦銀や日本で免許を持つ銀行は円を手に入れることになります。円は日本国内でしか使えないため、インフレで企業の設備投資需要があれば貸付金になるでしょうが、デフレで資金需要が乏しい場合は、結局日本の円建て国債を買わざるを得ません。なぜならば銀行にとって預金は負債勘定だからです。日本円を借りてくれる人がいないから、民間の資金需要がないから、銀行は日本国債を買わざるを得ず、債券価格は上昇し、金利はゼロに限りなく近づくという状況が発生します。

     

     もしインフレになって資金需要が増え、銀行が国債売却して国債価格が下落して金利が上昇した場合は、日銀が買い取れば国債暴落・金利急騰は防げるため、日本国債については大量売却とか、大量の空売りとか、何ら心配は不要です。

     

     では米国債を中国が大量に売ってくるというのは、どう考えるべきでしょうか?

     

     米国債も同様で、中国が大量に売ってくることがあれば、FRBが買い取ればいいだけの話。それだけにと止まらず米国政府は2つの権利を持っています。

     

     一つはIEEPAと呼ばれる法律で「INTERNATIONAL EMERGENCY ECONOMIC POWERS ACT」の略です。この法律は、国際緊急経済権限法といって、安全保障上、重大な脅威がある場合、大統領の権限で金融制裁できるという法律です。

     

     二つ目は「USA Patriot Act」と呼ばれる法律で、米国愛国者法と呼ばれ、2001年10月26日に制定されました。2015年に「USA Freedom Act」に名称変更されましたが、この法律は、安全保障上の脅威に対して、資産を凍結・没収できるという法律で米国債も対象になります。

     

     米国には、この2つの法律があるため、ボタンを押すだけで中国が保有する米国債を没収することができます。米国債は券面で交付しているのではなく、電子登録でデジタルに米国が管理しているだけですので、一瞬にして簡単に没収することができるのです。

     

     日本には、国債保有者が安全保障上の脅威という理由で日本政府や日本銀行などが帳消しにするという法律は存在しませんが、米国には上述の法律が存在します。

     

     もし米国がこれを行使すれば、中国の信用は一気になくなり、中国経済は崩壊するでしょう。

     

     仮に米国の2つの権利が行使されなかったとしても、米国債の大量売却で、FRBが買い取らずそのまま価格が下落したとして、大量の評価損を抱えることになる米国債を保有している中国は大損します。

     

     結局、中国が大量に米国債を売却すれば、損するのは中国です。

     

     米中貿易戦争では、中国側に金融面で報復する武器があり得るようにみえます。米国債残高を大量保有する中国が有利に見えます。何しろ大量に米国に貸しつけているのと同じだからということなわけですが、そもそも米国には「IEEPA」と「USA Freedom Act」という法律があることを、そうした言説を放言する人らは知らないのでしょうか?

     

     はっきり申し上げますが、端から中国には勝ち目がないのです。

     

     ではなぜ「中国は大量に国債売却してくる!」という言説が出てくるのでしょうか?

     

     私が思うところ「中国は経済大国日本をあっという間に抜くほどの大国である!」と持ち上げたい人が、「中国は大国だから米国も手こずるに違いない!米国が関税を引き上げても無駄だ!」という結論があり、その結論を後押しするために米国債大量保有の話を持ち出しているのではないか?ということです。

     

     こういう明らかに間違っている結論に対して、間違いと気付かずその結論の後押しとなることを付け加えて正当化しようとするのは、心理学でいう認知的不協和と呼ばれるものなのですが、歯に衣を着せずにいえば、頭が悪いとしか言いようがありません。

     

     認知的不協和に陥った中国礼讃の間抜けな有識者が、こうしたばかばかしいシナリオをテレビなどで論じているのです。

     

     

     というわけで今日は「米国債残高1位の中国は米国債売却で反撃するという言説について」と題して論説しました。 


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