決して他人事ではないイタリアで発生した高架橋崩落事故について

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     今日は、先月発生したイタリアの高速道路の高架橋崩落のニュースを取り上げ、論説したいと思います。

     

     まずはBBCとロイター通信のニュース記事をご紹介します。

     

    『BBC 2018/08/15 イタリアの橋崩落、死者少なくとも37人に 犠牲者には子どもも

     イタリア北西部のジェノバで14日、高架橋が崩落し通行中の車数十台が巻きこまれた事故で、生存者の救出活動が続いている。

    マッテオ・サルビーニ内相は、巻き込まれた車は45メートルの高さから落下しており、少なくとも37人が死亡したと発表した。これには8歳と12歳、13歳の子どもが含まれている。

     また、これまでに16人が負傷し、行方不明者は4〜12人とされている。

     イタリア各地から約250人の消防隊員がクライミング装備を使い、捜索犬と共に生存者を探している。

    救助隊員のエマニュエレ・ジッフィ氏はAFP通信に対し、「希望は捨てていない」と話し、救助隊は「最後の犠牲者を確保するまで昼夜を問わず」活動すると述べた。

     高架橋の別の部分がさらに崩落する危険があり、近隣からは400人以上が避難した。

     大雨の中で起きた橋の崩落の原因は現時点で明らかになっていないが、構造の安全性に問題があった可能性が指摘されている。

    サルビーニ内相は、崩落の責任の所在を必ず明らかにすると表明した。

     崩落が起きたモランディ橋は1960年代に建造され、有料道路A10が通っている。近くの港からイタリアの保養地リビエラやフランス南部の地中海沿岸地域に物資を運ぶ重要なルートとなっている。(後略)』

     

    『ロイター通信 2018/08/17 02:48 イタリア橋崩落事故、EUの歳出規制とは無関係=欧州委

    [ブリュッセル 16日 ロイター] - 欧州連合(EU)執行機関の欧州委員会は16日、イタリアの高速道路橋崩落を巡り、歳出制限と無関係との認識を示した。

     イタリアのサルビーニ副首相兼内相は、EUの歳出規制がなければインフラをより良好に保つことができたとの見方を示唆している。

     欧州委報道官は、イタリアが2014─20年の間に交通網インフラ向けにEUから25億ユーロを受け取っていると反論。4月には同国の高速道路向けに約85億ユーロの投資計画を承認したという。

     報道官は「合意された財政規律には、加盟各国が特定の政策優先課題を設定できる柔軟性を持たせてあり、インフラの開発や維持管理を優先課題にすることも可能だ」と指摘。

     EU規則に基づくと、高架橋を運営するアトランティア(ATL.MI)傘下のアウトストラーデ・ペル・イタリアが安全維持面の責任、イタリア当局は監督責任が問われるとも述べた。』

     

     

     上記のニュースは、イタリアの高速道路の高架橋の一部がおよそ200メートルにわたって崩落し、自動車30台が巻き込まれて、37人が死亡したというニュースです。高架橋の下に人が埋まって亡くなった方もおられるということで、大変な大惨事でした。

     

     この高架橋はモランディ橋とかポルチェヴェーラ高架橋(以下「モランディ橋」)などと呼ばれ、1960年代に建設されたものです。これまでも老朽化による危険性が何度か指摘されていたようで、おととし2016年にイタリア議会で構造やコンクリートの強度巡って議論が行われていました。

     

     今回のモランディ橋の崩落した原因について、専門家によれば橋を上に吊り上げるケーブルが腐っていて切れてしまったのでは?と指摘しています。

     

     過去の補修工事が実施され、問題が認識されていたと考えられるのですが、政府支出が十分に行われず、対策が取られなかったのでは?という指摘があります。

     

     引っ張り上げているケーブルが切れて床板が落ちてしまったという状況は、決して他人事ではありません。1960年代になると50年から60年くらい経っています。もともとコンクリート構造物の寿命は、およそ50年程度といわれているため、寿命が来て崩落したという普通の話です。

     

     アメリカでは、1930年代にたくさんの橋梁を作り、50年ほど経った1980年代に、今回のイタリアの橋の崩落事故と同じような状況が訪れました。ニューヨーク市内のブルックリン橋、ウェストバージニア州とオハイオ州を結ぶシルバー橋など、巨大な橋がたくさん崩落したり潰れたという時期があったのです。

     

    <ニューヨーク市のマンハッタンのブルックリン橋>

     

    (2014年12月31日に杉っ子がニューヨークを訪問した際、ハドソン川クルージングに参加したときに撮影したもの)

     

     上記の写真はブルックリン橋ですが、このブルックリン橋は、1981年にケーブルが破断して、橋を通行していた日本人カメラマンが死亡するという事故が発生しました。その他、米国では1973年にマンハッタンでウエストサイドハイウェイが部分崩落したり、1983年にもコネチカット州でマイアナス橋という橋が崩落しています。

     

     こうして橋の崩落事故が相次いだ米国は、ガソリン税を高くして、橋の維持更新を徹底的にやりました。その結果、今回のイタリアのような痛ましい事故はなくなりました。

     

     日本は1950年〜1960年の高度成長期に、インフラをたくさん作っています。ちょうど50年以上経過している頃であり、イタリアと同じような状況になっていると考えられます。コンクリートの場合、中身が見えないため、中が腐食しているか否か?外から見てもわかりません。大丈夫と思ってもダメな橋もあるかもしれません。今回のイタリアの高架橋崩落事故が、日本でも発生する可能性は、十分にあるでしょう。

     

     イタリアのモランディ橋のケーブルは、外がコンクリートで覆われていたため、中がどうなっているか?全部の状況を把握できませんでした。

     

     もし、今ちゃんと予算をつければ、コンクリートの中を診断する検査もできます。日本では東証一部上場企業で、土木管理総合試験所(証券コード:6171)という会社が、「Road-S(ロードス)」というソフトを開発しました。この「Road-S」は、3Dレーダーを使い、コンクリートや橋の強度を自動で分析します。特徴としては、従来1卻析するのに1か月ほどかかったのですが、この「Road-S」を使えば、数秒で完了してしまうのです。このソフトが使えば、コンクリートや橋の強度を分析する作業が効率的に行うことができ、補強を着手すべき優先順位がスピーディーに判明してコスト削減につながります。

     

     もちろん日本企業の「Road-S」を使わなければいけないというわけではありませんが、きちんと予算をかけて維持更新のコストをしっかりかければ、インフラは守ることができます。いうまでもなく、そのコストもまたGDPにカウントされます。GDP3面等価の原則で「政府支出=生産=所得」となるからです。所得も発生するのでコストをかけた分、税収増にもなります。

     

     ところがイタリアも加盟するEUでは、マーストリヒト条約により、「財政赤字対GDP比3%以下」もしくは「政府の負債対GDP比率60%以下」を満たさない場合、報告書を作成して是正するという決まりがあります。

     

     ロイター通信の記事では、EUの報道委員の発言として、財政規律はあっても支出の内容までは踏み込んでなく各国の判断に委ねる柔軟性があると主張しています。とはいえ、財政規律がある以上、仮にイタリアが高架橋などのインフラの補強にばかり支出してしまえば、ダブリン協定に基づくアフリカ難民(南アフリカ→サハラ砂漠→無政府状態のリビア→地中海→イタリアのルートで来る難民)の対策費や、将来生産性向上のための投資にお金を使うことができなくなってしまいます。

     

     そもそも「財政赤字対GDP比3%以下にせよ!」の3%には、学術的な根拠がありません。金融危機が発生して世界経済が混乱するような場面では、むしろプライマリーバランス赤字化させ、赤字幅を増やさなければなりません。イタリア政府が真にイタリア国民の幸せを願うのであれば、主権が縛られる国際協定EUからの離脱しか方法はないでしょう。既にイギリスがEUを離脱を決意したのは、こうした財政における内政干渉が国家を弱体化させるという判断があったからだと思われます。

     

     日本でも「公共事業は無駄だ!」「借金は将来世代にツケを残す!」として予算削減に邁進しています。民主党政権が「コンクリートから人へ!」で削減したのは事実ですが、安倍政権ですらプライマリーバランス黒字化が残っているために、公共事業を削減しているのです。

     

     その日本では過去に、中央自動車道の笹子トンネル事故で9人が亡くなった事故が発生しました。維持更新コストにしっかり予算を付けない場合、1980年代に相次いで橋が崩落した米国のように、笹子トンネル事故のような事故も今後多発していくということが予想されるでしょう。

     

     笹子トンネル事故も、検査して維持更新コストをかけていれば、発生しえなかったはずです。2012年以降、あれほどの大きな事故が発生していないため、多くの日本人は忘れているかもしれませんが、公共事業削減を続け散る日本においても、そうした危険性が年々高まっているといえます。

     

     減価償却という概念があるため、投資したものは一定のコストを払わなければ維持できないという常識を知っていただくと同時に、その維持コストそのものが、GDP3面等価の原則により「維持コストの支出=維持コストのためのサービスの生産=サービスを提供した事業者の所得」で、経済成長につながるということをも合わせて知っていただきたいです。

     

     

     

     というわけで、今日は先月発生したイタリアの高架橋崩落事故を取り上げました。笹子トンネル事故では、民営化が影響したのでは?という指摘があります。なぜならば民営化したときに予算を30%も削減しました。というより、予算を30%削減することを条件に民営化したのです。

     その結果、検査がされなかったのでは?という疑義が濃厚であり、もし国家水準で十分に費用をかけて検査をすれば、笹子トンネルの事故は発生しなかった可能性があるわけです。

     なぜ民営化したのか?となれば、それは言うまでもなく緊縮財政です。小さな政府論を推進し、政府の事業をどんどん民営化していきました。その結果、コスト削減自体が、GDP3面等価の原則で、コスト削減=生産削減=所得削減で、経済成長を抑制します。

     さらには、緊縮財政がデフレ脱却を阻害するというだけではなく、トンネルや橋を崩落させて人を殺すこともあるということ。そのことを私たちは忘れてはならないと思います。


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