なぜ諸外国は消費税20%とか25%とかできるのか?

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     今日は「なぜ諸外国は消費税20%とか25%とかできるのか?」と題し、論説します。

     

     自民党総裁選が9/20に投票が行われ、安倍首相が再選しました。この総裁選では、消費増税が取り沙汰されました。マスコミの報道の論調として、消費増税は既定路線という論調が多く、石破前幹事長は消費税は上げるべきと語り、安倍首相もまた上げたいと述べていました。

     

     しかしながら、完全に決まったわけではありません。これまでも増税は2回延期されていますが、同じように延期される可能性は十分にあります。

     

     にもかかわらず最近のマスコミの論調をみると、既定路線という論調が強まっています。下記は日本経済新聞の記事です。

    『日本経済新聞 2018/09/20 自工会、自動車税の大幅下げ要望へ 「軽並み」視野、消費増税を懸念  

     自動車の保有者が毎年負担する自動車税について、自動車業界が引き下げの要望を強めている。2019年10月の消費税率引き上げが販売の逆風となるうえに、米国が表明した輸入自動車の関税引き上げ案が国内生産に与える影響を懸念しているためだ。日本自動車工業会は20日、税額の大幅な引き下げを求める。19年度の税制改正に向けた調整が本格化する。

     自工会は20日発表する税制改正要望で、新規で取得する自動車の自動車税を大幅に下げるよう求める。引き下げの目安として示すのは軽自動車の保有者にかかる軽自動車税。経済産業省は水面下で、地方税を所管する総務省に自動車税を「軽並み」に下げるよう求めている。

     業界が税を軽くするよう求めるのは、自動車の保有にかかる負担が重いと考えているためだ。自動車税は排気量1000cc以下の小型車でも年2万9500円かかる。軽自動車税は年1万800円。この税負担の差が、自動車の国内販売で軽に人気があつまる理由でもある。

     仮に自動車税が「軽自動車並み」になれば、排気量1000ccの小型車なら税額は1万6400円まで下がる。新車価格が120万円なら、消費税が2%上がる分の負担増を2年で取り戻すことができる。

     自動車業界は毎年のように減税を求めてきたが、今年は特に危機感が強い。業界団体は消費税率の引き上げで、国内の新車販売は30万台ほど縮小するとみている。さらに米トランプ政権が検討する自動車への追加関税が発動されれば輸出に響く。自工会は国内の雇用を守るためにも、自動車の国内需要を刺激する必要があるとの立場だ。

     財源探しは難しい。自動車関連の税から見つけるなら、軽自動車税の引き上げが視野に入る。だが、軽は公共交通機関の乏しい地方では生活の足として定着し、増税は反発を招きやすい。軽自動車の販売を冷やしかねないだけに、あるメーカー幹部も「軽自動車を財源にすることはあり得ない」と語る。

     大きな減税を穴埋めするなら、ガソリンにかかる揮発油税が候補になる。1リットルあたり1円上げれば500億円ほどの増収が見込まれるが、石油関係の業界は反発する。

     19年10月の消費増税については、政府が6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に税制面での対応が明記されている。増税後に販売が冷え込む反動減対策は、消費増税時に導入される燃費課税を初年度はゼロにする案が浮上。自工会は自動車税についても購入初年度の負担をゼロにするよう要望する見通しだ。(後略)』

     

     

     上記の記事を踏まえ、下記の順に論説します。

    1.消費増税を勝手に既定路線化するマスコミども

    2.各国の消費税率比較と税金の使途について

    3.なぜ諸外国では消費税が20%とか25%という国が存在するのか?

     

     

     

    1.消費増税を勝手に既定路線化するマスコミども

     

     上述の記事は、日本自動車工業会が、2019年10月の消費税率引き上げとトランプ大統領による輸入自動車の関税引き上げに備え、自動車業界として助かりたいために、自動車税の大幅な減税を求めているというニュースです。

     

     自動車税の税率が軽自動車税の税率水準になれば、ドライバーにとっては確かに嬉しい話でしょうが、裏を返せば自動車業界が消費増税による影響の心配をしているということ。むしろ消費増税による影響を懸念しているということです。

     

     消費増税を懸念しているのであれば、本来は増税を反対すべきです。増税に対してネガティブな意見を持っているにもかかわらず、消費増税を既定路線として消費増税の延期・凍結もしくは消費善税が叶わないと考え、自分の業界だけを税金を安くして欲しいという話は、根本の解決になりません。

     

     根本の解決とは名目GDPを増やすためにデフレ脱却することと、実質賃金UPとなるような経済環境を作ることです。

     

     マスコミは消費増税は既定路線という論調が強いですが、そのマスコミの団体協会の一つ日本新聞協会は、新聞は軽減税率の対象品目とするよう働きかけ、新聞には軽減税率が適用されています。

     

     彼らの働きかけの根拠としては、ニュースや知識を得るための負担を減らすためとしています。理由は何であれ、自分たちの業界は消費増税による売上減少の懸念から助かったと思っているに違いないでしょう。

     

     ところが消費増税をすることで、増税直後は強制的に物価が引き上げられて名目GDPが上昇するものの、実質GDPは減少して、その後で名目GDPが減少します。この名目GDPが上昇して、実質GDPが減少するという現象は、強制的に物価が引き上げられても賃金がそれ以上に伸びていないために、物・サービスを買う個数・数量が減少するということです。

     

     GDPデフレータという指標がありまして、「GDPデフレータ=名目GDPの増減率÷実質GDPの増減率」で、デフレ・インフレを判断する重要な指標です。端的にいえば、GDPデフレータがプラスならばインフレ、マイナスならばデフレなのですが、消費増税UPした直後は、デフレインフレに関係なく、例外的にGDPデフレータはプラスになります。

     

     その理由は、GDPデフレータの算出式の「GDPデフレータ=名目GDPの増減率÷実質GDPの増減率」にあります。分母の実質GDPの減少率は大きく、分子の名目GDPの減少率は消費増税で強制的に物価が引き上げられるために減少率は小さくなりがちです。結果、消費増税直後はGDPデフレータはプラスになりやすいのです。

     

     少し話を戻しますが、新聞業界は自分たちが助かったと思っているかもしれませんが、消費増税直後GDPデフレータがプラスになっても、すぐにその後マイナスになります。なぜならば個数が売れなくなる状況なので、値下げ圧力がかかるからです。値下げすることで名目GDPは、やがて減少に転じ、そのままデフレが深刻化していきます。これこそ、1998年の消費増税3%→5%以降、繰り返してきたことなのです。

     

     自分たちの業界が助かったと思いきや、名目GDPが減少してデフレが深刻化すれば、実質賃金が伸び悩み、もしくは減少し、結果的に新聞だって買われなくなるのです。

     

     自動車業界も同じです。消費増税をすればデフレ脱却が遠のき、その影響は、新聞業界であろうが自動車業界であろうが、どの産業も同じです。

     

     

     

    2.各国の消費税率比較と税金の使途について

     

     下記は、各国の消費税の標準税率の比較表です。

     

    <各国の消費税の標準税率の比較>

    (出典:国税庁のホームページ)

     

     上記の通り、日本の8%は低い方で、この比較表をみると欧米のように消費税率を高くしてもいいというようなイメージを持つかもしれません。

     国税庁のホームページには、豆知識として「消費税は私たちの老後と地域を支えています。」として、年金や医療などのために使われると、実に巧妙な微妙な言い回しで解説しています。

     なぜ微妙な言い回しかといえば、こう書かれると、ほとんどの人が消費税は年金・医療のために必要なんだと思う人がほとんどだからと思うのです。別に私は消費税が年金や医療に使われることは無いということを言いたいのではありません。それは間違っています。

     とはいえ、実際は一般財源であるため、消費税は法人税・所得税などと同様に一般財源として徴収し、支出は年金・医療以外のことにも使われます。例えば自動車重量税が一般財源化されました。2009年に道路特定財源制度が廃止されたためです。

     

     道路特定財源制度が存在していた時は、自動車重量税で集められた税金は、使途が道路の補修などのインフラ整備に関連する支出に決まっていました。ところが一般財源化されたため、重量税で集められた税金は、必ずしもインフラ整備にのみ使われているわけではないのです。同様に消費税も、年金・医療財源に使途が限定されているわけではないのです。

     

     

     

    3.なぜ諸外国では消費税が20%とか25%という国が存在するのか?

     

     諸外国には、消費税が20%とか25%という国があります。なぜ、そんなことができるのでしょうか?

     

     答えは簡単です。デフレでないからです。

     

     日本もデフレでなければ、消費税率20%とか25%とか、全然あり得る話です。税率を少しずつ引き上げ、その都度デフレでなくインフレであることを確認したら、税率を引き上げるというように、これを繰り返せば、ゆっくり徐々に上げていけば、デフレにならないということはあり得ます。

     

     もとよりインフレ率が極端な話2%どころか10%などと高い状態で、バブル形成を助長するという判断があるのであれば、むしろ消費増税をした方がいいときもあります。

     

     問題は、日本はデフレ脱却しないまま、しかも緊縮財政を継続したままの状態で消費増税をしてきたことにあります。

     

     もともと消費増税すべきだ!という考え方の人々の頭の中には、デフレとかインフレということに興味がありません。そういう人々はマクロ経済をロクに理解していないため、消費税率10%の次は、15%に引き上げるべきだということになるでしょう。

     

     事実、消費増税10%は一里塚という論調が徐々に強まってきており、自民党の総裁選でも石破前幹事長は、「消費増税は10%で十分か?」とのインタビューに対して、「足りない。15%に引き上げるべき!」と将来的には、さらなる消費増税を示唆していました。

     

     自然災害対策のために公共事業に支出を増やすことで財政破綻するという論文を中央公論8月号で書いた東京大学名誉教授の吉川洋氏は、2018/09/02の読売新聞の論説で消費税は15%にすべきであり、10%は一里塚であると述べています。

     

     デフレ状況で10%に引き上げると、さらにデフレが深刻化し、さらに税収は伸び悩むことになります。日本のGDPが500兆円で20年も横ばいを続けているのは、少子高齢化で老人が増えており、消費税で需要が削減されるところを、老人の医療・介護の需要で埋め合わせているのですが、その医療・介護の需要も、医療報酬・介護報酬引き下げやジェネリック薬品の推進で、費用が抑制されてGDPが伸び悩んでいるのです。

     

     何が言いたいかといえば、このままデフレ脱却を放置した状態で10%→15%→20%とやれば、消費が落ち込み、GDPが伸び悩みます。他方で諸外国は政府支出増を継続していることからGDPを伸ばしていくことになるでしょう。

     

     日本は貧困化し、諸外国は経済成長していく、それが現実のものになるということです。私たちの将来世代に引き渡す日本の形が、デフレで貧困化してインフラがボロボロとなり、生産性向上についても相対的に他国に劣後するという状況でいいのでしょうか?

     

     

     

     というわけで「なぜ諸外国は消費税20%とか25%とかできるのか?」と題して論説しました。

     デフレ放置した状態での消費増税は断固として反対です。一方で、消費増税をした方がいい局面があります。それは想定以上にインフレになったときです。例えばインフレ率20%を1年間放置すると、1.20の12乗≒9となり、100円の缶コーヒーが1年後900円になります。これはこれで人々が生活しにくい可能性があるわけで、消費増税をして需要を削減し、インフレ率2%〜3%程度になるまで、消費増税をした方がいいのです。

     消費税率というのは、「欧米諸国と同じように〇〇%でなければいけない!」とか「〇〇%まで引き上げるべき!」という話ではありません。これは法人税や所得税などのほかの税金も同様です。国民が生活しやすいように、その時々で税制制度を変えていくということ、それが政府の役目なのです。

     

    〜関連記事〜

    「GDPと税収の関係」と「GDPデフレーターの特徴」について

    名目GDPと実質GDPとGDPデフレータを完全理解しよう!

    本当は経済成長していないのに実質GDPがプラスになってしまう現象について

    財務省職員の人事評価制度について(増税できた人を評価するのではなく、GDPを増やした人を評価すべき)

     

     


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