教科書で語られない16世紀の日本人奴隷(豊臣秀吉の「伴天連追放令」の理由)

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    JUGEMテーマ:グローバル化

     

     今日は、『教科書で語られない16世紀の日本人奴隷(豊臣秀吉の「伴天連追放令」の理由)』と称し、1500年代に日本人奴隷がいたという史実に触れ、「伴天連追放令」を豊臣秀吉が出した背景などを考察しながら、現代におけるグローバリズム、特に「人の移動の自由」についての論説を述べたいと思います。

     

     

     

    1.「南蛮貿易」と「朱印船貿易」

     

     私たちは、歴史の教科書で島原の乱をどのように教わるでしょうか?その前に、2つの貿易について知る必要があります。その2つの貿易とは、「南蛮貿易」と「朱印船貿易」です。

     

     南蛮貿易とは、16世紀半ばで行われた、来日ポルトガル人と来日スペイン人との間で行われた貿易で、長崎県の長崎、平戸を中心に交易がおこなわれていました。日本からは銀が輸出され、鉄砲、火薬、時計、ガラス、中国産の生糸・絹織物などが輸入されていました。

     

     朱印船貿易とは、江戸幕府から与えられた朱印状を持った西国の大名や京都・堺(大阪府)・長崎などの商人が、東南アジアなどへ船を出して行った貿易です。日本からは、銀・硫黄・銅・刀が輸出され、中国産の生糸・絹織物、武具用のサメ皮、鹿皮、砂糖などが輸入されました。

     

     この「南蛮貿易」は「朱印船貿易」と共に、いずれも江戸幕府が鎖国体制を取られる中で終了しています。1635年には、日本人の海外渡航・帰国の禁止により、朱印船貿易の終了、1639年には、ポルトガル船の来航禁止により、南蛮貿易の終了となりました。

     

     ところで、この「南蛮貿易」「朱印船貿易」が始まってから、鎖国令が出るまでの間に、日本人奴隷が存在し、キリシタン大名が世界に売り飛ばしていたという事実を知っている人は少ないのではないでしょうか? 

     ポルトガルといえば、スパイスロード(香辛料の道)において、香辛料以外の商品の交易も盛んにおこなわれていたことで有名です。ところが、スパイスロードにおいて、アジア人奴隷も運んでいました。16世紀〜17世紀の「南蛮貿易」では、ポルトガル人は日本で日本人を奴隷として買い付け、マカオやポルトガルなど、様々な場所で売り付ける大規模な奴隷交易(=人身売買)が発展していたのです。

     島原の乱といえば、キリシタン大名の殉職者の悲劇と、豊臣秀吉が排他主義者であることを伝えることはあっても、豊臣秀吉が、日本人が奴隷として売られている事実を知り、激怒したことがきっかけという上述の背景を、日本の歴史教科書には記載していません。

     

     

     

    2.なぜ「伴天連追放令」が実施されたか?

     

     「伴天連追放令」について、なぜ実施されたのか?について、日本の歴史教育では教えません。

     実際は、「伴天連追放令」について、織田信長や豊臣秀吉と会見したルイス・フロイスが詳細な記録を残しています。人身売買の事実を知って怒り狂った豊臣秀吉は、1587年7月24日に、イエズス会の副管区長のガスパール・コエリョに対して使者を出し、次の太閤の言葉を伝えています。

     

    その第一、汝らは何ゆえに日本の地において、今まであのように振舞ってきたのか。…仏僧たちは、その屋敷や寺院の中で教えを説くだけであり…汝らのように宗徒を作ろうとして、一地方の者をもって他地方の者をいとも熱烈に扇動するようなことはしない。よって爾後、汝らはすべて当下九州に留まるように命ずる。…もし、それが不服ならば、汝らは全員シナ(マカオ)へ帰還せよ。…」
    第二の伝言は、汝らは何ゆえに馬や牛を食べるのか。…馬は、道中、人間の労苦を和らげ、荷物を運び、戦場で仕えるために飼育されたものであり、耕作用の牛は、百姓の道具として存在する。しかるにもし汝らがそれを食するならば、日本の諸国は、人々にとってはなはだ大切な二つの助力を奪われることとなる。…」
    第三は、予は商用のために当地方(九州)に渡来するポルトガル人、シャム人、カンボジア人らが、多数の日本人を購入し、彼らからその祖国、両親、子供、友人を剥奪し、奴隷として彼らの諸国へ連行していることも知っている。それらは許すべからざる行為である。よって、汝、伴天連は、現在までにインド、その他遠隔の地に売られていったすべての日本人をふたたび日本に連れ戻すように取り計られよ。もしそれが遠隔の地のゆえに不可能であるならば、少なくとも現在ポルトガル人らが購入している人々を放免せよ。予はそれに費やした銀子を支払うであろう。」

     

     上記の豊臣秀吉の言葉に対し、ガスパール・コエリョは、「奴隷売買を廃止しようと努力しているが、取り締まらない日本が悪い」と返答しました。

     この言葉に対し、豊臣秀吉は、更に激しく怒ったとされ、「キリシタンは、いかなる理由に基づき、神や仏の寺院を破壊し、その像を焼き、その他これに類した冒涜を働くのか?」との伝言を持たせて、再びガスパール・コエリョに使者を出しています。

     

     ガスパール・コエリョは、上述の伝言に対し、「キリシタン大名らが、キリストの教え以外に救いがないと悟り、自ら決断して、それら神仏の像を時として破壊したり毀滅したのである。」と答えました。

     このガスパール・コエリョの回答は、いわば自分たちは悪くなく、キリシタンとなった大名たちが勝手にしたことと責任逃れをする内容なのです。

     

     豊臣秀吉が激怒した理由は、「太閤検地・刀狩り政策」を徹底するにあたり、神社寺院仏閣の破壊を通じた農村秩序の崩壊は、何より脅威だったと思われ、単に人身売買で哀れみで同情したというより、九州の勢力が兵器を大量に保持して、動乱を起こされるのを危惧したのでは?との見方もあります。

     もちろん、「南蛮貿易」によって輸入された珍奇な物産や新しい知識に魅惑されることもあったかもしれません。とはいえ、実際の南蛮貿易が日本人の大量の奴隷化をもらたしているという事実を目の当たりにして青天霹靂のごとく、恐れと怒りを抱いたとみることもできるでしょう。それは、「大綱の言葉」の”第三”について人身売買について触れ、”許すべからざる行為”という言葉に表れていると考えることもできます。

     

     実際、16世紀後半では、ポルトガル本国や南米アルゼンチンにまで日本人が奴隷として送られました。この日本人を奴隷として輸出する動きは、ポルトガル人が種子島に漂着した1540年代終わりころから始まったと考えられています。

     奴隷とはいっても、宣教師が夜中に民家に押し入り、誘拐したわけではありません。キリシタン大名や日本人仲介人がそれを幇助していたとされています。キリシタン大名らは、密貿易と若い女性の身体と引き換えに、火薬や武器の輸入していたのです。

    現代の倫理観も、グローバリズムで崩壊していると思えるのですが、こうして奴隷となった日本人は、自己責任なんでしょうか?当時の倫理観でいえば、キリシタン大名は、人を家畜のように売っても罪悪感を感じなかった可能性もあります。

     

     1582年(天正10年)に、ローマに派遣された有名な少年使節団の一行が、世界各地で多数の日本人が奴隷の身分に置かれているのを目撃し、驚愕しているという記録があります。

     

     その中の人物に千々石ミゲルという人物がいます。天正遣欧少年使節(てんしょうけんおうしょうねんしせつ)の一人です。肥前国に生まれた安土桃山時代から江戸時代初期の武士です。

     キリシタンとなって、天正遣欧少年使節の4人のうちの1人で、唯一キリスト教を棄教した人物として知られています。千々石ミゲルは、旅行先でこう述べています。

    「(前略)このたびの旅行の先々で、売られて奴隷の境涯に落ちた日本人を親しく見たときには、道義をいっさい忘れて、血と言語を同じうする同国人をさながら家畜か野獣かのように、こんな安い値で手放す我が民族への激しい怒りに燃え立たざるを得なかった。」

     このように千々石ミゲルもまた、豊臣秀吉と同様に、奴隷貿易について悪しきものと捉えていたのです。

     

     

     

    3.「ドイツNGOとイタリア政府」と「ポルトガル人・キリシタン大名と豊臣秀吉」

     

    下記は2017年8月4日に放映されたNHKニュースです。

    『2017年8月4日 NHK 難民援助の船を密航ほう助容疑で拿捕 イタリア

    アフリカからヨーロッパを目指して地中海を渡る難民や移民を送り出している密航業者と連絡を取り合い、密航を助けたとして、イタリアの検察は難民や移民の救助を行うNGOの船を拿捕(だほ)したことを明らかにしました。
     地中海ではアフリカからヨーロッパを目指す難民や移民を乗せたボートが沈むなどして死亡したり行方不明になったりする人が相次ぎ、複数のNGOが船で救助活動を行っています。
     こうした中、イタリア・シチリア島にある都市、トラパニの検察は2日、密航を助けたとして、救助活動にあたってきたドイツのNGOの船を拿捕し、船内を捜索して乗組員に事情を聴いたことを明らかにしました。
     検察官は会見で、この船の乗組員が難民や移民を送り出している密航業者と去年、3回にわたって連絡を取った証拠があるとして「不法移民を助ける犯罪行為だ」と非難しました。その一方で、検察官個人としてはNGOが連絡をとった理由は難民や移民の命を救うための人道的なものだと確信しているとしています。
     拿捕された船を所有するドイツのNGOは、インターネット上に出した声明で船が捜索を受けていることを認め「命を救うことが最優先であり、現在活動ができないことをとても残念に感じている」とコメントしています。』

     

     このニュースで出てくるドイツのNGOの手法は、公海上で難民を待ち受け、イタリアに輸送するという手法です。拿捕されたドイツのNGOの手法は悪質です。なぜならば、欧州はダブリン協定という国際協定で、難民が最初に到着した国で申請して受け入れることが義務付けられているからです。その結果、イタリア政府の財政が圧迫され、イタリア人の行政サービスが削られます。

     イタリアは、EUに加盟していますので、マーストリヒト条約によって、政府の負債対GDP比率3%以下を義務付けられています。自国以外の難民受け入れを義務付けられ、難民に対して財政支出する一方、政府の負債対GDP比率3%以下という制約がある以上、イタリア市民の行政サービスを削らなければなりません。

     ドイツのメルケル首相や、フランスのマクロン大統領は、イタリアに対して「もっと努力しろ!」とでもいうのでしょうか?グローバリズムの発想とは、シュンゲン協定、ダブリン協定を前提として、技術力の高いかつインフラが進んだドイツらと関税という盾なしで競争し、EUに加盟することで自国で法律も作れず、結果は自己責任ですというのがグローバリズムの発想。

     「人の移動の自由」が正当化され、難民と言えども、自由に欧州に受け入れるべきだとする発想です。その結果、自国民が行政サービスを削られる、低賃金労働者として採用される難民の人々と、賃金競争に晒される。こういう結果も、「自己責任です!」ということでグローバリズムでは善とされるのです。

     

     もっともドイツのNGOは、上述を隠します。表面的には「密航してくる移民の生命を助けるという人道的な観点から、密航業者と連携している」と主張するでしょう。とはいえ、そうした動きはリビアの密航業者のビジネスに加担していることに変わりなく、「ビジネスで利益が出ればよいのでは?」と密航業者の「利益」を膨らませる手助けをしていることになるのです。

     

     ドイツのNGOという偽善者(敢えてこう言わせていただきます!)に対して、「待った!」をかけたのは、イタリア政府という国家権力でした。

     15世紀〜16世紀にかけて、世界では奴隷貿易が普通に行われる中、来日してきたポルトガル人のキリスト教の普及活動の陰で、密貿易が行われ、日本人を奴隷として海外に売り飛ばす習慣を、罪悪感を持たないキリシタン大名らが加担して、そうした文化を持ち込んだことに「待った!」をかけたのが、豊臣秀吉でした。

     

     密航者たちの生命の安全に配慮して人道主義に基づいて密航業者と連絡を取ったドイツNGOと、国家権力を用いてグローバリズムのアフリカ人密航を人道主義に基づいて助けようとしてNGO船を拿捕したイタリア政府、どちらが正しいのでしょうか?

     

     また、長崎を中心に、ポルトガル人から大量の武器・火薬や、当時では珍しい文化をもたらす一方、人身売買を公然と行っていることを何とも思わなかったキリシタン大名やその日本人仲介人らと、日本人の人身売買に怒り狂ってキリシタンを激しく弾圧した豊臣秀吉、どちらが正しいのでしょうか?

     

     「南蛮貿易」の話でいえば、自由に貿易をしていれば、西洋の文化や物資や知識などが日本に入ってくることで、日本を豊かにした面もあるでしょう。一方で、「ヒト」の国境を越えた商売の推進を規制するためには、豊臣秀吉による国家権力による規制が必要だったとも言えるわけです。

     欧州の場合は、ダブリン協定、シュンゲン協定という国際協定に加え、「多文化主義」「人道主義」という思想を盾にして、「人の移動の自由」が肯定されて、リビアの密航業者の利益に加担しているのです。

     

     

     というわけで、今日は「16世紀の日本人奴隷」について取り上げ、豊臣秀吉がなぜキリシタンを弾圧したか?について触れました。最終的には「価値観」の問題になるとはいえ、「グローバリズムは自由であり、自由であるから善なのです!」という竹中平蔵らが、もっともらしくTVマスコミで発言することに、違和感を覚えます。「グローバリズムが自由だから正しく、規制は悪!」とする論説が、欺瞞に満ちているということも、こうした歴史から学べると思うのであります。


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