2年で物価目標2%を達成させるための大規模金融緩和政策という壮大な社会実験の失敗

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     今日は、「2年で物価目標2%を達成させるための大規模金融緩和政策という壮大な社会実験の失敗」と題し、日本の金融緩和政策について振り返りたいと思います。

     

     昨年末になりますが、2017/12/07(木)に、日銀の黒田総裁が「物価目標2%について、なお距離があることは事実だ。」と述べられました。理由については、正社員の賃上げの鈍さ、企業が物・サービスの値上げに慎重な姿勢があると述べられ、なかなか値上げしない姿勢にあると仰っていました。

     

     安倍政権が誕生し、2013年4月、日銀の黒田総裁は2年で物価を2%にするとコミットメントしました。コミットメントとは、責任を伴う約束です。少なくても責任云々を言っていた岩田規久男副総裁は2年で物価2%上昇の達成ができなかった時点で、辞任すべきでした。金融市場関係者に「そこまで宣言してデフレ脱却のためにやるんだ!」という信頼感を、事実上黒田総裁自らが壊してしまったと言えます。

     

     事実だけ申し上げますと、日銀は2013年3月以降、340兆円の通貨を発行しました。通貨発行の方法は、紙幣の増刷ではありません。日銀が、銀行にとって資産勘定となっている国債を買い取り、銀行が保有する国債を、日銀当座預金をいう資産勘定に振り替える方法でした。日銀当座預金は日銀にとって負債勘定です。銀行は国債を日銀に売却して、デジタルの日銀当座預金を増やしてきました。

     

     結果、実質的に返済すべき政府の負債は減少しています。なぜならば、日本銀行はJASDAQに上場する株式会社組織であり、日本政府が55%の株式を保有しているため、連結決算で親子関係にあるのです。親会社の政府の負債を、子会社の日銀が買い取った場合、その国債について、政府は日銀に元本の返済をしてもイイですし、しなくてもいいのです。利息も払ってもイイですし、払わなくてもいいのです。

     何しろ、連結貸借対照表を作成する際、親子関係の取引は相殺されますので、当たり前です。

     

     とはいえ、日銀の金融緩和政策の目的は、政府の負債を減らすことを目的としたわけではなく、物価上昇2%の達成です。2年で2%という目標でしたが、5年経過しても達成ができませんでした。

     

     注目すべき指標は、GDPデフレータ、コアコアCPI(生鮮食品・エネルギーの価格変動を取り除いた消費者物価指数)ですが、いずれもほぼ±ゼロです。GDPデフレータ、コアコアCPIがプラス2%だったら、デフレ脱却できたといえます。

     

     なぜ、5年経過したのに達成できなかったのでしょうか?

     

     理由は、デフレは貨幣現象ですという間違った認識のもとで政策をやってきたことです。インフレ・デフレという物価変動の事象について、需要過不足説と貨幣量説があります。

     

     需要過不足説は、需要(実質需要・名目需要)が不足しているからデフレという考え方。貨幣量説は、お金をたくさん刷ればインフレになるが、市場に出回っているお金が不足しているからデフレとする考え方です。このブログでも、インフレ・デフレとは何か?というテーマを何回か取り上げています。私は、後者の貨幣数量説は間違っていて、前者の需要過不足説が正しいという立場です。

     

     お金をたくさん刷ったところで、それをやっただけでは物価変動するはずがありません。物価上昇・物価下落とは、物・サービスとお金の対価があって、初めて上昇・下落します。

     物の個数、サービスの回数が多く買われるという実質需要が多く、価格も値下げせずともむしろ値上げしても売れるという状態であれば、物価は上昇します。

     逆に、物の個数、サービスの回数が少なく買われるという実質需要が少なく、価格も値下げして売れないという名目需要が不足している状況ですと、物価は下落します。

     

     このように、貨幣をどれだけたくさん刷っても、物・サービスとお金のやり取りがない限り、物価は変動しません。今この瞬間、日銀が100兆円増刷したとして、焼き芋食べるのに焚火で燃やしてしまえば、物価変動に影響がないわけです。政府・日銀の失敗はここにあります。単にお金をたくさん刷れば、物価上昇できると考えてきたことが、物価目標2%未達の原因です。

     

     もっとも、日銀は金融緩和政策を継続しており、財政出動は日本政府の問題です。日本政府は金融政策だけを日銀に丸投げしておいて、自分たちは財政出動どころか、緊縮財政をやってきました。2013年に政府支出増をした以外、2014年以降安倍政権は、ずっと緊縮財政です。本予算と補正予算を足したものの合計支出が、前年比を下回っている年度が4年も続けられているのです。

     

     デフレの国であれば、「金融緩和」と「財政出動」をすべきなのですが、「金融緩和」と「緊縮財政」というアクセルとブレーキの組み合わせで、いつまで経っても物価上昇が果たせないでいるのです。

     

     日銀の岩田副総裁は、フィッシャー方程式「実質金利=名目金利−期待インフレ率」を持ち出し、日銀が強く2%を達成するとコミットメントすれば、期待インフレ率2%分、名目金利が控除されて、実質金利が低下し、金利が下がることで企業が設備投資をしやすくなって、デフレ脱却できるという理論のもと、社会実験として大規模金融緩和政策を行うということで、金融緩和を5年も継続してきたのです。

     

     需要がなければ、どれだけ金利が下がろうと、法人税を引き下げようと、経営者は投資するはずがありません。物・サービスの値段が下げないと売れない、個数・回数が少なく買われてしまうという、名目需要も、実質需要も減少しているデフレ環境下では、経営者は投資しても損する可能性が高いと考え、設備投資を辞めたり、様子見で先送りになってしまうのです。

     

     これを打破できるのは、利益追求する必要がない日本政府が、長期プロジェクトで需要を創出し続けることです。具体的には、各種新幹線整備、リニア新幹線の早期開業、港湾整備、イージス艦・潜水艦を作る、リニアコライダーの岩手県北上市への招致を急ぐなど、日本には需要がたくさんあります。こうした需要に、政府自らが投資することで、民間企業の投資を誘発できるのです。

     

     

     というわけで、今日は改めて日銀の金融緩和政策が失敗したことを述べました。誤解があるといけないのですが、私は日銀の金融緩和を辞めるべきとは一言もいっておりません。辞めた場合、一気に円高となって株式市場で株が売られて、日本発の金融危機が発生することになるでしょう。私が申しあげたかったのは、デフレ脱却は金融政策だけではできないということと、政府支出が組み合わさって初めてデフレ脱却が可能になるということです。

     巷では「出口戦略」とかいって、それっぽいこと言っている人いますが、別に日銀が国債を増刷して、日銀のバランスシートが拡大したからといって、困ることは何もありません。それっぽいこと言う人の中には、日銀のバランスシートの肥大化とかなんとか、日銀のバランスシートが大きくなることを問題視する人が居ますが、全くの的外れ。

     日銀が国債を増刷して資産を増やした場合、反対側に紙幣や日銀当座預金という負債が増え、日銀の純資産額が変わることはありません。「たくさん増やした国債をそのまま放置していいのか?」といわれれば、「地球が滅亡するまでそのまま放置でOK!」なのです。

     経済評論家やエコノミスト・アナリストで、日銀の出口戦略などと語る人たち、この人々はマクロ経済について全く理解していない人たちです。こうした人々が政府に間違った情報発信することも、日本がデフレから脱却できない原因といえます。

     そのためには、私たち一般国民がデフレ・インフレなどの経済について知見を高め、識者と呼ばれる人々の間違った論説を、間違っていると指摘する必要があると思うのです。


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