”海外に出なければ!”という価値観が日本をダメにする!
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今日は「”海外に出なければ!”という価値観が日本をダメにする!」と題し、現在の経団連が安倍政権と緊密であることについて触れたいと思います。
下記は時事通信の記事です。
『時事通信 2018/09/19 16:15 「軽団連」ブログに返信=中西経団連会長、異例の対応
労使の賃金交渉で主導権を失っているなどとして経団連を「軽団連」と批判した日本財団の笹川陽平会長は、19日付のブログで、中西宏明経団連会長からの「返信」を公開した。ブログでの批判に対し、経団連会長が自ら長文の書簡を送るのは極めて異例だ。
笹川氏は8月13日付のブログで、経団連の存在感の低下を憂える「経団連は今や軽団連?」と題した文章を掲載。「最近は、労使の賃金交渉の主導権を官邸にとられ、経済政策もアベノミクスに追従するばかり」と批判した。
中西氏本人からの書簡がメールで届いたのはその翌14日。
中西氏は「拝啓 初めてお手紙をお送りさせていただきます」との書き出しで、2000字超をつづった。安倍政権からの毎年の賃上げ要請について「確かに異常と思われる方も少なくない」と指摘し、労使交渉の現状への批判には一定の理解を示した。
一方、経済政策をめぐっては「デジタル化を真正面に捉えた経済政策を提言し、科学技術基本計画と未来投資計画に反映して頂いた」と主張、政権追従との見方に反論した。ただし、「国民に納得いただいていないのは我々の努力が足りない」と反省の弁も記した。』
上記記事は、日本財団の笹川陽平会長が、安倍政権に追従するばかりの経団連のことをブログで「軽団連」と揶揄し、それに対して経団連の中西宏明会長が批判の返信をしたとするニュースです。
日本財団の笹川会長は、ブログで次のように指摘していました。
『かつて経済団体連合会の会長は財界総理といわれ、政治指導者からも一目置かれる存在だった。然るに最近は、労使の賃金交渉の主導権を官邸にとられ、経済政策もアベノミクスに追従するばかり。経団連には国家観も国民を納得させる経済政策も感じられず、官邸に追従する存在に成り下がってしまっている。そんな体たらくでも格式だけは高く、経団連序列も存在するそうで、旧態依然とした体質に変化はない。(後略)』
笹川会長の経団連に対する評価は、国家観も国民も納得させる経済政策も感じられないという思いを率直に述べられたものと理解します。
例えば経団連がどういう主張をしているか?といえば、法人税を引き下げて欲しいと主張する一方、消費税を引き上げろと主張しています。反論のメールをしたとされる経団連の中西宏明会長は、消費増税は延期すべきでないと再三にわたってマスコミに向かって主張されています。
この2つの主張を考えるだけでも、要は「自分はお金を払いたくないが、自分が払っている分を大衆からお金を取ればいい!」といっているのに等しいのです。
消費増税すれば、確実に消費が縮小して国民生活が苦しくなり、日本国内で展開しているビジネスの収益は落ち込むということが予想されるにもかかわらず、消費増税すべきと主張しているともいえます。
中西会長の出身母体の日立製作所はグローバル企業で輸出も多いため、輸出戻し税の還付金が入ってくるという目論みもあるでしょう。消費増税分が法人税減税の肩代わりになるという目論みもあるでしょう。
とはいえ、これでは日本財団の笹川会長に、国家観も国民が納得できる経済政策も感じられない「軽団連」と揶揄されても仕方がないのではないでしょうか?
長期的なビジョンすら持たず、見ているものは何か?といえば、目先の損得勘定しか見ていないと言わざるを得ません。
目先の損得勘定に走ることで、周囲に迷惑がかかり、国家的にも被害を与え、長期的には日立製作所を含む自分たちも損するということを指摘できるわけであって、国家観がないと言われても仕方がないでしょう。
その経団連は2018年9月に、2019年度の税制改正に関する提言を発表しており、2019年10月消費増税10%の確実な実現と、企業の研究開発費減税の拡充を求めています。
また中西会長は、安倍総理が消費税を予定通り10%に引き上げる方針を表明したことについて、非常に良いことだと歓迎するとも述べています。
消費増税で景気が腰折れする事態も心配されている中で、経団連は消費増税に賛成しているのは、輸出する際、自分たちの下請け会社(部品メーカーなど)には消費税を払わせる一方、自分たちは輸出する分の売上については、輸出戻し税で還付を受けて消費税を払わなくて済むからです。
まさに大衆に消費税を負担させ、自らは消費税は払いたくないというエゴそのものです。
法人税は、かつて40%台だったのが、今や連結決算・連結納税で、20%程度の半分程度まで下がっています。法人税が全体で何百兆円も全体で減少する一方、消費税の税収分は拡大しています。いわば大衆から取った税金で企業の法人税を肩代わりしているともいえるでしょう。
政府や財務省らの家計簿発想の財政運営に加え、経団連までもがその状況を維持もしくはさらに加速化させる経済政策を推進することで、世界最低の経済成長率で低迷し、日本国民の貧困化と日本の発展途上国化をもたらしているともいえます。
いわば政府と企業がタッグを組んで、日本をダメにしているという側面があるのです。
経団連は研究開発費減税の拡充も求めていますが、これには私は賛同いたします。なぜならば研究開発は、その企業だけが儲かるわけではなく、日本の未来を作るための投資という側面があり、公共投資と一部類似するところがあると思うからです。
そうした研究開発費を促進するために減税を望むというのは、一定の意味はありますが、だからといって消費増税するというのは本末転倒です。
日本の未来を考えるのであれば、研究開発をしない企業には法人税を増税するなど、法人税の税制中立でそうした方針も考えることができるでしょう。
中西会長は、市場の状況をみていると、需要が冷える感じがしないとも語っていますが、中西会長の経済についての肌感覚はどうなっているのでしょうか?
一点目は、消費増税後、どういう状況になっているか?といえば、2017年度の実質GDPの輸出は2013年比で約17兆円拡大しています。逆に実質GDPの内需は2014年〜2017年で4年間で3兆円前後のマイナスを続け、2013年度の消費税増税前の水準に達していません。家計消費は消費増税8%後、2014年〜2017年で毎年縮小しているのです。
<実質GDPの推移(単位:10億円)>
(出典:内閣府のホームページから引用)
上図でいえることは下記の通り。
●家計消費は2013年度をピークで、消費増税8%以降の2014年〜2017年は2013年度の水準に戻っていない
●2019年度に輸出が大きく落ち込んでいるが、これはリーマンショックの影響
●消費増税以降も輸出は伸び続けている
●輸出は2003年頃までは50兆円前後であり、家計消費200兆円超と比べて25%以下で、内需主導の国力が強い国だった
オレンジ色の輸出が増えて、青色の個人消費が伸び悩むというのは、外需依存が高まったということであり、国力が弱体化しているといえます。
二点目として、外需はこれから冷え込むでしょう。株価は米国株が下落し、日本株も23000円を割り込みました。中央政府も景気の不透明感が明確にあるといっています。IMFも将来に対して世界経済が非常に厳しいといっています。外需のおかげでビジネスがうまくいっているのが大企業だとすれば、その外需も危ない状況になっているのです。
何をみて中西会長が「冷える感じがしない」と発言しているのか?輸出が伸ばせると思っているのか?全く理解ができません。
というわけで今日は「”海外に出なければ!”という価値観が日本をダメにする!」と題して論説しました。
中西会長の発言は、今が良ければということしか見えておらず、「今だけ、お金だけ、自分だけ」という近視眼的な発言しか聞こえません。内需をもっと大切にすべきなのですが、経団連や大企業は世界を見ています。内需をおろそかにして「海外に出なければ!」という発想でいるからこそ、中国製造2025についてもビジネスチャンスといって飛びつくのでしょう。
治安が良く、中間層が多いということでアクセスがたやすい日本市場こそ、もっと重視していくべきであり、経団連は、そのための提言を政府・内閣にするべきです。
海外海外という企業の価値観こそが、日本をダメにしていると私は思います。
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- 2018.11.18 Sunday
- 日本経済(反グローバル)
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- by 杉っ子