日産自動車の検査偽装は常態化か?

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     今日は日産自動車(証券コード7201)でニュースになった完成品検査での偽装検査について取り上げます。

     

     このニュースについて、まず私が第一報で見たのは、9月29日付配信のロイター通信の記事でした。下記がロイター通信の記事です。

    『[東京 29日 ロイター]日産自、無資格者が完成車検査の一部に従事 新車6万台登録停止

     日産自動車<7201.T>は29日、新車出荷前に行う完成車検査工程の一部の項目で資格のない者が検査をしていたと発表した。国土交通省の立ち入り調査で判明した。
     対象は、今月18日以前に国内5工場で生産された、軽自動車を除く全21車種。不具合が見過ごされている可能性があるため、同社は未出荷分約6万台の登録を一時停止した。販売店にある在庫車も再検査が終了するまで登録を一時とりやめる。
     いつから検査に不備があったかは不明で、日産は第三者を含むチームで原因などを調査するとしている。』

     

     

     上記のニュースを皮切りに、この問題が大きくクローズアップされました。資格を持たない者が、書類上は資格を持っているように装って国の検査を偽る行為を行っていたとし、石井国交相は制度の根幹を揺るがすものであるとして罰金2億円を課すとしました。リコール費用については250億円との発表も出ています。

     

     日産自動車の無資格者が資格を持っているように装って国の検査を偽るという行為が常態化していたのでは?との疑いも持たれています。通常、自動車メーカー各社は、車の完成段階で国の手続きを代行する形で完成検査に当たります。各社で認めた検査員というが対応するのがルールです。ところが、日産自動車では、資格を与えた完成検査員だけでなく、現場でサポートする立場の資格のない補助審査員に完成検査の一部を担当させていたということで、コスト削減で利益を競うあまり、安全確保の認識が甘くなっていた可能性が指摘されています。

     

     当然ですが、例えば完成検査員(=資格保有者)は、補助検査員より人件費は高いわけです。もともと検査自体がそれほど付加価値を生むわけではないため、コストコストコストとやりすぎて、完成検査員が足りないからといって、完成検査員を育成するのではなく、補助検査員にやらせるという発想があったのではないでしょうか?

     

     今回の事件、私は長期に渡って日本がデフレを放置してきたことのツケであると考えておりまして、デフレで物価が下がり、物・サービスが値段を下げないと売れないという経済環境の中で利益を出そうとするあまり、「コストです!価格です!」というのをやりすぎた結果、品質が低下していくというケースのわかりやすい事例ともいえるでしょう。

     

     

     

    1.日産自動車の特徴とトヨタ自動車との比較

     

     そもそも、日産自動車といえば、どんな会社か?いろんな角度で企業を見ることができますが、敢えて株式市況の目線で見た場合ということで、下記をあげたいと思います。

     

    ●配当利回りが高い(5%弱)

    ●役員報酬でカルロスゴーンが10億円もらっている

    ●直近では三菱自動車を買収した

    ●EV(電気自動車)に力を入れようとしている

    ●ルノー(フランスの自動車メーカー)が大株主

     

     私が気になるのは、「配当利回りが高い」ことと「カルロスゴーンの役員報酬が高い」という点です。配当にしても役員報酬にしても、剰余金から払うわけですが、本来は将来のための研究開発費をもっと増やしたり、人材育成費用として能力開発費を増やしたり、生産性向上のための設備更新など、剰余金の使い方としてあったわけです。

     

     ここでトヨタ自動車との比較をしてみたいと思います。下記は、日産自動車(証券コード:7201)とトヨタ自動車(証券コード:7203)の業績です。

     

    <日産自動車(証券コード:7201)の業績>

     

    <トヨタ自動車(証券コード:7203)の業績>

     

     

     上記業績の一部と合わせ、注目しておきたい数値は下記の通りです。

     

    <日産自動車(証券コード:7201)>

    2017年3月期

    売上高 11兆7200億円

    営業利益   7422億円

    当期利益   6635億円

    一株当り利益 165.9円

    設備投資   4693億円(対売上高比率4.00%)

    研究開発   4904億円(対売上高比率4.19%)

    年間配当     48円

    配当性向    28.9%

     

    2018年3月期四季報予想

    売上高  12兆0000億円

    営業利益    7200億円

    当期利益    5740億円

    一株当り利益   146.8円

    年間配当   53円〜59円

    配当性向     36.1%(配当下限値で試算)

    配当利回り    4.86%(株価10/6終値1,091.5円、予想配当下限値で試算)

     

     

    <トヨタ自動車(証券コード:7203)>

    2017年3月期

    売上高   27兆5972億円

    営業利益  1兆9944億円

    当期利益  1兆8311億円

    一株当り利益   605.5円

    設備投資  1兆2118億円(対売上高比率4.39%)

    研究開発  1兆0375億円(対売上高比率3.76%)

    年間配当      210円

    配当性向     34.6%

     

    2018年3月期四季報予想

    売上高   28兆5000億円

    営業利益  1兆8500億円

    当期利益  1兆7500億円

    一株当り利益   579.1円

    年間配当  200円〜210円

    配当性向     34.5%(配当下限値で試算)

    配当利回り    2.90%(株価10/6終値6,889円、予想配当下限値で試算)

     

     

     

    2.配当利回りで上位に位置され、投資家からの注目を集める日産自動車

     

     配当だけで見た場合、特に配当性向はトヨタ自動車も同水準といえます。設備投資や研究開発費が売上高に占める割合についても、設備投資と研究開発費の合算値で8%前後で同水準です。

     配当利回りは、トヨタ自動車の方が人気があることもあり、10/6の終値でみた場合、日産の方が利回りが高くなっています。もともと高配当銘柄の上位に、日産自動車は顔を出し続けておりまして、株主還元には積極的ですが、株価がそれほど上昇せず、結果的に配当利回りが高くなっていました。

     配当性向から見れば、決して無理な配当はしておらず、たこ足配当のイメージはありません。その意味では、私も購入タイミングを狙っていた銘柄の一つです。

     

    <配当利回りランキング>

    (出典:ヤフーファイナンス)

     

     

     上記は、2017/10/9時点(2017/10/6時点終値)の配当利回り銘柄ランキングで、上位1位〜20位を表示させたものです。日産自動車は4位にランキングされています。

     他の銘柄でAIやIoT関連や、業績絶好調の半導体関連で、暴騰している銘柄が数多い中で、自動車関連株は出遅れていることもあって、特に日産自動車は配当利回りが高くなっているのです。

     

     

     

    3.カルロスゴーンと豊田章男社長との役員報酬差は7億円

     

     あえてネガティブなイメージ、特に今回の検査偽装に紐付けていえば、役員報酬の高さをあげられると思います。下記は2017年3月期の有価証券報告書の抜粋です。

     

    <日産自動車の有価証券報告書P47の抜粋>

     

     

    <トヨタ自動車の有価証券報告書P85の抜粋>

     

     

     注目いただきたいのは、赤枠の数値でして、トヨタ自動車の豊田章男社長の役員報酬総額(基本報酬と賞与)は322百万円であるのに対し、カルロスゴーン氏は1,098百万円も得ているということです。

     

     このような事件が勃発したから言うわけではありませんが、役員報酬をトヨタ自動車の豊田社長並みに抑えれば7億円強。株式配当もトヨタ並みにせず、配当性向で20%程度にとどめたとすれば、配当流出額1828億円のうち、600億円程度。合計607億円程度の資金がねん出できたかもしれません。

     

     役員報酬を抑えた程度では7億しかねん出できませんが、当期利益は販管費を差し引くため、コストを削減すれば当期利益は増えます。株式会社なので利益追求は当たり前なのですが、利益を出すためにコスト削減に力を入れ過ぎて、コストコストコストとなりますと、結果的に当期利益が増えて配当可能利益が増えて配当もたくさん払えて役員報酬も多く払えるとはいえ、犠牲になるものが出てくるでしょ?と思うわけです。

     

     品質という付加価値は目に見えにくいため、捻出した費用を品質向上に充てたとして、必ず不祥事が発生しないとは言い切れないのも悩ましいところです。とはいえ、コストを掛けず原資が少なければ、品質は劣化するというのは、安かろう悪かろう、高かろう良かろうということになることが多いと私は思っています。

     

     したがって、特にコスト削減を中心にして利益を出すような会社は要注意です。「品質を疎かにするはずがない」といくら宣言してみたところで、それはわかりません。人件費を抑える会社であれば、給料が増えず働く人のモチベーションも下がりますでしょうし、雇用条件が派遣社員や契約社員などの非正規雇用が多いような会社の場合は、人材はコストとして考え、人財とはならず、中長期的にノウハウ技術の継承や生産性の向上の低下につながることは容易に想像ができます。

     

     日産自動車の場合、コスト削減に成功したのはカルロスゴーンの手腕であり、高額報酬をもらうのは問題がなく、配当を多く出すことは問題がないとして、日産自動車の経営手腕を称賛する声もありました。いつだったか?数年前ニュースのテレビ番組で、日産自動車が業績回復したということで、日産自動車の株主総会終了後に、日産自動車の株主(高齢の男性の方)がインタビューされ、カルロスゴーンの高額役員報酬は業績回復の功績で問題がない旨の回答をされていました。

     

     もちろんそういう見方を否定するつもりはありません。たこ足配当ではありませんし、株式投資先として高配当銘柄で取り上げられることについても、否定するつもりはありません。

     

     とはいえ、今回の不祥事がいつから行われたか?という点が気になりますが、今まで業績回復時から今日まで何も起きなかったからこそ、高配当が実現できたわけです。私は日産自動車の今後の配当政策に興味があり、日産自動車が今回の事件の再発防止にどう動くか?見守りたいと思っております。

     

     

     というわけで、今日は日産自動車の検査偽装について取り上げました。株価の今後の見通しでいえば、課徴金の2億円は、日産自動車の売上高、営業利益、当期利益の水準から見ればゴミみたいなもんで、痛くもかゆくもないでしょう。またリコール費用の250億円についても、当期利益で5%に満たない水準ですし、それほど影響が大きいとは思いません。

     ですが、この不祥事をソフトランディングさせて早期収拾がつかなければ、風評被害で売上不振となって、リコール費用250億円の決算インパクトが大きくなることもあり得るかもしれないため、配当利回り狙いで日産自動車株の購入を検討される方は、引き続き事態の行く末を注視する必要があるものと考えます。


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