IPS細胞の山中教授は、プライマリーバランス黒字化(=財務省の緊縮財政)の被害者

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 今日は、「IPS細胞の山中教授は、プライマリーバランス黒字化(=財務省の緊縮財政)の被害者」と題して、IPS細胞の研究を巡って不正が発覚したとのニュースについて触れます。

 

 このニュースは、京都大学のIPS細胞研究所に所属する助教授が、2017年発表した論文の11の図にねつ造などの不正があったとして、雑誌に論文の撤回を申請すると同時に関係者を処分するとされたニュースです。

 論文は、ヒトのIPS細胞から脳の血管の「血液脳関門」という組織を作ることに成功したという内容でしたが、主要な6つの図すべてと、補足データの5つの図、合計11の図でねつ造や改ざんが認められたとされています。

 

 この記事について産経新聞が、2018/01/23に論説を掲載しています。下記が論説記事です。

『産経新聞 2018.1.23 06:30更新 非正規雇用多く組織基盤脆弱 背景に根深い研究者事情

iPS研究をめぐっては非正規雇用が多いなど組織基盤が脆弱(ぜいじゃく)で、京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長は待遇改善を訴え資金集めに奔走してきた。今回の捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)に手を染めた助教も任期付きの非正規雇用。背景には研究体制の根深い問題も見え隠れする。

 「これが民間企業なら、すごいブラック企業。何とかしないといけない」

 平成27年5月、奈良県内で講演した山中所長は、聴衆を前にこう訴えていた。山中所長によると、研究所のスタッフは約300人だが、うち非正規雇用は約9割を占めていた。

 なぜ、こんなにも非正規の割合が高いのか。それは国の予算措置などの特徴があると研究者は口をそろえる。多くの研究者は国からの予算に頼り、先端を走る京大のiPS細胞研究所でも28年度の予算約80億円のうち、約84%を国などからの「産学連携等研究費」に頼っている。

 ただ、この研究費は、期限内に使う必要があり、使途も指定されている。ノーベル賞候補ともされる、ある研究者は「人材が育たない土壌を生んでいる。期限を区切ると短期間で結果を出すことも求められ、あせりなどの弊害も出る」などと不正の温床になる恐れを指摘していた。(後略)』

 

 

 私は、このニュースを知ったとき、真っ先に思ったのが公共事業削減の一環で、科学技術関連費用の予算が削減されていることです。IPS細胞実用化のための人員のうち、90%以上が非正規雇用者なのですが、背景は資金がないことによるもの。

 カネカネカネとやって、少子高齢化社会による医療費増大で医療崩壊だとか、年金崩壊だとか、財政破綻するとか、これらのウソデタラメの論説が蔓延り、結果的に緊縮財政が正しいとやってきたことが原因です。

 プライマリーバランス黒字化という概念を持ち出してきたのは、小泉政権時の竹中平蔵氏。家計簿や企業経営になぞらえて、国家財政を考える概念を持ち込んだのは、竹中平蔵氏です。

 

 このプライマリーバランス黒字化のせいで、どれだけの人々が苦しんでいるか?計り知れません。本ブログ読者の皆さんは、多くはプライマリーバランス黒字化は間違いであることにお気づきでしょう。とはいえ、現実的には90%以上の国民が、プライマリーバランス黒字化は正しいと、無駄削減・緊縮財政が正しいと思い込んでいる。

 結果、国債を増刷して公共事業をやるという発想は、そうした国民には忌み嫌われます。国債増刷で何ら問題がないのに。国債増刷をしないために、科学技術関連費用を増やすのであれば、消費増税や所得増税するか、他のインフラ整備の予算を削るという発想。本当に愚かしい発想です。 デフレなので無駄削減・緊縮節約は、家計や企業経営でやるのは大いに結構ですが、国家は異なるということを理解している日本国民が少ないことが、問題解決を遠くしています。

 

 そのような環境の中、山中教授はIPS細胞実用化における世界との競争に打ち勝つため、資金集めに奔走していました。下記は、クレディセゾンのクレジットカードで、永久不滅ポイントでIPS細胞研究所に寄付できる旨のサイトの抜粋です。

 

セゾンカードの永久不滅ポイントの交換商品の一つ「IPS細胞研究所を応援しよう」でPRする山中教授>

(出典:クレディセゾンのホームページ)

 

 中国は過去15年間で科学技術予算を11倍にする一方、日本はたったの1.06倍です。スパコンでいえば、中国共産党政府は国家事業として行っていますが、日本は民間企業がやっています。大学は行政法人化(民営化)が推進され、短期的な成果を求められているという状況で、2030年までの長期目標を掲げていました。緊縮財政かつ研究で短期的な成果を求められるという中でIPS細胞実用化の研究をするということについて、山中教授が感じるプレッシャーは、相当なものだったと想像できます。

 

 このニュースが出た時、非正規雇用者のモラルの問題として、非正規雇用者でも真面目にやっている人がいるなどとする論説もありました。そういう人もいるでしょう。だからといって、非正規雇用者が多いという現状は、現実的には短期的に成果が出にくい分野では、全くそぐわないのです。

 

 韓国で、セウォール号事件というのがあったのを皆さん覚えておられるでしょうか?あの事件で、多くの韓国人高校生らが亡くなりました。乗船客の安全を第一に考えなければならないですし、万一の時は運航会社が救命活動を第一優先にすべきと思うのですが、船長がスタコラさっさと逃げている映像を覚えているでしょうか?そのスタコラさっさと逃げた船長は派遣社員でした。

 技術の継承や愛社精神や、仕事に対する情熱とやらは、雇用が安定して余裕のある生活ができるという環境があってこそです。船長を批判することは簡単ですが、そもそも韓国はサムスン電子でさえ、外国人株主比率が50%超であり、人件費を増やすことができず、アルバイト的な働き方をさせられている正社員が多い。

 文在寅大統領は、公務員を増やし、非正規社員を正社員化するという政策を打ち出し、実行に移しています。感情的に言えば、私は文在寅大統領は好きではありません。ですが、マクロ経済的な政策でいえば韓国国民のことを考えている部分は正しいと思うわけです。

 

 よくよく考えていただきたいのですが、医薬品の開発にしろ、新素材の発見にせよ、短期的にどうやって成果を上げることができるのでしょうか?例えば、リニア新幹線の技術の元である超電導技術は、1911年にオランダ人の物理学者のヘイケ・カメルリング・オネスが発見しました。彼は1913年にノーベル物理学賞を受賞していますが、日本ではこの技術がリニア新幹線として実用化されるまでに100年以上かかっています。

 非正規雇用者は、当然食べていくことができなくならないように、成果を急ごうとすることしてしまうこと自体、普通の考えです。これが雇用が安定していて、十分な賃金が与えられていれば、わざわざ解雇や処分につながる不正をするという人は少ないでしょう。それだけ、雇用問題、賃金問題は切実なのです。

 

 私は科学技術予算は、もっと増額すべきだと思っています。理由は長期的な研究が日本の繁栄の基礎を築いてきたから。ノーベル賞受賞者が、韓国や中国では排出されず、日本は欧米並みに排出されている。これは私たちの先祖の方々が、超長期的な視野で投資を継続していただいたからです。

 超長期的な視野の投資の中には、失敗して無駄になったものもあるでしょう。とはいえ、投資とは本来そういうものです。株式投資のように、どの銘柄が短期的に上昇するか?とか、選択と集中によって大きく成果を上げねばという企業経営の発想は、科学技術研究には相応しくありません。短期的に研究の成果を求めるなど、1か月後、株価が2倍以上に急上昇する銘柄を探し当てろ!といっているようなもんです。

 

 とにかく、まず日本政府がすべきことは、プライマリーバランス黒字化を廃棄して、予算を増額する。予算の裏付けは、赤字国債でも研究国債でもなんでもOK。デフレ化において増税して確保するなんて発想も不要。デフレでマイナス金利であるがゆえに、低金利の資金を政府が調達すればいいだけ。むしろ金利負担が少ない分、財政には優しい。もちろん国債は円建で発行です。円建てで発行する限りにおいて、日本国民一人当たりの資産が増える話ですので、大歓迎すべきこと。

 資産が増えるというお金もそうですが、国力が強化されること自体、日本国民の皆さんにも恩恵があり、より豊かになれます。医療も高度な治療を受けられます。生産性向上によって一人当たりの生産性が高くなり、賃金UPに繋がりやすくなります。

 

 そもそも現代の便利さの環境の背景には、私たちの先祖の皆さんが超長期投資を継続してくれたことの賜物であり、プレゼントだったわけです。私たちも、まだ見ぬ子ども・孫の世代に、豊かさをプレゼントできるよう、政府が主導となって超長期投資(インフラ投資・科学技術投資など)をするべきではないでしょうか?

 

 具体的には、政府が生産性向上のためのインフラ整備の投資や新素材・技術開発のための科学技術投資をもっと増やすことです。デフレ化において民間主導で投資を増やすのは難しい。日本には財政問題が存在しないので、普通に政府支出を増やせばよい。増税も不要。財源として国債を増刷すれば、債券市場の国債不足も解消されます。正規社員が雇用されるようになれば、不正研究や不正論文とやらも減ってくるでしょう。何しろ余裕があるわけですから。

 

 

 というわけで、今日はIPS細胞の不正論文事件を取り上げました。何はともあれ、今年6月の財政の骨太方針、これに注目です。なぜならば、プライマリーバランス黒字化目標を破棄しなければ、国債発行できず、こうした問題が解決しないと思うからです。

 

〜関連記事〜

プライマリーバランス黒字化を続けるとノーベル賞受賞者は出なくなります!

事業仕分けや緊縮財政は愚策(産業技術総合研究所が開発したカーボンナノチューブと塗布半導体)

オランダ人の物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネス


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