財政赤字を増やそうとしたイタリア政府

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     今日は「財政赤字を増やそうとしたイタリア政府」と題して論説します。

     

     財政赤字という言葉を聞いて、皆さんはどんな印象を持つでしょうか?財政赤字というキーワードの赤字という言葉をネガティブにとらえる人は多いと思います。

     

     日本ではプライマリーバランス黒字化目標というものがあります。基礎的財政収支を黒字にするというもので、国家予算の支出を税収の範囲内で収まるようにするというのがコンセプトです。

     

     私はプライマリーバランスを黒字化にすること自体を目標にすることは反対です。なぜならば、プライマリーバランスは常に黒字であることが正しいとか、常に赤字であることが正しいという発想自体がそもそも誤りです。

     

     これは消費増税も当てはまります。デフレの時は消費増税をする必要がなく、むしろ消費税をゼロにすることもあり得ます。一方でGDPデフレーターが10%とか、コアコアCPI(生鮮食品とエネルギーの価格変動を除いた消費者物価指数)が10%とか、インフレ率が高いときは、景気の過熱を抑制することを目的に消費税を実施して税率を引き上げることも政策の一つとしてあり得ます。

     

     経済政策の議論で思うのは、家計簿の発想を国家の財政政策に持ち込み、黒字でなければならないと考えることが一番の大きな過ちです。

     

     日本では相変わらず家計簿発想で「自然災害で出費が増えて”財政ガー”破綻するー!」とか「自然災害に備えるための出費で”財政ガー”破綻するー!」という論説が多いです。そんな中、イタリア政府が財政赤字を増やそうと試みました。下記はブルームバーグの記事です。

     

    『ブルームバーグ 2018年10月4日 04:34 イタリア:2020、21年の財政赤字目標引き下げ−EUに一定の譲歩

     イタリア政府は3日、2019年の財政赤字目標を対国内総生産(GDP)比2.4%とし、20年と21年には同比率を引き下げる方針を表明した。欧州連合(EU)に一部譲歩する形となった。EUはイタリアのトリア財務相に対し、連立与党が要求する歳出予算を抑制するよう圧力をかけていた。

     イタリアは先週、19−21年の財政赤字目標をいずれもGDP比2.4%とする方針を示していた。
     財政赤字目標の当初の発表予定日から5日経過しても、イタリア政府はまだ財政計画の根拠となる経済成長見通しを示していない。政府報道官は、こうした詳細の発表は4日になると述べた。

     コンテ首相は、「われわれは自分たちの約束を尊重する」とした上で、「これは真剣で責任が重く、勇気ある予算だ。イタリアは力強い成長が必要だ」と語った。

     コンテ首相率いるポピュリスト政権の19年の財政赤字目標は、前政権が掲げたGDP比0.8%の3倍に当たる。トリア財務相は0.8%はもはや達成不可能になったと繰り返し述べていた。現政権は20年に同比率を2.1%、21年に1.8%に引き下げることを目指す。

     連立政権はまた、債務残高の対GDP比率を21年に126.5%まで引き下げることも約束した。

     EUの行政執行機関、欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は、イタリアの財政赤字予測が修正される可能性があるのは「良い兆し」としながらも、19年の目標が修正されなければEU規則に反する恐れがあると指摘した。

     イタリア連立政権の財政政策を巡る同国とEUの争いは、イタリア国債相場を欧州債務危機のピーク時以来の低水準に押し下げていた。イタリア10年債利回りは2日、14年以来の高水準で取引を終了した。その後、イタリア政府のEUへの譲歩が漏れ伝わったことから、14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。』
     イタリア政府は先週財政赤字を拡大しようとして、2019年〜2021年の3年間で0.8%の3倍にあたる2.4%にする旨を表明していました。上述のニュースは、EUとしてはイタリア政府の今後3年間の財政赤字目標をー2.4%にすることを許さないと圧力をかけ、2019年度の財政支出対GDP比率ー2.4%の後は、2020年はー2.1%、2021年度はー1.8%にする方針と、イタリア政府が譲歩したというニュースです。

     

     下図はイタリアのインフレ率の推移とイタリアの10年物国債の金利の推移です。

    (出典:世界経済のネタ帳から引用)

     

    (出典:Investing.comから引用)

     

     2014年度から2016年度にかけて低成長で、2016年度はマイナス0.05%にまで落ち込みました。その後、2017年に1.33%まで上昇しましたが、直近の2018年は1.09%となっています。2017年の1.33%では、まだまだデフレ脱却したとはいえず、しかも2018年度も前年比で落ち込もうとしている状況から、デフレ脱却できていないといえるでしょう。したがって、現在のイタリアは財政出動を拡大すべき局面です。

     2000年からリーマンショックが発生した2009年を除いて2012年まではインフレ率は2%〜3%台を推移していましたが、インフレ率の推移からみて、明らかにイタリアはデフレ化が始まっていると思われます。

     

     日本と異なるのは、金利がやや上昇傾向にあることです。日本ではマイナス金利で国債の増刷の余地が十二分にあるのですが、イタリアの場合は国債の金利が上昇している点が日本と異なります。

     

     イタリアはEUに加盟しているため、金融政策の自主権がありません。もし、イタリアがEUに加盟せず、ユーロに参加していなければ状況が変わります。

     イタリアの中央銀行が国債を買い取って金利を抑制しつつ国債を増刷し、イタリア政府の財政支出増でインフレ率を押し上げるということが可能になるのです。

     

     しかしながらそれができず、しかも今回のブルームバーグのニュースのように、EUに財政赤字幅の抑制を求められてイタリア政府は譲歩してしまいました。

     

     イタリアは共通通貨ユーロに参加している以上、金融政策に自主権はありません。そのため日本のアベノミクス第一の矢のように金融緩和で国債金利をコントロールすることができません。またEUに加盟しているために、マーストリヒト条約で財政赤字対GDP比率を3%にしなければならないとするルールがあるのです。

     

     マーストリヒト条約はEU加盟国に対して、インフレ率の抑制や為替の安定のほか、財政均衡主義を要求しているのです。これらの縛りは、マーストリヒト条約という国際法によって定められているため、イタリア国内の法律よりも優先されます。これは日本でいえば、憲法よりも優先されるという話です。

     

     ブルームバーグの記事では、EUの行政執行機関である欧州委員会のモスコビシ委員が、イタリア政府が2020年と2021年の財政赤字対GDP比率をー2.4%からー2.1%、-1.8%へと引き下げて譲歩したことについて「良い兆し」などといいながら、2019年のー2.4%も引き下げるように求めています。

     

     モスコビシ委員は、明らかにイタリア政府に緊縮財政を迫っているわけですが、露骨な内政干渉です。とはいえ、イタリア政府はEUに加盟しているため、モスコビシ委員の露骨な内政干渉は許されてしまいます。

     

     本来ならばイタリア政府は2021年までー2.4%を継続するべきですし、経済状況によってはさらに赤字を増やしてもいいのですが、イタリアはEUに加盟している以上、財政赤字の額ですら国家主権に基づいて決めることができない状況にあるのが、イタリア政府の置かれている立場です。

     

     

     というわけで今日は「財政赤字を増やそうとしたイタリア政府」と題して論説しました。

     今日の記事をお読みになった読者の皆様は、なぜイギリス国民が国民投票でEUから離脱をしたのか?理解ができるのではないでしょうか?

     イタリア政府が財政赤字対GDP比率を十分に拡大しなければ、イタリアは日本と同様に本格的なデフレーションに突っ込む可能性があります。ユーロやEUという仕組みがイタリア経済を縛り付けていることは明白ですが、イタリア政府だけで解決策することは難しい。EUの中の勝ち組のドイツが、日本の地方交付税交付金のように負け組のイタリアに資金を配るくらいが真の解決策かもしれません。

     ただ日本の地方交付税交付金は日本人同士の助け合い、同胞の助け合いですが、イタリアとドイツは明らかに別々の国民であるため、それは難しいでしょう。となれば、イタリアもイギリスと同じようにEUを離脱するしか方法がないのでは?と私は思うのです。

     

    〜関連記事〜

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