医療サービスを自由化したらどうなるか?

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    JUGEMテーマ:医療崩壊

    JUGEMテーマ:医療はサービス業

     

     グローバリズムは、日本を少しずつ壊していきます。日本の良さ、それは文化や風習などに限らず、日本の制度そのものまで破壊してしまいます。今日はそのうちの一つ、医療サービスについて取り上げ、グローバリズムに反対の意見を述べます。

     

     グローバリズムの下では、政府が関与することは「悪いこと」「良くないこと」として、産業分野やサービスの種類を問わず、全てを市場に委ねて、政府の役割を可能な限り小さくすることこそが善とされます。「小さな政府」という言葉も流行りました。日本は人口が減少するから「小さな政府」を目指すべきだ!と。何を根拠に「小さな政府」なのか?支出を削減して公務員を削減するなどすれば、支出削減自体でGDPが減少し、公務員削減となれば削減された人々は間違いなく個人消費を削減する。結果日本国民が巡り巡ってみんなが貧乏になるということなのに、「小さな政府」を目指すという。こうした人々はマクロ経済を正しく理解できていない人々です。

     

     現実的には利益追求をしないからこそできる存在である政府は国家の維持に必要です。どの国にも「市場」に委ねてはいけないサービスや分野、それは安全保障です。

     

     ここでいう「安全保障」とは防衛だけを意味していません。食料安全保障、医療安全保障、エネルギー安全保障、防災安全保障、流通、防犯・・・・など、日本国民が日本国内で安全に豊かに生きていくために必須のサービスが、安全保障に該当します。

     

     もし、医療サービスが「完全自由化」され、市場に全面的に委ねられた社会が、どのような社会か?みなさんは想像できるでしょうか?

     

     医師になるときに資格不要で、本人が「医師です!」といえば医療サービスを提供できちゃいます。政府が一切の関与(=規制)をしないため、医療費をどれだけ高額にしてもOKですし、薬も値上げし放題となります。

     

     医療が完全に自由化された場合、医療サービスの品質は間違いなく落ちるでしょう。医大で教育を受ける必要も、資格試験に合格する必要もありません。医療に関する知識や経験が不十分であったとしても、医療サービスを提供できる以上、品質は劣化の一途をたどるでしょう。

     

     市場原理主義の人に言わせれば、「品質が悪い医療サービスは、競争原理により、市場から退出させられる」ということになるのでしょうが、何しろ「医療サービス」です。品質が劣悪な医療サービスが市場から「退出」するまで、どれだけの人々が被害を受けることになるのか?と考えますと、大変恐ろしいことです。

     医療サービスの品質は人命にかかわります。政府が一切の規制をせず、資格などの参入障壁も設けないため、劣悪な医療サービス提供者が市場から退出したとしても、新たな低品質な提供者が参入してこないということを、誰も保証することができません。

     

     極端に言えば、一度退場したはずの劣悪な医師であっても、地域を変えたり、呼称を変えることで、再び劣悪な医療サービスを提供することも可能になってしまうのです。

     

     加えて、医療サービスの場合、患者側が「選択できない」ケースもあります。人間の生死にかかわるサービスのため、「この治療を受ければ、命が助かる。治療を受けなければ、助からない。」という状況の場合、患者側には選択肢がないも同然です。誰だって死ぬのはイヤなわけだから、医療サービスの価格がどうであれ、治療を受けることを望むことになるでしょう。

     

     薬についても同じで、「この薬を飲めば助かるが、飲まなければ助からない。」となれば、患者はどうしても薬を飲む選択をせざるを得ないでしょう。

     

     この手の消費者側に選択の余地がないもしくは選択の余地が少ないサービスについて市場原理に委ねた場合、何が起こるでしょうか?当たり前ですが、医療費や薬価が高騰していくことになります。消費者側に選択肢がない以上、市場原理も何もありません。

     

     実際に1980年代に米国国内では、レーガン政権発足以降、米国では医療サービスの自由化を進めました。現在、アメリカの医療費は完全に自由化されており、病院によって治療費が異なるのです。

     

     また米国政府は薬価規制をしていません。米国国内では医薬品の適正価格は「市場競争の下でもたらされる」という信念のもと、製薬会社が自由裁量で薬価を決定しているのです。

     

     医療費が自由化され、薬価制限がないため、当然米国国内では医療サービスの価格は高騰しました。

     

     OECDが加盟国で国民一人当たり年間医療費という統計をとっていまして、2015年の日本と米国の医療費は下記の通りです。

     

    ●日本:4,149.76米ドル≒約44万円

    ●米国:9,451.34米ドル≒約101万円

     

     上記の通り、OECDの統計数値だけをみれば、日米の差は、米国の国民一人当たり年間医療費は日本の2倍強です。ところが、米国の場合、「公的保険」が65歳以上の高齢者と特定の重度障害者を対象にしたメディケアと、低所得者層が対象のメディケイドの2制度しかありません。日本の場合は国民皆保険であるため、すべての国民が健康保険に加入しています。それに対して、米国の場合は高齢者や低所得者層以外は「民間保険」に加入しなければなりません。民間の保険会社から保険金が支払われない場合、自己負担になってしまうのです。

     

     2015年における国民一人当たりの年間医療費について、個人負担分でみた場合、

    ●日本:626.6ドル≒約67,000円

    ●米国:4,779.2ドル≒約511,000円

    上記の通り、米国の個人負担分は日本の6.7倍です。

     

     米国では国民一人当たり50万円以上もする治療費を公的保険なしで負担させられているのです。もし、4人家族となれば、医療費は200万円を超えてしまうでしょう。

     

     もちろん、個人民間負担分は、加入している保険会社に払う保険料の負担もあります。とはいえ、米国の民間医療保険会社は株式会社組織であることもあり、可能か限り保険料を領収して、いざ保険金を払おうとするとあの手この手で回避することで有名です。

     

     米国では保険分野の自由化が進み、日本でいう健康保険制度の保険を、民間の株式会社が提供しています。株式会社は利益最大化を目的にビジネスをしているため、利益を膨らませるためには、保険金の支払いを抑制することが最も手っ取り早い。そのため、米国の個人破産の理由の半分が「医療費の未払い」という状況になっているのです。

     

     米国の医療費は2014年の数字で3兆ドル(日本円で約321兆円)に達し、GDPの17.5%を占めるに至っています。仮に世界の中でダントツに巨額の医療費を払わなければならない国だったとして、米国国民が相対的に健康に生きて長生きできるというのであれば、巨額の医療費自体は正当かもしれません。

     

     もし「米国の医療費は確かに高い。しかし高い医療費を払っているおかげで、米国国民は世界で最も健康で生きていける国民なのです。」というのであれば、米国国民は納得できるかもしれません。ところが現実は異なります。

     

    下記は世界保健機関(WTO)の統計数値で、主要国の健康寿命を上位順に並べたものです。

    (出典:WTO)

     

    日米では下記の通りです。

     

    日本   :01位 74.9歳

    チェコ  :33位 69.4歳

    クロアチア:33位 69.4歳

    キューバ :35位 69.2歳

    米国   :36位 69.1歳

     

     いかがでしょうか?現実は異なるのです。2015年の数値ですが、健康寿命が最長だったのは日本で74.9歳の堂々の1位。日本国民は世界で最も長期間健康状態で生きていくことが可能な国で生きていけるのです。

     それに対して、米国は70歳を下回っています。先進国の中では最低でキューバの一つ下の36位です。

     あれだけ巨額な医療費を払っていながら、米国の健康寿命は先進国最低なのです。

     

     医療技術の進歩により、米国の死亡率はさすがに低下傾向だったのですが、2016年6月米疾病予防管理センターが信じがたい事実を明らかにしました。

     

     下記はニューズウィークの記事です。

    『NewsWeek 2016年6月8日(水)17時35分 トランプ現象の背後に白人の絶望──死亡率上昇の深い闇

    米国の大統領選挙でドナルド・トランプの得票率が高い地域は、白人の死亡率(人口に対する死亡者の割合)が高い地域と一致しているという。その米国では、薬物・アルコール中毒や自殺など、白人を中心とした「絶望による死(プリンストン大学のアン・ケース教授による表現)」の増加が問題視されている。トランプ現象の背後には、死を招くほどの絶望が潜んでいるようだ。

    「絶望による死」で死亡率が上昇

     2016年6月1日、米疾病予防管理センター(CDC)が、衝撃的な統計を発表した。米国の死亡率が、10年ぶりに上昇したというのだ(図1)。大きな理由は、白人による薬物・アルコール中毒や自殺の増加である。「絶望による死」の増加が、米国全体の死亡率を上昇させた。

    Yasukawachart1.jpg

    「絶望による死」は、白人に集中している。CDCによれば、2000年〜2014年のあいだに、米国民の平均寿命は2.0歳上昇した。しかし、白人に限れば、平均寿命は1.4歳の上昇にとどまっており、黒人(3.6歳)、ヒスパニック(2.6歳)に後れをとっている。白人に関しては、心臓病や癌による病死の減少が平均寿命を上昇させた一方で、薬物・アルコール中毒や自殺、さらには、薬物・アルコール中毒との関係が深い慢性的な肝臓病などが増加。平均寿命を押し下げたという。(後略)』

     

     

     記事に書いてある通り、米国の白人の「未来に対する絶望死」の増加が死亡率を上昇させてしまったという事実です。グローバル化の教義のもと、政府の役割を小さくされていった結果、所得再分配機能が低下し、国民の「最低限の生活」を守る規制までもが撤廃される。金持ちは所得や資産を増やす一方で、大多数の一般国民は実質所得が増えず、健康状態も悪化して、最後には自殺者の増加という事態をもたらしてしまったのです。

     

     グローバル化に嫌気がさしていた米国国民は、グローバリズム礼賛の大手メディア・マスコミに抗い、民主主義でトランプ大統領誕生という「史上最大の大逆転」を実現したと言えるのではないでしょうか?もちろん大逆転とは、グローバリズムからの視点でみれば大逆転ですが、米国国民にとっては米国民の国益を考えた選択として、当たり前ともいえるでしょう。

     

     

     というわけで、医療サービスを自由化したらどうなるか?米国の悲惨さと合わせ、トランプ大統領誕生までお伝えしました。散々バカにしてきたマスコミどもでは、認知的不協和に陥り、なぜトランプ大統領が台頭してきたのか?理解できないでしょう。

     今もなお、トランプは貧しい人々に支えられてきたというような論説があるほどです。実際は普通の白人が投票したというこの現実を知らない限り、間違った報道がされ、正しい政策が正しく報じられず、誤った情報が国民に刷り込まれて、政治家も間違った政策をしてしまう。

     これを是正するためには、トランプ大統領やバーニーサンダースらの登場、メイ首相のブレグジット、フランスにおけるメランションやマリーヌルペンの台頭といった事象について、私たち国民がもっと知る必要があります。そうやって知見を得た時に初めて、日本の国民皆保険のすばらしさを実感するとともに、グローバリズムという考え方の問題点について理解が深まるものと思うのです。


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