的外れな朝日新聞の公共事業評価批判

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     今日は4/23付の朝日新聞の公共事業を批判する記事について意見したいと思います。

     

    『朝日新聞 2018/04/23 公共事業評価、4分の1に問題 効果水増し、費用過小に

    公共事業を実施するか否かの妥当性が、多くの事業で不適切に評価されていることがわかった。将来の人口減少を考慮せずに事業効果を水増ししたり、維持管理費を無視して費用を過小評価したり。総務省がサンプル調査した各省庁の532事業の評価のうち、約4分の1に問題があった。
    公共事業は国の政策評価法令上、(1)10億円以上の新規(2)政策決定後5年経っても未着工(3)決定から10年経っても継続中――の場合、所管する各省庁は着工や継続の妥当性を評価しなければならない。妥当性判断のポイントは、事業で得られる効果「便益」を金額にして算出し、投じる費用で割った「費用対効果」の推計結果が「1・0以上」になるかどうかだ。
    総務省は毎年、国土交通省や農林水産省、厚生労働省などが自らの公共事業や補助事業の妥当性を評価した結果について、抽出してチェックしている。朝日新聞が2010〜17年度の結果を入手して集計したところ、抽出された532事業のうち、総務省が各省庁の評価に疑義を呈していた事例が127件あった。
    多いのは便益を過大に見込む手法だ。
    例えば長崎県の有喜漁港(諫早市)から国道への連絡道路を追加する事業では、実際は遠回りになるのに距離短縮の効果を見込んだり、運転手・同乗者の移動時間が減る効果を二重計上したりしていた。
    分母となる費用を小さく見込む例もある。国有林の治山、地滑り防止、工業用水道などの整備事業では、長期間必要になる維持管理費が考慮されていない例が相次いで見つかった。
    各省庁が作成する評価マニュアル自体が不適切なものもあった。税金を投じる意義を判断する根拠がゆがむとして、総務省は改善を求めている。(赤井陽介)』

     

     

     朝日新聞という新聞は、とにかく公共事業を否定する論調が多いです。この記事について2点指摘したいと思います。

     

     1つ目は、「将来の人口減少を考慮せず・・・」のくだりです。よくある公共事業の否定論説として、「人口が減少するから高速道路、高速鉄道を作っても、利用する人が少なくなるわけだから、作るのが無駄だ!」という論説です。

     

     これは日本の人口減少問題の認識を間違えています。毎年20万人減少して市町村が消滅するなどと報じられることもありますが、そもそも日本の人口は1億3000万人です。毎年20万人が亡くなったとしても、人口減少率は0.15%と1%にも満たないです。

     

     日本の人口問題を語るとき、人口減少が問題なのではありません。生産年齢人口の減少が喫緊の課題です。なぜならば、日本は医療水準が高いために、高齢者は長生きします。長生きする以上、衣食住にまつわる需要に加え、医療介護の需要もうなぎ上りです。

     

     要はインフレギャップが生じやすいのです。

    この少ない供給力で需要をどうカバーするか?即ち「供給<需要」というインフレギャップをどうやってカバーするか?生産性向上か外国人労働者で穴埋めしかありません。

     

     

     仮に外国人労働者でインフレギャップ解消となると、生産性向上の投資が抑制され、日本人の一人当たりの賃金UPが抑制されて、消費が伸び悩むことになるでしょう。逆に生産性向上によってインフレギャップ解消となれば、日本人の一人当たりの賃金UPにつながります。

     

     外国人労働者を受け入れて、みんなで低賃金の状況でいる状態の場合は、一人当たりの購買力が高まらず、消費が増えにくい。一人当たりの賃金の伸びが抑制されれば、どうしても物・サービスは値下げしないと売れにくくなります。

     

     外国人労働者の受入をやめて、生産性向上でインフレギャップを解消すれば、一人当たりの賃金UPにつながることで、購買力が高まって消費が増えます。

     

     生産=分配=消費ですから、消費が増えれば、またまた需要が増えてインフレギャップが発生します。このインフレギャップをどうやって解消するべきでしょうか?

     

     やはり生産性向上に尽きます。こうして好循環になる環境を、日本は迎えようとしているのです。いわば高度経済成長の到来のチャンスが今訪れようとしているのです。その高度経済成長のチャンスをぶち壊すのは、外国人労働者の受入です。

     

     ところで生産性向上というのは、何をすればいいのでしょうか?民間企業でいえば、能力開発費を増やして人材育成したり、最新鋭の機械を導入するということになります。政府は民間企業が生産性向上しやすいように、インフラの整備をする必要があります。

     

     渋滞解消のための高速道路は、まだまだ必要です。インフラが整備されていない道府県においては、高速鉄道や港湾の整備も必要です。物流のロジスティクス、営業マンの人員輸送、これらを効率よくするためには、高速道路・高速鉄道のみならず、コンテナヤードなどの港湾整備のインフラ整備が必要です。食糧であれば穀物エレベーターも必要でしょう。

     

     インフラ整備というのは利益追求で行うべきものではありません。利益が出なくても、都道府県のインフラ格差解消のためにインフラ整備しても構いません。利益追求となると、太平洋側に比べて日本海側は、人口が少ないからやらなくていいということになります。

     

     日本は災害大国ですので、複数の物流網を持つ必要があります。小学校の社会科で習う太平洋ベルト地帯を、人口が少なくて儲かりにくい日本海側でも、インフラ格差解消のために日本海ベルト地帯を作るためには、政府が率先してインフラ整備をする必要があるのです。

     

     2つ目に妥当性の判断で、費用対効果の推計数値「1.0以上」とは、B/C(Benefit per Cost)を指すと理解しています。欧米や豪州においても、B/Cは使われていますが、1.0未満でも公共事業は実施します。あくまでもプライオリティの判断に過ぎないという位置づけです。

     

     日本は「1.0未満の場合は、コストに比較して利益がないから作らない!」となっています。そもそもBenefitの分子に該当する項目も他国に比べて少なく、公共事業を過小評価されやすい仕組みになっているのです。

     

     朝日新聞はこうした実情を知っていて報道しているのでしょうか?知らないで報道しているのでしょうか?それとも朝日新聞特有の政府がやることはすべて反対という理念の下、公共事業を否定しているのでしょうか?

     

     いずれにしても知見のない記者が書いた読むに値しない記事であると思うのです。

     

     

     というわけで、今日は朝日新聞の公共事業の評価批判について、逆反論させていただきました。

     

    〜関連記事〜

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