労働需給の引き締まりに比べて、なぜ賃金の改善が緩やかなのか?

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    JUGEMテーマ:経済全般

     

     

     今日は、「労働需給の引き締まりに比べて、なぜ賃金の改善が緩やかなのか?」と題し、雇用と賃金について意見したいと思います。

     

     日銀の岩田副総裁は、日銀が物価目標2%を達成すると市場に強くコミットメントすれば、フィッシャー方程式「実質金利=名目金利−期待インフレ率」で実質金利が下がり、投資や消費が増えて物価が上昇すると、学者の立場で主張されていました。

     

     ところが340兆円もの日銀当座預金を積み上げ、マネタリーベースを増やしましたが、マネーストックは一向に伸びない。当たり前ですが、需要不足というデフレ環境の下では、どれだけ金利が下がろうとも、消費や投資を増やす人は少ないのです。

     

     日銀の黒田総裁は、物価が上がらない理由について、「労働需給の引き締まりに比べて、賃金の改善が緩やかであること、特にパート雇用者に対して、正規雇用者の賃金上昇が鈍い点が目立つ。」と指摘されました。

     

     労働需給の引き締まりというのは人手不足です。日本は少子高齢化で、生産年齢人口が減少しているため、人手不足になって当たり前です。人手不足に対して、企業は何をやっているのか?

     高い給料を払ってフルタイムの正規社員を雇用しているのか?というとそうではなく、賃金が増えたのは、アルバイトとパートタイマーです。これが過去4〜5年間のトレンドです。

     正社員については可能な限り賃金を抑制して、パートタイムは人材不足だから賃金を高くても雇用しようとするため、時給は上がっているのです。

     正規雇用者とパート雇用者で、このような違いが生じるのはなぜか?理由は簡単で、パートタイマーやアルバイトは簡単に解雇ができるからです。正規社員は解雇することは容易ではありません。

     つまり長期で雇用する正規社員についての雇用や賃金UPは、一度引き上げた賃金を下げることがなかなかできないため、及び腰なのです。

     

     黒田総裁は、賃金には上方硬直性があるという面白い指摘をしています。かつては賃金は下方硬直性があると言われていました。即ち、一回正規社員の賃金をUPしたら、下げられないというのが下方硬直性です。今は逆で、デフレが余りにも続きすぎ、長期的な将来の需要(実質需用・名目需要)に自信がないため、上方硬直性があるという説明で、黒田総裁の上方硬直性があるという指摘は、まさにその通りです。

     

     正規社員は賃金UPできないが、パートタイマー、アルバイトは引き上げます!と。今は人が必要だから。でも不要になったら解雇しますよ!とういわけです。つまりパートタイマー、アルバイトは必要な人数を確保するため、時給を引き上げているのです。逆に正規社員の賃金UPには大変怯えています。

     

     この件について、ポイントは2つあります。

     

     一つ目は資本の問題です。グローバル株主資本主義が横行し、グローバル株主の声の影響を受け、大企業は人件費にお金を使えないのです。逆に短期利益が重視され、むしろ人件費を削減した経営者が評価されるようになっています。

     

     二つ目は需要に対する自信の問題です。

    ●2019年10月に消費増税8%→10%への引上げ

    ●働き方改革といって残業規制をして残業代が出せなくなること

    ●東京オリンピックのインフラ整備が2019年に終わる

    ●社会保険の引上げの実施

    このように、このまま上記の政策を実行すると、20兆円〜30兆円、最低20兆円程度のダメージが2019年に襲い掛かります。補正予算は毎年減額されて、2017年度は2兆7000億程度ですが、その10倍以上の30兆円程度の補正予算が組まれなければ、2019年度からすさまじいデフレに突入するでしょう。

     

     その状況で正社員の給料を上げられるか?と言われると、経営者としては上げられません。だから安倍政権は、経営者に賃金を上げるよう働きかけを行っています。とはいえ、安倍政権がやるべきことは、財政拡大を通じて企業が自信をもって賃金UPして人材を確保できる環境を作ることが本来の仕事です。

     

     そこに立ちはだかるのが、プライマリーバランス黒字化目標。このプライマリーバランス黒字化を何とか破棄させなければなりません。本来だったら、今この瞬間に閣議決定すれば、国会の決議も国民投票も不要なのですが、できない。

     やるとすれば、今年2018年6月の骨太方針のタイミングで、こっそり抜くか骨抜きにするより、方法がありません。

     

     仮に2018年6月の骨太方針のタイミングでそれができたとして、予算に影響を与えるのは来年度2019年度予算からです。2018年度は補正予算で逃げるしかありません。具体的には補正予算を増額することです。

     

     第二次安倍政権発足時の2013年度は補正予算が10兆円を超えていました。2017年は先述しましたが2兆7000億円と、補正予算はプライマリーバランス目標のために緊縮財政をして、年々小さくなってきているのです。

     もし、2013年度の10兆円を超えるペースで補正予算を組み続けていれば、日本はとっくにデフレ脱却できていたかもしれません。実際は、消費増税をやって緊縮財政(補正予算減額をはじめとする政府支出削減)をやって、またまたデフレに戻ってしまったのです。

     

     ある意味で、黒田日銀総裁には同情します。

     なぜならば、政府が緊縮財政をやって消費や投資を減らしている状況で、デフレ脱却しろと言われても、これは無理です。神様が日銀総裁をやっても、私杉っ子が日銀総裁をやってもデフレ脱却はできないでしょう。

     

     市中の銀行から国債を買い取って通貨発行を継続していますが、銀行の国債が尽きる日が近づいてきています。

     

    <国債所有シェア 2017年9月末速報>

     

    <国債所有シェア 2016年9月末速報>

    (出典:日銀ホームページ 資金統計循環)

     

     上記円グラフで注目していただきたいのは下記です。

     

    ●日銀(中央銀行)の国債所有シェア

    37.9%(2016年9月末)→40.9%(2017年9月末)

     

    ●銀行(預金取扱機関)の国債所有シェア

    20.0%(2016年9月末)→16.8%(2017年9月末)

     

     銀行の国債が尽きる日が近づいているのです。預金取扱機関の所有シェア減少が物語っています。もし、銀行の国債が尽きてしまったら何が起きるか?量的緩和強制終了です。この場合、一気に急激な円高となって、株式市場で日本株が大きく売られ、日本発の金融危機勃発となるでしょう。(関連ブログ記事:「国債増刷」「政府支出増」が必要な理由 )

     

     これを回避するためにはどうすればよいか?政府が国債をたくさん発行して財政拡大をすればいいのです。しかも財政拡大を長期的に政府が示すこと、これが重要です。将来の生産性向上のためのインフラ拡充投資・科学技術投資、防衛安全保障への投資、災害防災安全保障の投資、食料安全保障のための支出増などなど、長期プロジェクトで支出すべき需要項目は、たくさん存在します。こうした分野は、短期的に成果が出にくい。だからこそ、政府が財政拡大出動して、民間投資を誘発しやすい環境を作るのです。

     

     

     というわけで、「労働需給の引き締まりに比べて、なぜ賃金の改善が緩やかなのか?」と題し、長期需要を政府が作り出さない限り、非正規雇用者の雇用者数増と賃金UPに留まり、消費が増えることはない旨を論説しました。

     政府が需要を作る、しかも短期的に成果が出にくいが国力増強・安全保障を強化するために重要と思われる分野こそ、政府が率先して投資しなければなりません。今はデフレです。インフレならば政府支出削減は有効な政策。ところがしつこいですが、今はデフレです。

     政府支出増をすべきところでっても、プライマリーバランス黒字化目標が立ちはだかる、これが今の日本。だからこそ、2018年骨太方針で、プライマリーバランス黒字化目標を破棄できるか?は極めて重要なイベントです。安倍総理の忖度は不要で、プライマリーバランス黒字化→政府支出増の結果が出るまで、正当な批判を続けることが重要であると私は思うのであります。


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