「国民が豊かになる=実質GDPが成長すること」です。
JUGEMテーマ:経済全般
今日は改めて「経済成長とは?」ということについて述べたいと思います。まず豊かさの言葉の定義について触れます。次に実質GDPが成長することが、なぜ豊かになるとイコールになるのか?を述べさせていただき、私見をお伝えいたします。
概要は次の通りです。
1.「豊かになる」の言葉の定義
2.GDPとは?(GDP3面等価の原則)
3.なぜ「実質GDPの成長=国民が豊かになっている」といえるか?(実質GDPと名目GDPの違い)
1.「豊かになる」の言葉の定義
言葉の定義は大変重要です。そもそも「経済成長」という言葉の意味を理解せず、地方創生とか地方経済活性化を述べるのは、無理があります。
私は、経済成長率とは、実質GDP成長率とイコールであると考えます。なぜならば、実質GDPが成長したとなれば、物を買う個数が増えた、サービスを受ける回数が増えた、ということと同じだからです。もっと身近にいえば、パンを買う個数が増えた、医療サービスを受ける回数が増えた、ともいえます。
パンを買う個数が増えている状態であれば、飢餓に苦しむ人は少なくなるでしょう。また医療サービスを受ける回数が増えたとなれば、例えば救急車を何回も使った人は、何回も命を失いかけたがその都度命が救われたということになるでしょう。
かつての日本の高度経済成長期は、マクロ経済的にいえば、「日本国民が過去と比べて相対的に早いスピードで豊かになっていた」時期ということになります。
読者の皆さんの中には、「いや、経済成長率が高まったからといって豊かになっているとは限らない」などと反論される方もおられるかもしれません。
もし、「豊かになる」という定義を、
●心が平穏でいられる状態になる
●家族と平穏な毎日を送る
●戦争が勃発せず平和な状態でいられる
などと、抽象的に語られてしまうと、私は反論できません。高度経済成長期の中にあっても、心が平穏でいられない状態の人もいたでしょうし、がむしゃらに仕事に熱中して、家族と平穏な毎日が送れない人もいたでしょう。
ついでにいえば、世界に真の意味で「平和」が訪れたことなどないと思いますし、これからも「平和」は訪れることはないと、私は思います。
このように言葉の定義が曖昧だと、政策議論が進まず、間違った政策が打たれてしまうことがあると考えられます。
掲題のテーマである「国民が豊かになる」という議論をする場合、あくまでも私は「実質GDPが成長すること」であると考えます。求めるのは、心の豊かさでも精神的な豊かさでも平和もありません。あくまでも「実質GDPが成長すること」です。
2.GDPとは?(GDP3面等価の原則)
実質GDPが成長すると、なぜ日本国民がマクロ経済的に豊かになっているといえるか?について考えます。本ブログでもGDPをテーマとした記事を多く書いておりますが、そもそもGDPとはなんでしょうか?
私たちは、会社で働くか自営業や農業などで事業を行って働いています。もちろん老人の方は働けない人が多い。とはいえ、日本全体から見れば、働いている人の方が圧倒的に多いと思います。
働くとは、物を生産する、サービスを生産する、ということです。具体的にいえば、下記の通りです。
●製造業=製品の製造
●農業=農作物の生産
●学校の先生や大学教授=教育サービスの提供
●スーパーマーケット・コンビニ=小売りサービスの提供
●運送業=運送サービスの提供
●建設業=建築物を組み立てるサービスの提供
●土木業=土木サービスの提供
●公務員=行政サービスの提供
●漫才師=「お笑い」サービスの提供
などなどです。
もし、上記について、物を製造するだけ、サービスを提供するだけ、では全く生活が成り立ちません。製造した製品、提供するサービスについて、家計や企業や政府や海外の顧客に買ってもらわなければ、単なるボランティアになってしまいます。
誰もがみな生産者として、製品やサービスを生産し、お客様に消費してもらう、もしくは投資として買ってもらうことで、生産者は所得を得ることができます。生産者がいくら生産したところで、所得を得られませんし、ボランティアで無償提供したとしても、所得を得られません。所得を得て初めて生業が成立するのです。
所得を得られない人は、究極的には飢えて死にます。所得を得ることが、働くことの一義的な目的になるのは、飢えて死なないようにするためだからです。
「豊かになる」という言葉の定義は、「所得が増えること」と捉えることもできます。とはいえ、単に所得が増えただけでは、豊かになったといえません。なぜならば、所得を得た生産者は、今度は消費者となって別の生産者が生産した製品やサービスを必ず買います。いくら所得をたくさん稼いだからといって、農作物や水を買わなければ人間は生きていけません。
食べ物や水以外にも、家電製品や自動車や、交通サービスや土木・建築、通信、金融、保険、運送、卸売り・小売り、医療・介護、電力・水道・ガス、教育といったサービスに加え、防衛といった国家が提供する安全保障サービスなどなど、人間が生きていく上で必要な製品・サービスは無限にあります。いわば、需要は無限です。
実は、GDPとは何なのか?といえば、上述の製品・サービスが生産された合計なのです。GDPとは何なのか?と聞かれた場合、「国内総生産ですよね!」という答えがあったとしても、その答え自体は間違ってないのですが、GDPの概念を理解したことになりません。
ですが、「国内総生産」という日本語に、”生産”という言葉が入っています。つまり日本国内で生産されたものの総合計なのです。だから、製品・サービスが生産された合計といえるのです。
内閣府は、生産面のGDP、支出面のGDP、分配面(所得の)GDPの3つの統計を発表しています。どれを見ても、GDPの総額は同一になります。このことを「GDP3面等価の原則」といいます。
「GDP3面等価の原則」のイメージは下記の通りです。
上記の図では、下記の通り300円で一致します。
生産面のGDP=畜産物の生産100円+と殺サービスの生産100円+小売サービスの生産100円
支出面のGDP=個人消費300円
分配面のGDP=酪農家の所得100円+と殺業者の所得100円+小売業者の所得100円
以下、図はありませんが、具体的に例を書きます。
理容店(個人事業主)のサービスが100円だとすれば、
生産面のGDP=理容店が散髪するサービス100円
支出面のGDP=個人消費100円
分配面のGDP=床屋の事業所得100円
防犯サービスが100円だとすれば、
生産面のGDP=警察が提供している防犯サービス100円
支出面のGDP=政府支出100円
分配面のGDP=警察官の給与所得100円
防衛サービスが100円だとすれば、
生産面のGDP=自衛隊が提供する防衛サービス100円
支出面のGDP=政府支出100円
分配面のGDP=自衛隊員の給与所得100円
教育サービスが100円で生産され、政府の補助金が50円だとすれば、
生産面のGDP=学校の先生が提供している教育サービス100円
支出面のGDP=政府支出50円+個人消費50円
分配面のGDP=学校の先生の給与所得100円
スーパー堤防が100円で生産され、全額政府が支出して、土木業者が使用人に50円の給料を払うとすれば、
生産面のGDP=土木業者が提供する堤防を作るサービス100円
支出面のGDP=政府支出100円
分配面のGDP=土木業者の経営者の役員報酬50円+使用人の給与所得50円
医療サービスが100円で生産され、自己負担額30%で、医療法人が、医師に30円、看護師に20円の給料を払うとすれば
生産面のGDP=病院が提供する医療サービス100円
支出面のGDP=政府支出70円+個人消費30円
分配面のGDP=医療法人の経営者の役員報酬50円+医師の給与所得30円+看護師の給与所得20円
どうでしょうか?
「GDP3面等価の原則」とは、こういうことなのです。
そして上記の例を合計したものが、まさに国内総生産=GDPです。
このGDPが拡大すれば、つまり経済成長すれば、飢えて死ぬ人が少なくなりますし、製品を数多く種類も多く買うこともできますし、サービスをたくさん受けることができ、災害から命が守られやすくなって、より快適な生活を送ることができるわけであり、国民が豊かになっているといえるのです。
3.なぜ「実質GDPの成長=国民が豊かになっている」といえるか?(実質GDPと名目GDPの違い)
GDPには2種類あります。名目GDPとは、金額面でみたGDPを意味します。この名目GDPとは金額で換算するため、物価変動の影響をまともに受けます。
例えば、今後1年間で、物価が全て1.5倍になってしまった場合、GDPはどうなるでしょうか?
物価が1.5倍になったということは、物価上昇率50%です。生産の「量」、つまり製造する製品の個数、提供するサービスの回数は変わりませんが、単に物価が1.5倍になったという話になります。
この場合、「単に物価が上がっただけで、本当に国民が豊かになったとは言えないのでは?」という疑問を持つ読者の方もおられるかと思います。この疑問は、当然の疑問です。何しろ、生産される生産量が変わっていないということは、消費や投資をされる製品・サービスの量が変わらないということになるからです。ついでにいえば、実質的な所得の規模も1年前と同じです。
具体的にいえば、「1年前はパンを年間に10個買い、今年も10個買いました。だたし物価が1.5倍になったので、支払った金額も1.5倍でした。」ということになるわけです。
日本国民の需要が満たされるという意味で「国民が豊かになる」ということは、支払った金額が多かった(増えた)ということで、豊かになることではないわけです。
金額ではなく、買った量で決まります。仮に物価が2倍や3倍や10倍になったとして、飢えて死なないようにするためにパンを多く食べたいという需要を満たすという意味で考えた場合、支払った金額が2倍、3倍、10倍になったとしても意味がないわけです。
もちろん、GDP3面等価の原則で考えれば、所得も2倍、3倍、10倍になります。とはいえ、物・サービスの価格が2倍、3倍、10倍になってしまったとなれば、実質的な所得は変わらないことになってしまうのです。
そこで、名目GDPから物価変動の影響を排除した実質GDPこそ、実質GDPの成長こそ、日本国民が豊かになったといえるのです。
もし、実質GDPが50%成長したとなった場合、GDP3面等価の原則により、
●生産者が生産する製品・サービスを提供する量・回数が50%増えた
●消費者が買った製品の個数、サービスを受ける回数が50%増えた
●所得が実質的に50%増えた
となります。実質的な所得が50%増えたとなり、この状況は国民が豊かになったといえます。
なぜならば「パンを15個買える国民は、パンを10個しか買えない国民に比べて豊かです!」と考えることができるからです。
このように豊かさとは、物・サービスを購入する際に支払う金額の大きさではなく、物・サービスを買える量で決まるといえるのです。
というわけで、今日は経済成長とは?という言葉の定義と、実質GDP・名目GDPの違いについて述べさせていただき、経済成長するとは、実質GDPが成長することであり、それは国民が豊かになったということを意味するという私見を述べさせていただきました。
- 2017.09.09 Saturday
- 日本経済(経済理論)
- 14:23
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- by 杉っ子