「法人税が高いと企業が海外に流出してしまう!」というウソ

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     今日は、「法人税が高いと企業が海外に流出してしまう!」という論説について述べたいと思います。

     

     かつて景気を良くしたいのなら、富裕層の所得税を減税すべきという「トリクルダウン」理論というのがありました。また、今でも蔓延っていますが、金融緩和で雇用情勢が回復したという意見もあります。有効求人倍率の上昇と失業率の低下について、金融緩和の影響が全くないと言うつもりはありませんが、金融緩和だけやっていればインフレになると主張される人も含め、雇用情勢の回復、インフレになる波及過程を説明している人は少ないです。

     

     

     

    1.所得税の累進課税緩和は不要、金融緩和のみでは需要増につながらず

     

     私が初めてブログで書いた記事の題名は、”「所得税を減税しないと富裕層が逃げていく!」は本当か?”ということで、所得税減税の必要性がないことを書いたのが初めての記事です。その後、銀行のビジネスモデルを焦点に当て、”金利が下がれば設備投資が増えるは本当か?(魚の仲買人さんのビジネスモデル)”という記事も書きました。

     

     どちらの記事も、よく巷で言われることがある「所得税を減税すべき!」「金利を下げれば設備投資が増える!」について否定しています。

     

     改めて、次の俗説2つについて反論させていただきます。

     

     

    【俗説 Ы蠧誓任慮裟任垢譴弌特に累進課税の緩和をすることで富裕層がお金を使って景気が良くなる】

    反論

    所得税を減税しても富裕層が必ずお金を使うとは限りません。所得税が増税されたとしても、需要(※)が多ければ景気はよくなります。所得税減税分について、まったく経済効果がないとはいえないものの、政府支出と決定的に異なるのは、いつ?という時間軸、いくら?という金額、いずれもコントロールできません。政府支出は、いつ?という時間軸が予算化された時点で1年以内に消化され、金額も予算が付けば必ず執行されます。一方で減税の恩恵を受けた富裕層の消費を政府がコントロールすることは不可能です。わかりやすくいえば、富裕層がお金を使うのは、いつでもいいわけです。だから、例えば所得税減税後、5年経過したら豪邸を作るという富裕層がいるとすれば、4年間は経済効果が出ません。その間に普通に一般人も生活しているわけで、仮に4年間、所得を得られず、生きていくことができない人々が出てきます。また、政府支出増をした場合、GDPが増えます。GDP増加となれば、「支出増(=政府支出増)」=「生産増」=「分配増」のいわゆるGDP3面等価の原則により、必ず分配が増加します。このとき、法人税と所得税の税収(労働分配率によって法人税と所得税の割合が変わる)も必ず増えることになります。

     

     

    【俗説◆Ф睛がさがれば経営者は設備投資を増やす(金融緩和をやれば設備投資が増える)】

    反論

    金利が下がったとしても設備投資が増えるとは限らず、需要が不足していれば、企業は設備投資を控え、内部留保を増やします。高金利だったとしても、需要(※)が多ければ、企業は設備投資をすることはあり得ます。逆に需要がなければ、金利がどれだけ下がったとしても、設備投資をする企業経営者はいません。金利が安いからという理由だけで、需要がないのに設備投資をしたら、経営者失格です。2013年に安倍政権が誕生し、アベノミクス第一の矢で、黒田日銀総裁が金融緩和政策を実施、現在も継続しています。具体的には市中の国債(メガバンク、地銀、信金信組が保有する国債)を買い取り、日銀当座預金という勘定科目を増やす形で通貨発行しています。ところが、物価目標2%どころか、インフレにすらなっておりません。設備投資が増えるどころか、内部留保が増えている有様です。(下方の<非金融法人の現預金額の推移>を参照)2014年頃まで、内部留保額は170兆〜200兆円を推移していましたが、2014年頃から200兆円を超え始め、2016年に入ってからは250兆円を突破しています。金融緩和のみでは設備投資を増やすことはできません。企業が設備投資をするためには、需要>供給のインフレギャップ状態のときです。今は需要が不足しているデフレ状態ですので、どれだけ金融緩和をしたとしても、経営者は設備投資をしようとは思わないのです。

     

    ※需要:ここでいう需要とは、個人消費以外にも政府支出、企業設備投資、純輸出(輸出−輸入)ですが、貿易は自国の主権だけで需要の増減をコントロールできないため、政府支出と企業設備投資を指すと理解していただいても構いません。

     

    <非金融法人の現預金額の推移>

    (出典:日銀の資金統計循環)

     

     

     先述の”金利が下がれば設備投資が増えるは本当か?(魚の仲買人さんのビジネスモデル)”の記事は、運転資金という短期借入資金について書いたものでした。

     仮に超長期プロジェクトを政府が実施するとして、期間が長く需要が十分にあって、値段を下げなくても物・サービスが売れる状態で、むしろ物・サービスの値段が値上げしても売れる状態だとすれば、固定金利7%とかで長期借入金で設備投資をしたとしても、十分にペイできます。

     

    ●政府が実施する=期間が長く続く=需要が長期に渡って継続する

    ●値段を下げなくても売れる≒値上げをしても売れる=名目需要が十分にある

     この2つの状態は、物・サービスが売れるインフレ状態です。時間軸も先行きに見通しが長く続くと思えば、経営者は投資がしやすくなります。

     

     

     

    2.法人税が高いと企業が海外に流出してしまうというのは、本当か?

     

     慶應義塾大学の土井丈朗氏が、成長戦略の一環として、法人実効税率の引き下げを主張していました。この土居丈朗氏は、財政破綻論者の一人でして、グローバリズム支持者の一人でもあり、私が主張する意見とは逆の立場の識者です。

     安倍政権もまた、経済成長に欠かせないのは「民間の活力」であるとし、企業に元気を与える政策として企業減税を実施しています。

     企業減税にもいくつか種類がありますが、「設備投資減税」と「法人税減税」で比較した場合、前者の方が経済効果が大きく、後者はデフレ環境下にある日本においては効果がほとんどありません。

     

     前者の「設備投資減税」とは、国内に工場や設備を作った場合、その費用の一部を課税対象から除外するというもの。国内で投資した場合のみ減税しますので、企業の投資意欲を高める効果が期待できます。半面、設備投資を行うのは主に製造業なので恩恵を受ける企業は全体の約25%程度に過ぎないという意見があります。日本のGDPの大部分を支えるのが小売業やサービス業であり、そういった企業にも減税の恩恵が行き渡らないと、成長戦略としての効果は見込めないというのです。

     

    <法人実効税率の国際比較>

     

    (出典:財務省のホームページ)

     

     上図を見てもわかるように、日本の法人実行税率(法人税と地方税の合計税率)は、米国に次いで2番目に高くなっています。このままだと、企業が税金の安い海外に逃げ出してしまうのではないか?あるいは海外企業の日本への直接投資が減ってしまうのではないか?という声があり、法人税減税はぜひとも必要だというのです。

     

     私は断言しますが、法人税減税は意味がないということです。法人税とは正確には「法人所得税」であり、黒字決算の企業だけに課税されます。現在、国内企業の70%は赤字であるため、もともと法人税は支払っていません。法人税減税で恩恵を受けるのは儲かっている企業だけなのです。

     

     しかも企業は現在250兆円以上の現金を内部留保して貯め込んでおります。投資や雇用を増やそうを思えば、お金は十分にある状態です。にもかかわらず、国内で投資を行ってもデフレ環境下では、物・サービスの値段を下げないと売れない、個数・回数を少なく買われるという儲かりにくい環境であると判断しているのです。そうした企業に法人税減税したとしても、減税分が内部留保か海外投資に回ってしまうことになるでしょう。

     

     では、土井丈朗教授が危惧するような、税金が高いと本当に企業の海外流出は増えるのでしょうか?実はこれもあり得ません。日本の内需を支える小売業やサービス業は、分厚い中間層の国民が多い日本を経営基盤として活躍の場にしています。製造業のように工場だけを海外に出すことは、そもそもできません。そのため製造業に国内投資を促すという点に目的を絞るのであれば、「設備投資減税」で十分といえるのです。

     

     

     

    3.米国のトランプ政権の法人税減税は、日本と異なるのか?

     

     トランプ大統領は、税制改革案で、法人税20%に下げる意向を示しました。

     下記はロイター通信の記事です。

    『ロイター通信 2017年9月28日 / 07:01 トランプ税制改革案、法人税20%に下げ 「歴史的な減税」強調

    [ワシントン 27日 ロイター] - トランプ米大統領は27日、レーガン政権下の1986年以来、約30年ぶりとなる抜本的な税制改革案を発表した。焦点となる連邦法人税率は現行の35%から20%に引き下げる。

    個人所得税は現在7段階に分かれている税率を12、25、35%の3段階に簡素化するほか、最高税率を39.6%から35%に引き下げる。

    また、個人事業主やパートナーシップなど、いわゆるパススルー企業に課す税率を25%に設定する。

    インディアナ州で演説したトランプ大統領は、税制改革案は米国史上で最大の減税であり、「米国民にとって歴史的な減税となる」と強調。税制改革を通じ、「成長促進、雇用創出、労働者と家族の支援を目指す」と述べた。

    大統領は記者団に対し、改革案を実現しても富裕層への恩恵はほとんどないと語った。また法人税率の20%への引き下げについては、当初15%への引き下げを要求しており、20%の水準について交渉するつもりはないと述べ、これ以上譲歩しない考えを示した。(後略)』

     

     

     グローバリズムが蔓延した社会では、法人税は減税されます。一つ目は「法人税率が高いままだと企業が外国に資本を移しちゃいますよ!」というレトリックが通用しやすくなります。実際は、法人税率ごときで外国に資本を移すことはありません。

     

     もともとトランプ大統領は労働者階級から支持を受け、米国国民の所得を増やすというスローガンで勝ち上がってきた大統領というイメージがあると思いますが、米国の法人税減税は、どう理解すべきなのか?

     

     米国の場合は必ずしも間違っているとは言い難いのです。なぜならば、法人税減税をすることで設備投資を増やす可能性はあります。なぜならば、1兆ドルのインフラ投資をやるという宣言をしています。これは政府が需要を1兆ドル(≒110兆円)創出することを宣言したことになります。

     1兆ドル規模の政府支出増という需要が見込めるのであれば、企業が設備投資をする動機は十分にあり、法人税減税はむしろ設備投資の後押しにつながる可能性があるのです。

     

     日本の場合は、米国とは真逆で、政府が緊縮財政をやっています。しかもデフレを長期間放置してきて、物・サービスが値下げをしないと売れないという儲かりにくい環境ですので、法人税をゼロにしたとしても、需要がなければ投資に前向きになろうとする経営者はいないでしょう。

     

     

     というわけで、今日は「法人税が高いと企業が海外に流出してしまう!」というフレーズに対して反論させていただきました。よく巷で言われる「法人税を引き下げないと企業が海外に流出する」なんてのは、一部の製造業だけです。サービス業ではあり得ません。先の「所得税の累進課税を緩和しなければ富裕層が流出する」とか、「金利を下げれば企業の設備投資が増える」とか、「法人税を引き下げれば企業の設備投資が増える」とか、こうしたフレーズは、そもそも需要の有無を全く考慮していない、会社経営をやったことがない人の発想です。

     こうしたレトリックに騙されないようにするためには、私たちが「銀行のビジネスモデル」や「デフレインフレは需要の過不足説であること」など、経済や経営に関する知見を高めていくしかないのです。


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