日産自動車のカルロス・ゴーン問題の先にあるものとは?

0

    JUGEMテーマ:通商政策

    JUGEMテーマ:グローバル化

    JUGEMテーマ:経済全般

     

     今日は、テレビ新聞でも大きく報じられている日産自動車のカルロス・ゴーン会長の役員報酬隠蔽事件を取り上げたいと思います。

     

     下記は朝日新聞の記事です。

    『朝日新聞 2018/11/24 05:03 退任後の報酬50億円隠蔽か 日産、ゴーン容疑者と契約

     日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬約50億円を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、ゴーン前会長が退任後に報酬を受け取る契約書を日産と交わし、毎年約10億円、5年度分で約50億円が積み立てられていたことがわかった。東京地検特捜部はこの契約書を押収。将来の支払いが確定した報酬として開示義務があり、事実上の隠蔽(いんぺい)工作と判断した模様だ。

     ゴーン前会長は、側近で前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)と共謀し、2010〜14年度の5年分の役員報酬について、実際は計約99億9800万円だったのに、有価証券報告書には約50億円少ない計約49億8700万円と記載したとする金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。

     日産は08年、取締役の金銭報酬の総額について、上限を29億9千万円と決定。有価証券報告書に記載された08年度の報酬総額は約25億円だった。一方、上場会社の役員報酬は09年度の決算から、年1億円以上を受け取る役員の名前と金額の開示が義務づけられた。日産の09年度分の取締役報酬の総額は約16億円に減り、その後も15億円前後になった。このうち、ゴーン前会長分は10億円前後だった。

     関係者によると、ゴーン前会長は自分が受け取るべき報酬は約20億円と考えていたが、報酬の個別開示の義務化を受け、「高額だ」と批判されることを懸念。役員報酬は約10億円にとどめ、別の名目でさらに約10億円を受け取る仕組み作りが必要だと考えたという。』

     

     

     この朝日新聞の記事とあわせ、日産自動車のカルロス・ゴーン問題について下記の順で論説します。

     

    1.カルロス・ゴーン氏の役員報酬について

    2.有価証券報告書の虚偽記載は金融商品取引法違反

    3.日仏の政治問題に発展するだけでなく、日米の通商問題に発展する危険性も・・・!

     

     

     

    1.カルロス・ゴーン氏の役員報酬について

     

     日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン氏が、役員報酬を99億9800万円を得ていたにもかかわらず、そのうち50億円を記載せず、49億8700万円と記載し、隠蔽工作したと報じられました。

     

     日産自動車といえば、経営不振だったときにカルロス・ゴーン氏が徹底的にコストカッターで経費削減し、業績をV字回復させた立役者として、カルロス・ゴーン氏を英雄のようにマスコミは報じていました。

     

     いつの頃だったか、株主総会シーズンを取り上げていたTVのニュース番組で、カルロス・ゴーン氏の報酬が10億近いことについて、株主にインタビューをし、インタビューを受けた株主が「カルロス・ゴーンは、利益を急回復させたので、もっともらってもいい」などと発言していたのを見たことがあります。

     

     その一方で、2017年秋に、新車の無資格検査問題という不祥事が発覚しました。デフレが続く中での利益追求でコストカッターを継続したために、事件が発生したものと私は思っています。

     

     2018年3月期決算(2017年度決算)において、カルロス・ゴーン氏も西川社長も事件の責任を取って報酬を削減しています。

     

    <2017年度決算資料におけるカルロス・ゴーン氏の役員報酬>

    (出典:2017年度の日産自動車の有価証券報告書から引用)

     

     

     

    <2016年度決算資料におけるカルロス・ゴーン氏の役員報酬>

    (出典:2016年度の日産自動車の有価証券報告書から引用)

     

     

     上記は2017年度と2016年度の有価証券報告書から引用したものですが、2017年度は無資格検査問題が発覚したということで、役員報酬を減額していますが、2016年度はマスコミ報道の通り、10億9800万円の報酬を得たことになっています。

     

     

     

    2.有価証券報告書の虚偽記載は金融商品取引法違反

     

     有価証券報告書の虚偽記載は、金融商品取引法によって罰されます。投資家が有価証券報告書を信じてその企業の株式を買ったにもかかわらず、有価証券報告書の記載事項に虚偽があったことで株価が下落して損失を受けたとなれば、普通に金融商品取引法で訴えることができるのです。今回の虚偽記載によって、株主代表訴訟に発展するかはわかりません。

     

     通常の不法行為で、民法709条の不法行為責任で訴える場合、落ち度を被害者側が立証する必要があるのですが、金融商品取引法では投資家側が立証する必要はなく、企業側は提訴されますと応訴するのは大変なことです。

     

     また、株主代表訴訟だけではなく、他の役員も会社に損害を与えたということで、会社法423条1項の任務懈怠責任を問われる可能性もあります。

     

     仮にも株主代表訴訟に発展したとした場合、株主代表訴訟は会社が被った損失について役員らが会社に補てんするという立て付けで裁判になります。

     

     一方で最近は弁護士の訴訟戦術として、会社を訴えるだけでなく、役員も一緒に訴えた方がプレッシャーを与えられるということで、会社法423条1項の任務懈怠責任によって役員個人も訴えるという訴訟戦術をとることも考えられます。

     

     訴えられた役員個人は、会社の顧問弁護士を弁護人とすることができません。理由は利益相反になるからです。

     

     役員個人が会社法423条1項の任務懈怠責任で訴えられて敗訴した場合は、役員個人の財産で補てんするということになります。そのため、役員個人も訴えるという訴訟戦術によって、訴えられた役員個人は日産自動車の顧問弁護士を弁護人にできず、自分で弁護士を探し出す必要があることに加え、敗訴すれば個人の財産で補てんとなるため、大変なプレッシャーを感じることになることでしょう。

     

     

     

    3.日仏の政治問題に発展するだけでなく、日米の通商問題に発展する危険性も・・・!

     

     カルロス・ゴーンが逮捕されて以降、日産自動車の株価はストップ安となり、1,000円以上を維持していた株価が、1,000円を割り込んで950円前後にまで下がりました。

     

     今回の事件で、フランスから「日本の恩知らず」などとする意見やら、日仏の外交問題にまで発展するとの見方が報じられています。しかしながら、そうした見方を否定するつもりはありませんが、もっと大きな問題に発展する可能性があります。

     

     それは「中国への1兆円の投資」です。

     

    『日本経済新聞 2018/02/05 11:30 日産、中国に1兆円投資 電動車20種以上投入     

    【北京=多部田俊輔】日産自動車と中国の東風汽車集団の合弁会社は5日、中国で2022年までに600億元(約1兆円)を投資すると発表した。22年までに電気自動車(EV)などの電動車を20車種以上投入し、同年に中国の総販売台数を17年実績比7割増の260万台に引き上げる。中国ではトヨタ自動車ホンダも販売や投資を拡大している。世界全体の3割を占める最大市場の開拓を日本各社が本格化する。(後略)』

     

     上記日本経済新聞の記事の通り、日産自動車は1兆円の投資をすると発表しました。東風汽車集団との合弁会社への1兆円投資は、2022年までとありますので、今もなお継続しているものと思われます。

     

     これは日産自動車としてというより、日本の自動車業界にとって、大変なリスクになりかねないのです。その理由は、今年2018/09/27に出された日米共同宣言です。

     

     この日米共同宣言において「WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく。」と宣言しました。(下方の全文の赤枠を参照)

     

    <2018年9月27日に行われた日米共同声明の全文>

    (出典:外務省ホームページ)

     

     

     上記の赤枠が何を指しているかといえば、中国のグローバリズムに対する徹底的な対処です。中国という国名を記載すれば、名指しで中国を批判することになるため、敢えてこのように表現したのでしょう。声明文には一切「中国」という記載はありません。

     

     有価証券報告書の虚偽記載は直接的に関係がありませんが、日産自動車がカネカネカネとやって利益追求を優先して、東風汽車集団への投資を継続した場合、日米の通商問題に発展する可能性があるのは、上記赤枠の部分が根拠です。

     

     2018/09/27に日米で厳密に対処すると日米共同声明で宣言したにもかかわらず、日産自動車が東風汽車集団への投資を継続されると、米国が日本は約束を破ったと判断する可能性があります。

     

     中国と米中貿易戦争を戦っている最中、米国に逆らったとみられる可能性がゼロではありません。そうなれば、日本の自動車業界に対して、報復として高関税を課されるというシナリオで、日本の自動車産業が大ダメージを被るリスクがあるのです。

     

     事実としてトランプ大統領は25%の自動車関税を示唆し、中国への投資を継続することが、そのトリガーとなるシナリオは十分にあり得るものと考えます。

     

     もしかしたら米国からの要請で、ルノーを通じた日本の最先端自動車技術の中国への流出を食い止めるため、日本政府が東京地検特捜部を動かして阻止したとも考えられます。自国民ファーストで反グローバルのトランプ大統領と、グローバル推進のマクロン大統領とでは、中国への技術流出についての懸念の温度差は歴然としています。グローバル推進であれば、たとえ中国が相手であったとしても、国防安全保障より優先してカネカネカネとなるからです。

     

     米国の要請で日本政府が東京地検特捜部を動かしたのが事実だとすれば、日米の二国間貿易協定でも借りを作るどころか、貸しを作ったとみることもできますし、日本の大切な技術の流出をルノー経由で中国に流れることを阻止した国益に適う行為ともいえます。いずれにしても憶測にすぎない部分もありますが、今後の行方を注視したいと思います。

     

     

     というわけで今日は「日産自動車のカルロス・ゴーン問題の先にあるものとは?」と題して論説しました。

     2018/09/27の日米首脳会談での日米共同声明の中身をみれば、政府も経団連も「対中国規制が必要!」と声を上げるべきなのは明らかです。にもかかわらず「今だけ、カネだけ、自分たちの代だけ」という経団連企業の幹部たちは、中国の企業や政府関係機関や経済団体と協力覚書を52件も締結しました。

     今回の有価証券報告書の虚偽記載事件によって、日産自動車のコーポレートガバナンスが見直され、日本を蔑ろにして中国への投資に傾注するという経営戦略をキャンセルするきっかけになればいいと思うのですが、米中貿易戦争の最中に、カネカネカネとやって中国への投資を継続した場合、日米通商問題に発展するというとんでもないシナリオもあり得るということを、日本人は知る必要があると私は思うのです。

     

     

    〜関連記事〜

    中国の公平でないグローバリズムに強硬な姿勢をとる米国と、製造2025をビジネスチャンスと考えるアホな国

    中国のAIIBと一帯一路に手を貸す銀行・企業は、中国の侵略に手を貸すのと同じです!


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031     
    << December 2018 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    recent comment

    • 英語教育について(トランプ大統領の演説を誤訳したNHK)
      永井津記夫 (12/07)
    • ハロウィーンは日本のお祭りとは違います!
      ユーロン (11/12)
    • オプジーボが医療財政の大きな負担であるため保険の適用外にしたいと思っている財務省
      SSST. (10/13)
    • サムスン電子について
      故人凍死家 (09/26)
    • 財務省の役人は、なぜ緊縮財政なのか?
      吉住公洋 (09/26)
    • 生乳流通改革という欺瞞と、イギリスのミルク・マーケティング・ボード
      富山の大学生 (06/05)
    • オランダ人の物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネス
      師子乃 (10/02)
    • オランダ人の物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネス
      mikky (12/01)

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM