安全でおいしい水を廉価で飲める日本のすばらしさを考える!

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     今日は、「安全でおいしい水を廉価で飲める日本のすばらしさを考える!」と題し、2018/07/05に衆院本会議で可決された「水道法改正」について意見したいと思います。

     

    1.水道法改正法案可決の報道について

    2.「コンセッション方式の導入」によって、安全でおいしい水を廉価で供給できなくなる可能性について

    3.水道事業民営化の海外の事例について(再公営化がグローバルのトレンド)

     

     上記の項目の順で、論説します。

     

     

     

    1.水道法改正法案可決の報道について

     

     下記はヤフーニュースからです。

     

    『週プレニュース 2018/07/14 06:30配信

     7月5日、「水道法」の一部改正案が衆議院本会議で可決された。この法案の柱のひとつは水道事業の民営化だ。

     

     日本の水道普及率は97.9%。水道事業は、浄水場や水道管の新設から給水、メンテナンス、水道料金の設定に至るまで、ほぼすべて市町村自治体が担っている。水道法改正について、特に水道事業の民間への開放について反対している立憲民主党の武内則男衆議院議員はこう話す。

     「改正案では水道施設の所有権は公に残したまま、運営権を民間に委ねる"公設民営"(コンセッション)を拡大していこう、という内容が盛り込まれました。しかし、水道料金が電気代やガス代などほかの公共料金と比べて安価なのは公営だからこそ。これが民間企業に売り渡されたら自社の利益を優先され、水道料金がどんどん値上げされる恐れがあります

     では、水道法が改正されたら日本の水はどうなるのか?

     専門家や現場の職員に話を聞くと、法改正の背景に"公営水道"の危機的な状況が浮かび上がってきた。『日本の地下水が危ない』(幻冬新書)の著者で、水ジャーナリストの橋本淳司(じゅんじ)氏が解説する。

     「各自治体の水道事業は、給水から下水処理、施設のメンテナンスに至るまで、すべて市民から徴収する水道料金によって賄われています。ただ、厚労省によると地方公共団体(1273団体)のうち、実に424団体(約33%)が原価割れの"赤字状態"なんです」

     なぜか?

     「人口減によって料金収入が減り、節水型社会が進んでひとり当たりの使用水量も減っているから。例えば、昨今の節水型トイレは10年前の製品と比べて一回当たりの使用水量が半分。これがあらゆる建物に急速に普及し、特にビルやマンションの建設ラッシュが進む都市部の自治体にとっては大問題になっています」

     さらに、今、問題になっているのが水道管の老朽化だ。

     厚労省によると、全国に埋設された水道管の総延長は67万kmで、そのうち法定耐用年数(40年)を超えた水道管は約14%(約9万4000km)。漏水や破裂事故が起きる前に、これだけの長さの老朽管を更新しなければならない時期が来ているのだが......。

     「耐用年数を超えた老朽管のうち、一年間に更新される水道管の割合は13年が0.79%、14年が0.76%、15年が0.74%と超スローペース。このままでは、すべての老朽管を更新するのに『130年以上かかる』と厚労省は推計しており、国も自治体もかなり切羽詰まった状態です」(橋本氏)

     更新の遅れの主な原因はやはり財源不足だ。ただ、それ以外にも大きな原因がある。埼玉県内の水道局職員が打ち明ける。

     

     「水道管の台帳管理がずさんで、いつ、どこに、どんな材質の管が敷設され、その後、どんな修繕が施されたのか? という確実な情報がなく、管の劣化は地面を掘らないとわからないんです。この状況が更新作業をいっそう遅らせる原因になっています。しかも、近年は職員の定数を削減する本庁の方針もあって、小規模なところでは職員ひとりの"ワンオペ"になっている水道局も珍しくありません」』

     

     

     上述の通り、先週の2018/07/05に水道法改正法案が衆院本会議で可決成立しました。延長国会の焦点として取り上げられたこの問題ですが、老朽化する水道施設の更新を急ぐため、事業を複数の自治体で手掛ける広域連携と民間企業参入を促す内容となっています。

     

     大阪北部地震で古い水道管の破損で断水が生じ、西日本豪雨でも水道管が破損して1週間近く経過しているにもかかわらず未だに断水が続いているという状況です。被害地域以外にお住まいの方々は、断水がどれだけ不便か?想像もつかないと思います。

     

     私は3.11のとき、福島県いわき市に住んでいまして、いわき市内が何度も断水したのを記憶しています。断水のためにファミリーレストランの営業時間が22:00閉店となったり、サービスの提供ができないということになったり、家に帰ってもお風呂にも入れず、トイレの水も流せず、大変不便な経験をしたことがあります。

     

     とはいえ、水道局の方々の懸命な復旧作業で、何度も断水してもすぐに復旧したという記憶がありまして、西日本集中豪雨で広島県が1週間も断水が続くというのは、事態が深刻であると想像できます。

     

     大阪北部地震では古い水道管の破損で断水が生じたものの修復は早かったといわれています。これは公であるがゆえに、利益追求組織が運営しているわけではないがゆえに成せることであると私は思います。

     

     政府与党は水道法改正の必要性を訴える中で、今回の法案について水道事業を複数の市町村で経営する広域連携の必要性を主張し、国が基本方針を定めるとしているほか、都道府県は計画を作って関係市町村などによる協議会を設置できるとしています。 

     

     水道事業はインフラ産業の一つであり、基本的には自治体が事業遂行しているもので、国は基本方針を定めているものの、必ずしも法的効力が大きくありませんでした。今回の法案は、国が基本方針を定めるということで介入の度合いを強くするということであり、ポジティブにとらえてもいい部分もあると思っていますが、もう1つの柱である市町村が水道施設の運営権を民間事業者に売却するコンセッション方式の導入を推進するということについては、国益を損ねるものと考えます。

     

     災害復旧の際の責任を明確にして、市町村と民間事業者が共同責任を負うこととして、民間経営のノウハウを取り入れて事業を長く続けることができるようにする狙いがあるとされていますが、この考えには全く賛同できません。

     

     

     

    2.「コンセッション方式」の導入によって、安全でおいしい水を廉価で供給できなくなる可能性について

     

     民間経営のノウハウを取り入れるとする「コンセッション方式」の導入は、真の解決策といえるのでしょうか?

     

     そもそも統計によれば、自治体が運営する水道事業のうち、3分の1が赤字、3分の2が黒字という状況です。

     

     コンセッション方式の導入というのは、民間事業者が参入するという話ですが、赤字の3分の1の水道事業は、民間事業は絶対に参入しません。老朽化が進まないのは3分の1の赤字の水道事業で進まないのです。

     

     民間事業者が参入するとすれば、黒字の儲かる水道事業の3分の2のところに参入することになるでしょう。

     

     自治体が運営して黒字ということは何を意味するか?儲かったお金は誰に還元されているのか?

     

     答えは簡単で、その儲かる黒字を出した水道事業を運営する地方自治体に属する市民に還元されているということになります。

     

     ところが民間事業者がその黒字の地方自治体の水道事業に参入するとなれば、その黒字を民間事業者が吸い上げていくということになります。百歩譲って、その地方自治体に本拠地を構える民間事業者であれば、まだ地方自治体内のその民間事業者に還元されるということになるわけですが、他の地方自治体に本拠地を構える事業者であれば、その黒字は他の地方自治体に流出することになるのです。

     

     老朽化対策を進めるためとはいうものの、普通の一般市民に還元されている黒字の儲けが無くなるという観点と、地方創生・地方の活力維持という観点から、地方自治体同士で利益追求のために黒字を奪い合うということは、負けた地方自治体がなお困窮することになり、過疎化が進んだり、人口の分散化に逆行して首都圏への一極集中を加速する可能性もあると思っておりまして、私はネガティブな立場です。

     

     技術ノウハウの蓄積には時間がかかるため、今からでも遅くありませんので、政府支出増で国交省・総務省が連携して公務員を増やすなどの対応が必要と考えます。公務員が増えれば、消費も増えますし、デフレ脱却の一矢となり得ると思うのです。

     

     

     

    3.水道事業民営化の海外の事例について(再公営化がグローバルのトレンド)

     

     もともと水道事業の民営化は、1980年後半からグローバルに推進されてきました。フランスのスエズグループ、ヴェオリア社、イギリスのテムズ・ウォーター社の3社が水道民営化を開拓し、2000年当時、世界における水道事業の約7割を担っていたとされ、スエズ、ヴェオリア社の売上高は1兆円をはるかに超えていました。

     

     一見すると、世界的にグローバルでみれば、水道事業の民営化が推進されていると思いきや、再公営化の動きも増えています。今回の改正法案で、立憲民主党の尾辻かな子議員が質問をしています

     

    <立憲民主党の尾辻かな子議員が指摘した37か国236水道事業が再公営化されたことについての質問内容>

    (出典:衆議院厚生労働委員会ニュース 第196回国会第32号から抜粋)

     

     

     

     なぜ、37か国235もの水道事業が、民営化された後に、再公営化されたのでしょうか?

     

     再公営化する理由は簡単で安全でおいしい水を廉価に人々に供給するためです。例えば、パリ(フランス)、ベルリン(ドイツ)、アトランタ、インディアナポリス(アメリカ)といった先進国や、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、ヨハネスブルク(ミナミアフリカ)、クアラルンプール(マレーシア)、ジャカルタ(インドネシア)といった発展途上国で、再公営化されています。

     

     こうした再公営化する事例に共通する理由は、「事業コストと料金値上げの問題」「水道料金の高騰」「人員削減と劣悪なサービス体制」「財政の透明性の欠如」などがあり、利益追求の株式会社では、安全でおいしい水を廉価に提供することと利益追求というベクトルが一致しないということを再認識したというものです。

     

     だいたい民営化すれば、水道事業のサービス基盤が強化されて老朽化対策が進むというのは、本当なのでしょうか?

     

     フランスのパリの場合は、1984年に民営化後、水道料金が2倍以上となり、2010年に再公営化されていますし、ドイツのベルリンも株主資本利益率(ROE)8%を保証するという利益率を定めた契約によって設備投資が十分にできず、2013年に再公営化しています。

     

     アメリカのアトランタでも1998年に民営化した後、排水阻害、泥水の地上噴出、水への異物混入といった問題が続出した上に、料金が毎年値上がりしたため、アトランタ市民の怒りを呼んで、2003年に再公営化されているのです。 

     

     水道の維持管理をするためには、普通に政府が支出を増やしたり、公務員増員をすればいいだけの話です。確かに老朽化した水道管の更新投資には、莫大なコストがかかるでしょう。しかもそのコストを支出した結果、住民の生活は改善されますが、「利益」は生みません。私には、利益追求の株式会社が、安全でおいしい水を廉価で供給できるとは、とても思えません。

     

     結局、今回の水道法改正法案におけるコンセッション方式導入推進の真因は、プライマリーバランス黒字化目標があるために、「水道管老朽化対策で民営化することで民間のノウハウを取り入れる」という発想であると思うのです。

     

     プライマリーバランス黒字化はデフレ促進させるだけ。デフレ下の日本はプライマリーバランス赤字が正しいということがわかれば、普通に政府支出増と公務員増員で中長期的に解決に向かうということは、誰でも理解ができるのではないでしょうか?

     

     海外の失敗事例がこれだけあっても、水道事業の民営化を推進するというのは、日本ならでは「自国通貨の借金で国家が破綻する」といった間違いや、国家財政を家計簿と同様に考える”プライマリーバランス黒字化”が原因であると、私は考えます。

     

     

     というわけで、今日は「水道法改正」について論説しました。

     

    〜水道法に関連する記事(水道法と食品衛生法の違い)〜

    豊洲の移転延期の判断誤りを認めようとしない小池都知事


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