輸出戻し税について

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     今日は「輸出戻し税」というものをご紹介いたします。

     

     経団連の中西氏は、消費増税に前向きなコメントをしています。トヨタ自動車の豊田章男社長は、消費増税のたびに自動車市場の国内需要が減っているとして自動車税の軽減について触れました。

     

     豊田章男社長は、消費増税で消費が落ち込むという認識をしているわけですが、中西氏は消費が落ち込む落ち込まないに関係なく、消費増税に大歓迎というスタンスです。

     

    『日本経済新聞 2018/10/15 19:45 経団連会長、消費増税表明を歓迎 10%超の議論「今ではない」     

     経団連の中西宏明会長は15日、都内で記者団の取材に応じ、安倍晋三首相が2019年10月に消費税率を予定通り8%から10%へ引き上げると表明したことを受け、「歓迎する。景気対策も同時に考えていただけるということでいい宣言だった」と述べた。

     先進国で最悪水準の財政状況を考えると、10%超に引き上げる議論が必要ではないかとの問いに対しては、「今言うべき話ではない。まずは10%にきちっと上げることが非常に重要でステップを踏むことが大事だ」と話した。

     日本商工会議所の三村明夫会頭は「引き上げ前後の需要変動に対する平準化対策の一環として検討するガイドラインの策定にあたっては、中小企業の円滑な価格転嫁が損なわれることがないよう十分に配慮していただきたい」と要望した。

     経済同友会の小林喜光代表幹事は「財政健全化目標とバランスのとれた需要平準化策の具体化を進めていただきたい」とした。』

     

     

     なぜ中西会長をはじめ、大企業は消費増税に賛成なのでしょうか?

     その理由の一つとして「輸出戻し税」の税還付を指摘する人がいますが、輸出戻し税とは、いったい何なのでしょうか?

     

     

    1.消費税の始まりについて

    2.輸出戻し税の概要とその問題点

    3.輸出戻し税で相対的に大企業が有利とされる言説について

     

     上記の順で「輸出戻し税」の問題点を論じます。

     

     

     

    1.消費税の始まりについて

     

     米国では、州税という付加価値税がある一方で、米国国家として課税する付加価値税制度が存在しません。即ち米国には国家として課税する消費税というものがないのです。

     

     消費税が導入されたのはフランスが世界で初めてなのですが、導入された背景としては、フランス政府が自動車メーカーのルノーを支援するためだったという説があります。ルノーといえば、日本の自動車メーカー日産自動車(証券コード:7201)の親会社です。

     

     フランスにおける消費税導入は、日本のように直間比率是正(直接税と間接税の歳入の比率について、法人税や所得税の比率を下げて消費税の比率を引き上げること)やら財政再建などということを目的に導入したわけではありません。

     

     では、フランスで導入された消費税がルノーを支援するというのは、どういうことなのでしょうか?

     

     GATT体制下において、輸出企業に対して政府が助成金を出すことはできません。そこで輸出を振興させたいフランス政府が付加価値税の仕組みを考え、ルノーに堂々と「事実上の補助金」を出すべく、付加価値税を国民に課税したことが現在広まった消費税の始まりだったとする言説があります。

     

     GATTとは「ガット」といい、General Agreement on Tariffs and Trade の略で、日本語で「関税及び貿易に関する一般協定」と訳します。ガットは国内産業育成のための保護手段として関税のみを認めてきました。ガット締結国は、関税引き下げのための二国間交渉ではなく、多数国間交渉のほうが効率的であるとし、多角的貿易交渉によって関税を引き下げてきたという経緯があります。初めての多国間貿易交渉は第一回、スイスのジュネーブで1947年に行われ、23か国45,000品目において、関税引き下げの措置が行われました。

     

     

     

    2.輸出戻し税の概要とその問題点

     

    日本の消費税法第7条に輸出免税に関する記載があります。

    『(輸出免税等)

    第7条 事業者(第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。

    一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(後略)』

     

     消費税は、外国の消費者に負担させてはいけないという考え方があります。これはGATTが消費地課税主義という考え方に基づいているためであり、輸出製品に対する消費税は免除されます。即ち海外に輸出したものは、消費税が免除されるのです。

     

     

    (1)消費税8%で1台200万円の自動車を国内販売した場合のシミュレーション

     

    <図 Ь暖饑韮検鵑韮餌罍横娃伊円の自動車を国内販売した場合>

     

     上図,蓮⇔磴┐丱肇茱深動車や日産自動車をはじめとする自動車メーカーが自動車部品を100万円で購入し、自動車メーカーが組み立てて200万円で日本国内の消費者に販売した場合のイメージ図です。

     

     日本国内で販売した場合は、消費地課税主義に基づき、国内の購入者は消費税16万円を負担します。これを自動車メーカーと部品メーカーのそれぞれに分解してみましょう。

     

     自動車メーカー(自動車の組立製造と組立後完成車両の販売)の付加価値200万円×8%(消費税率)=16万円

     自動車部品メーカー(自動車部品の製造と自動車メーカーへの販売)の付加価値100万円×8%(消費税率)=8万円

     

     お金の流れは下記の通りです。

    ●自動車部品メーカーは自動車メーカーから消費税込み108万円受領する

    ●自動車部品メーカーは消費税8万円を消費税として納付する

    ●自動車メーカーは自動車部品メーカーに対して、部品代100万円と消費税8万円を合わせた108万円を支払う

    ●自動車メーカーは国内消費者から消費税込み販売価格216万円受領する

    ●自動車メーカーは消費税8万円を消費税として納付する

     

     このようにして、自動車メーカーは8万円、自動車部品メーカーは8万円の消費税をそれぞれ納付します。

     

     参考までに、この場合の自動車メーカーの売上総利益(粗利益≒GDP)は、売上高200万円ー売上原価100万円=100万円となります。

     

     

    (2)消費税8%で1台200万円の自動車を海外へ輸出販売した場合のシミュレーション

     

    <図◆В餌罍横娃伊円の自動車を海外へ輸出販売した場合>

     

     上図△蓮⇔磴┐丱肇茱深動車や日産自動車をはじめとする自動車メーカーが自動車部品を100万円で購入し、自動車メーカーが組み立てて200万円で海外の消費者に輸出販売した場合のイメージ図です。

     

     海外に輸出販売した場合は、消費地課税主義に基づき、海外の購入者は消費税16万円の課税はありません。この場合、自動車メーカーと自動車部品メーカーでお金の流れを分解しますと下記の通りです。

     

    自動車メーカー(自動車の組立製造と組立後完成車両の販売)の付加価値200万円×0%(消費税率)=0万円

    自動車部品メーカー(自動車部品の製造と自動車メーカーへの販売)の付加価値100万円×8%(消費税率)=8万円

     

    お金の流れは下記の通りです。

    ●自動車部品メーカーは自動車メーカーから消費税込み108万円受領する

    ●自動車部品メーカーは消費税8万円を消費税として納付する

    ●自動車メーカーは自動車部品メーカーに対して、部品代100万円と消費税8万円を合わせた108万円を支払う

    ●自動車メーカーは海外消費者から販売価格200万円受領する

    ●自動車メーカーは輸出戻し税8万円の税還付を受ける

     

     このようにして、自動車メーカーは輸出戻し税による8万円の税還付を受ける一方、自動車部品メーカーは8万円の消費税を納付します。

     

     参考までにこの場合の自動車メーカーの売上総利益(粗利益≒GDP)は、図,里箸と同じで、売上高200万円ー売上原価100万円=100万円となります。

     

     

     

    3.輸出戻し税で相対的に大企業が有利とされる言説について

     

     輸出戻し税について、”大企業優遇策だ!”とか、”輸出戻し税で大企業が儲かる”という言説があるのですが、これは間違っていると考えておりまして、少し考察したいと思います。

     

     先述の図´△離院璽好好織妊でいえることは、,皚△蘯動車メーカーの粗利益は100万円で同じです。ところがデフレで値下圧力がある場合、自動車メーカーと自動車部品メーカーとの間では、自動車メーカーが強く圧力をかけることがあります。

     

     輸出振興するために消費税を導入したとして、果たして自動車メーカーが自動車部品メーカーから100万円定価で税込み108万円を払ってくれるか否か?

     

     例えば自動車メーカーが部品メーカーに対して相見積もりを取るなどして値下げ圧力をかけ、結果的に消費税分値下げをして税込み100万円で部品を調達した場合はどうなるでしょうか?具体的には自動車メーカーが「車が売れなくなって、うちも経営が苦しいから消費税8%をまけて欲しい!」などといって、消費税分8%相当を部品メーカーに負担させてしまったらどうなるでしょうか?

     

    自動車メーカー(自動車の組立製造と組立後完成車両の販売)の付加価値200万円×0%(消費税率)=0万円

    自動車部品メーカー(自動車部品の製造と自動車メーカーへの販売)の付加価値92.59万円×8%(消費税率)≒7.4万円

     

     消費税分8%相当を部品メーカーに負担させることで、部品価格92.6万円、消費税7.4万円となります。

     

     このとき、自動車メーカーは輸出戻し税7.4万円を手にし、自動車メーカーは部品メーカーに支払った7.4万円を相殺できます。

     

     この流れを考えれば、ご理解できると思うのですが、自動車メーカーは輸出戻し税で儲かってはいません。消費税7.4万円を輸出戻し税の税還付で相殺しているだけですので、輸出戻し税で大企業が儲かるという言説は間違っているといえます。

     

     では消費税が輸出補助金になっているという言説はどうでしょうか?

     

     輸出補助というと、海外への輸出促進という側面が強く感じられるかと思います。それは輸出戻し税という税制問題で大企業が還付を受けられるからという問題よりも、消費税分下請企業に負担させて、自らは粗利益を減らさないで海外輸出しているだけであり、どの部分が輸出補助になっているのか?私には理解ができません。

     

     輸出補助というよりは下請の粗利益を減らすという点で、「大企業粗利益維持」と「下請企業粗利益減少」の組み合わせによって、”下請企業よ!大企業より貧乏になれ!”という政策というのが実態であると私には思えるのです。

     

     特に価格圧力の値下げは、まさに大企業と下請企業の間で発生するのですが、デフレ放置によって消費者からの値下げ圧力で大企業が苦しんでいることも確かです。

     

     経団連の中西会長は輸出戻し税があるから、消費増税に賛成しているわけではなく、別な理由なのでは?と考えます。端的にいえば、社会保障費などを、富裕層の負担を抑制し、広く貧乏人も含めて多くの人から取るべきだという考えが根底にあるのだと考えます。

     もちろん、私はこの考えには賛同いたしませんが、だからといって消費増税反対の理由に、輸出戻し税で大企業は儲かる旨を指摘するのは無理があると思うのです。

     

     

     というわけで今日は「輸出戻し税」を取り上げ、ご紹介しました。

     私はデフレ放置の状態での消費増税は反対の立場です。とはいえ「輸出戻し税で大企業が儲かるから反対」という言説は間違っています。

     また、直間比率是正という消費税賛成の大義名分にも反対です。間接税が異常に低く、直接税が異常に高かったりしたとしても、ビルトインライザー機能が効くというメリットがあります。

     「法人税」「所得税の累進課税」が高いということは、決して悪いことではありません。投資抑制して景気を自動的に安定させるというスタビライザー機能を持つからです。景気が悪くなった結果、赤字企業や失業者が発生しても彼らに税負担させず、景気が良くなった場合は、逆に投資過熱を抑制するという効果があるのです。景気の過熱を防いで景気を自動的に安定させるという働きのことをスタビライザー機能といいます。

     税制の議論をする際には、こうした正しい理解のもと、日本国家としてはどうすべきか?議論を進めていただきたいと思います。

     

     

    〜関連記事〜

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