世界第2位のノーベル賞受賞者輩出国の科学技術立国から転落しようとしている日本

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     今日は「世界第2位のノーベル賞受賞者輩出国の科学技術立国から転落しようとしている日本」と題して論説します。

     

     今年のノーベル医学生理学賞において、日本人で京都大学の本庶佑(ほんじょ たすく)さんの受賞が決まりました。本庶さんのノーベル賞受賞により、日本人でノーベル賞を受賞した人は26人となりました。

     

     ノーベル医学生理学賞受賞の理由となったのが、画期的ながん治療を生んだ小野薬品工業のオプチーボの開発につながった「PD−1」という分子の発見です。この本庶さんが発見した「PD−1」分子の発見がどれだけすごいことなのか?何が画期的なのか?AERAの記事をご紹介します。

     

    『AERA 2018/10/05 16:00 本庶佑さんノーベル賞受賞で注目の“オプジーボ”は何が画期的なのか?

    (前略)37歳で教授に就任したエリートで、俳優と見紛うルックス。順風満帆な研究者人生を歩んできた京都大学高等研究院特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)さん(76)が、ついにノーベル医学生理学賞に選ばれた。がん細胞を攻撃する免疫細胞にブレーキをかけるタンパク質「PD−1」を発見したことが、画期的ながん免疫療法に結びついた。がん細胞を除去したり破壊したりする従来の手術、放射線、抗がん剤という3本柱の治療法とまったくアプローチの異なる研究は、がん治療の常識を覆す希望の光となっている。(中略)

     発見したPD−1が生み出したがん治療薬「オプジーボ」は、何が画期的なのか。「がん治療設計の窓口」事務局長で医学博士の中村健二さんは語る。
     「手術で切り取るか放射線でぶっ壊し、あとは抗がん剤で追い詰めるというのが従来のがん治療の戦略。小さな取り残しが再発や転移につながらないよう、抗がん剤で追い詰める考え方ですが、がん細胞は『死んだフリ』をして、抗がん剤の治療が終わったら、また動き始める。しかも抗がん剤は正常細胞まで大きくダメージを与えるので、がん細胞と闘う免疫細胞や抗酸化機能などの生体防御機能まで損なわれてしまう」
     しかし、オプジーボは発想が全く異なる。中村さんが続ける。
     「普段免疫細胞は不良品のがん細胞を見つけるとやっつけるんだけど、がんが大きくなるとなぜだか攻撃しなくなる。PD−1が免疫細胞にカバーをかけて働かなくしていたのです。じゃあカバーを取ってしまおうというのがオプジーボ。免疫細胞を働きやすくして生体防御機能を大きくし、がん細胞との綱引きに勝とうということです」
     がんは、常に存在する不良品たるがん細胞と免疫力のバランスが崩れて起きる生活習慣病とも言える。しかし、免疫療法は“亜流”扱いされてきた。中村さんは言う。(後略)』

     

     

     小野薬品工業のオプジーボの開発につながった分子「PD−1」の発見は、がん治療の常識を覆すとしています。免疫の力でがんを抑えられるというのが特徴です。

     

     本庶さんによれば、免疫力こそががんを直す力とし、オプジーボが効く効かないの判断は、まだ十分ではないとのこと。副作用への対応の仕方も課題との指摘もしています。

     

     一方で肺がんなどで保険診療になっているオプジーボと異なり、科学的根拠がない治療を「がん免疫療法」とうたい、自由診療で提供している医療機関が多くあるとも指摘。ノーベル賞受賞後に講演した本庶さんは、講演後の会見で「(科学的に裏付けのないがん治療法を)お金儲けに使うのは非人道的だ。藁にもすがる思いの患者に証拠のない治療を提供するのは問題だ」と強調したとされています。

     

     私は自由診療ではなく、保険診療となる治療法が増えれば、多くの人々が先進的な治療を安価な料金で受診することができるため、多くの国民が便益を受けると思っています。その一方で自由診療を増やしていくべき!などとする有識者がいます。

     

     自由診療を増やせばどうなるか?お金儲けが自由にできることになります。自由にお金儲けができる一方で、治療を受ける側は自己責任のもと、化学的に裏付けがあるか否か?自分で判断して治療を受けることになります。

     

     竹中平蔵氏がいう「TPPは自由貿易なんです。だからやるんです。」「規制でがんじがらめだから規制緩和をやるんです。」という発想で、日本の制度を変えられてしまうと、金儲けのために患者に対して証拠のない治療を提供するのも自由ということになってしまいます。

     

     むしろ政府が関与し、科学的根拠がある治療方法について健康保険適用するとなれば、そうした悪徳治療で金儲けをしようとする輩を排除でき、しかも科学的根拠がある治療を安価な料金で受診できるようになるのです。

     

     少し話を戻しましょう。

     

     私見ですが、私はノーベル賞について、平和賞、文学賞、経済学賞は、いろんなバイアスやプロパガンダなどもあって、価値がない賞と個人的には思います。一方で、自然科学分野である医学生理学賞、化学賞、物理学賞は、人類の発展に貢献する非常に価値がある賞だと思っています。

     

     自然科学分野に限っていえば、米国は約170人の受賞者を輩出し、日本も自然科学分野で十数名出しています。

     

     これは世界で2番目の輩出であり、文字通り日本は科学技術立国であることの証左です。

     

     本庶佑さんは京都大学の教授で、京大では10人目になるとのことなのですが、日本の科学技術力を示すものといえるでしょう。日本の科学技術の水準が高いことを示しているといえるでしょう。

     

     とはいえ、心配な一面があります。

     

     受賞対象となった研究のほとんどが30年以上前の研究の成果であるということです。

     

     過去のノーベル賞受賞者からは、近年の日本の研究力が低下しているという指摘が出ているのです。

     

     30年前といえば、1980年代〜1990年代にかけての研究業績となります。日本がデフレに突入したのは1997年の構造改革基本法制定後の1998年からです。いわゆる失われた20年です。

     

     しかしながら30年前の1980年代〜1997年までは、デフレになる前の日本であり、インフレでGDPも右肩上がりでした。当時は大学の活力もあったといわれています。

     

     ポジションがたくさんあって助手がたくさんいて、准教授がいて教授がいるといった状況でした。若者同士が研究を切磋琢磨して優秀な人間が教授になっていくという状態だったのですが、今は研究費自体が削減され、仕事の半分くらいがお金を稼ぐための営業活動に近いことをやらされています。

     

     下記は科学技術関連予算の推移です。

     

    <科学技術関係予算の推移>

    (出典:内閣府の”「科学技術関連予算」平成29年度当初予算案及び平成28年度補正予算について”から引用)

     

     上記資料は2001年からの数値の推移ですが、2009年度と2012年度のみ補正予算が増えて5兆円超となった以外は、4兆5000億円前後を推移しています。

     

     そして下表は、主要国における博士号・修士号の取得者数の2008年と2014年の比較です。

    (出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所、「科学技術指標2018」を基に、杉っ子が加工・作成。)

     

     

     中国や韓国が博士号・修士号の取得者を増やしているのに比べて、日本は2008年度と2014年度の対比で減少しているという状況です。

     

     期限付きのポジションで5年限定で研究させるなど、例えばIPS細胞の山中教授のところでは、非正規雇用の学者ばかりであったりもしています。そのために山中教授が資金集めに奔走しているのです。

     

     本庶さん曰く、本を読んだり、実験をしたり、論文を書いたりする時間がどんどん少なくなっていて、このままだと将来20年後、30年後、ノーベル賞は取れなくなるだろうとのこと。

     事実、1998年から日本はデフレとなり、それから30年となる2028年まであと10年ですが、今から10年後、1つもノーベル賞が出ない国に落ちぶれてしまっているということを懸念しているようです。

     

     本庶さんは自らがノーベル賞受賞によって獲得した賞金、特許料を全て、学生のための基金を作るとしていますが、これは本庶さんの日本の将来を憂いた痛切な叫びといえるのではないでしょうか?本庶さんはノーベル賞を取って初めて、自分の意見を聞いてもらえるとお考えになり、一生懸命仰っておられるのだ!と私は思うのです。

     

     

     というわけで今日は「世界第2位のノーベル賞受賞者輩出国の科学技術立国から転落しようとしている日本」と題して論説しました。

     プライマリーバランス黒字化目標がある限り、科学技術関連予算を大幅に増やすことはあり得ないでしょう。100歩譲って科学技術関連予算を大幅に増やすのであれば、家計簿発想のプライマリーバランス黒字化目標のために、科学技術予算を増やす分、他の予算を削減するか、消費税を20%に引き上げるなどといった発想になるに違いありません。結局、経済成長の芽を摘んでしまうのです。

     ノーベル賞受賞者をいかに輩出し続けることができるか?これも結局はプライマリーバランス黒字化を破棄しなければ解決しないことと私は思うのです。

     

     

    〜関連記事〜

    日本における科学技術の衰退(このままだとノーベル賞受賞者が出なくなります!)

    IPS細胞の山中教授は、プライマリーバランス黒字化(=財務省の緊縮財政)の被害者

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