世耕経産相の”カード手数料下げ要請”にみるデフレ脳と泥縄状態の消費増税対策

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     今日は「世耕経産相の”カード手数料下げ要請”にみるデフレ脳と泥縄状態の消費増税対策」と題し、世耕大臣によるカード手数料引き下げ要請のニュースを取り上げます。

     

    1.カード会社の手数料下げ要請の目的は何か?

    2.ポイント配布や商品券配布や現金配布の経済効果について

    3.増加する社会保障費のために税収を増やそうとするならば名目GDPを増やすことが必要

     

     上記の順で論説し、改めて消費増税に対して反対の旨を述べさせていただきます。

     

     

     まずはブルームバーグの記事を紹介いたします。

    『ブルームバーグ 2018/10/19 12:59 クレセゾンや丸井G株急落、経産相がカード手数料下げ要請検討と発言

     クレディセゾンや丸井グループなどクレジットカードを発行する企業の株価が急落している。世耕弘成経産相が19日午前の会見で、加盟店がクレジットカード会社に支払う手数料の引き下げを要請する考えを明らかにしたことが売りを誘った。

     エポスカードを手掛ける丸井G株は一時前日比11%安と2015年8月以来の日中下落率、クレディセゾン株は8.7%安と16年6月以来の下落率となった。このほか、楽天カードを持つ楽天株やイオンカードのイオンフィナンシャルサービス株も5%超の下落率だった。

     世耕氏は同日午前の閣議後会見で、キャッシュレスの対応では日本が世界の流れに遅れているとし、その背景には「手数料負担が重いことがあった」と指摘。消費税の引き上げに合わせキャッシュレス決済を活用すればポイントを還元したり、値引きしたりする景気対策の導入が検討されていることから、手数料の引き下げ措置を考えることが必要だとし「関係事業者に協力をお願いしないといけない」との考えを示した。

     みずほ証券の佐藤耕喜シニアアナリストは同日付のリポートで、クレジットカード業界にとってこれまでの競争条件に変化を及ぼす可能性のある話で「マージン悪化リスクがある」と指摘。しかし、手数料率が少々引き下げられたとしても、中小の小売店舗に導入を決断させるような水準までは下がりにくいと考えられることや、より手数料率の低いQRコード決済などが主流となる可能性があることなどから「実効性には疑問符」との認識を示した。

     SMBC日興証券の原貴之アナリストは、経産省が主導するキャッシュレス化推進と、消費増税に伴う経済対策は別の命題で、「これらを組み合わせる経済合理性や政策実現性は低い」との見方を示した。

     政府のカード手数料引き下げ要請については、産経新聞が19日付朝刊で報じていた。』

     

     

    1.カード会社の手数料下げ要請の目的は何か?

     

     カード会社への手数料引き下げとはいったい何のためにすることなのでしょうか?

     

     消費増税対策を推進するため、キャッシュレスで2%ポイント還元するための環境の整備が目的といえるでしょう。政府はクレジットカード決済をすることで2%ポイント還元するとして、「消費増税対策」と「キャッシュレス推進」の一石二鳥と言いたいのだと考えます。消費増税を実施した後、個人消費が落ち込むと思うから、こんなことをするとしか考えようがありません。既に消費税は泥縄の状態といえます。こんな泥縄の複雑になるくらいなら、消費が落ち込むことを予想するのであれば、最初から消費増税をしなければいいのです。

     

     カード会社の話に戻します。

     

     1つ目として、クレジットカード会社というのは、個人の信用を調査し、買い物の決済における集金代行をするサービスともいえるのですが、そのサービス料を加盟店から手数料として徴収します。それがクレジットカード会社の売上高になります。

     

     カード決済の金額が大きければ大きい(名目需要が高い)ほど、件数が増えれば増える(実質需要が多い)ほど、クレジットカード会社は儲かるというわけです。

     

     ブルームバーグの記事の中で経済産業省の世耕氏が、日本のキャッシュレス対応の遅れの原因は、”カード会社の手数料が高い”旨の発言をされています。マクロ経済的にいえば、これはデフレ脳に侵された発言です。

     

     みずほ証券のアナリストの声でも批判的な意見が掲載されていますが、私が思うに「料金が高いから安くしろ」というのは、名目需要を削減するインフレ対策です。 

     

     もちろんカード会社が加盟店手数料を引き下げることで、カード決済のシステムを持たない小売店などは、新たにカード決済のシステムを導入することはあるかもしれません。仮に手数料が高いことを嫌って高額商品を取り扱う小売店などが加盟する可能性もあります。

     

     とはいえ、加盟店手数料を下げるという名目需要の削減によって、逆に加盟店の店数が増加して決済金額と決済件数が増加することで名目需要・実質需要が増えたとして、加盟店手数料の減少分をそれらの増加分で埋め合わせることは可能なのでしょうか?

     

     その答えは、可能かもしれないし不可能かもしれないし、誰にもわかりません。消費増税をすれば、高額商品自体の消費は減少するでしょうし、決済件数も増加するとは限らないのではないでしょうか?

     

     これは「法人税を減税すれば投資が増える」とか「銀行が貸出金利を引き下げれば投資の需要が増える」という発想と似ていると思うのです。

     

     例えば法人税を減税したとしても、需要がなければ経営者は投資(設備投資・在庫投資)しません。減税した分効率よく内部留保を貯めていくだけです。

     

     また銀行の貸出金利を引き下げても投資の需要がないのは、値段を下げなければモノ・サービスが売れにくいデフレの状況であれば、銀行から借り入れをしてのビジネスはたとえ金利がどれだけ安くても儲からない環境であるがゆえに、経営者はお金を借りてまでして投資をしようとはしないのです。

     

     何が言いたいかといえば、カード会社の手数料を引き下げ要請するくらいならば、普通に消費減税して個人消費を喚起すれば「カード決済の金額も件数も増えていくのでは!」と思うのです。

     

     

    2.ポイント配布や商品券配布や現金配布の経済効果について

     

     2つ目として、ポイント還元することで、その分の消費が増えるでのは?という意見もあるかもしれません。しかしながらポイント還元した分が必ず消費が増えると言い切れるのでしょうか?

     

     この議論は、個人消費を活性化するために商品券を配布するという政策と同じことがいえます。例えば消費税対策として商品券を10万円配布するとしても、10万円分月収から現金で貯金をする人、住宅ローンなどの借金返済をする人っていないでしょうか?

     

     因みにこの10万円分貯金や住宅ローンの借金返済は、消費ではないため、誰の所得にもなりません。消費=支出=生産のどれにも該当しないため、貯金した分や借金返済した分はGDPは増えず経済成長は抑制されます。

     

     何が言いたいかといえば、還元されたポイントは有効期限があるから、必ず消費に回るという議論は、商品券配布の議論と同じで、その分毎月もらえる給与から貯金が増える、借金返済する人が絶対ないとは言い切れますか?ということ。政府が「ポイント分を貯金したり借金返済に回すのは禁止で、必ずモノ・サービスを買いなさい!」と個人の消費行動をコントロールすることは不可能です。

     

     大変残念ですが、リフレ派が主張するようなヘリコプターマネーにしろ、商品券配布にしろ、ポイント配布にしろ、その分が必ず消費に回ると考えている人の誤解は、政府が個人の消費行動の選択肢の中に、毎月もらえる給料からポイント分を預貯金する、借金返済の一部に充てるという選択肢があることを見落としていることに尽きます。

     

     ポイント還元や商品券配布の経済政策が個人消費に全く経済効果がないとまでは言いませんが、少なくとも政府支出による公共事業は、予算化されて年度内に必ずお金を費消しますので、必ず年度内に消費=生産=分配が発生するのと比べれば、経済効果は限定的といえるでしょう。

     

     カード会社への手数料引き下げは経済成長に必ず資するとは誰も言い切れず、公共事業を増やす方がはるかに経済成長効果があります。もとより消費増税によって消費が落ち込むことを心配するのであれば、最初から消費増税なんてしなければいいだけの話です。

     

     

    3.増加する社会保障費のために税収を増やそうとするならば名目GDPを増やすことが必要

     

     そもそも税収を増やすことが目的であるならば、名目GDPをどう増やすべきか?を考えるべきです。税収を増やしたいのであれば、名目GDPがどうやったら増えるのか?を理解しなければなりません。なぜならば税収は名目GDPと相関関係にあるからです。(下記グラフを参照)

     

    <日本におけるGDPと税収の推移>

    (出典:「財務省のホームページの一般会計税収」「世界のネタ帳の名目GDP」数値を引用)

     

     よく言う論説として「少子高齢化のために年々増加を続ける社会保障費に対応するためには増税以外に方法はない」という人がいます。この論説が正しいならば、確かに消費増税は正当化されるでしょう。

     

     そもそも社会保障費は、これからも「右肩上がり」で続いていきます。これについては疑う余地はありません。私は消費増税で経済不況にならないという考え方には全否定の立場ですが、仮にも消費増税で経済不況にならない、デフレ脱却が遠のかないという仮定の下、消費増税以外に道がないとするならば、消費税率を「右肩上がり」で増やし続けなければなりません。

     

     しかしながら消費税率を「右肩上がり」で増やし続けるというのは、あまりにも非現実的であり、「社会保障制度を維持するためには消費税率を上げざるを得ない」という論説そのものが論理的に破綻していないでしょうか?

     

     では、社会保障費が増えていくのを黙って見れいればいいのか?という意見もあろうかと思いますが、それは税収が名目GDPと各種の税率に依存するものであって、税率を変えなくても名目GDPを増やせば税収は増えるという事実を見落としています。

     

     上図のグラフがその証左です。税収の動きと名目GDPの動きは、相関関係にあることが理解できるのではないでしょうか?

     

     GDP=個人消費+政府支出+設備投資+純輸出(※)

     ※純輸出=輸出−輸入

     税収=GDP×税率×税収弾性値

     

     上記の式の通り、GDPが増えるということは、国民の消費や所得や企業の収益が増えるということを意味するため、税率が一定であったとしても、消費税、所得税、法人税が増えるのは、当たり前なのです。

     

     

     というわけで今日は「世耕経産相の”カード手数料下げ要請”にみるデフレ脳と泥縄状態の消費増税対策」と題して論説しました。

     既に消費増税対策は、泥縄状態と言えるでしょう。何しろコンビニ業界ではイートインを廃止するとか、自動車業界は代わりに自動車税を引き下げて欲しいとか、何のために消費増税をやるのか?意味が分かりません。

     こうした中で「カード手数料下げ要請」や「携帯電話料金が高い」といった話が出てくること自体、世耕経産相や菅官房長官をはじめ、自民党議員の多くがデフレ脳に汚染されていることの証左ではないでしょうか?最初から消費増税は意味がないことを知っていれば、こうした発言は出てこないものと思うのです。

     とにかく、政府が消費を喚起するために特定の業界が生産するモノ・サービスに対して値下げを強要するとか、少子高齢化なので増税は待ったなしというような論説には全く正当性がありません。本ブログをお読みいただく賢明な読者の皆様には、世間の流布された俗説に惑わされないようお願いしたいと思うのであります。

     

     

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