"中国のGDPは必ず7%前後になる"の不思議

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    JUGEMテーマ:中国ニュース

     

     今日は7/18に掲載された毎日新聞の記事「中国GDP6.9%増 金融リスク警戒 当局引き締め」について取り上げ、中国のGDPが常に7%前後になってしまう背景について述べます。

     

    記事の概要は以下の通りです。

    『毎日新聞

    【北京・赤間清広】中国経済が安定飛行に入っている。17日発表された今年4〜6月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比6.9%増と1〜3月期から横ばいだった。習近平指導部は今秋の党大会に向け経済の安定を演出しているが、足元では膨らむ金融リスクの抑制に神経をとがらせている。

     「上半期の国民経済は着実な前進をとげ、経済目標の達成に向けた確かな基礎を築いた」。中国国家統計局の邢志宏報道官は17日の記者会見で強い自信を示した。

     上半期は個人消費など内需が改善したほか、輸出も大幅に伸びた。政府主導のインフラ投資が景気を底上げしている面は否めないが、減速基調が続いた中国経済が持ち直しているのは間違いない。

     しかし、市場では「下半期は経済の減速が避けられない」との見方が広がる。景気をあおってきた当局がここにきて不動産や金融分野の引き締めにかじを切っているためだ。

     「運用期間2カ月なら利回りは4.8%、4カ月なら5.2%」。中国経済の中心地、上海。街のいたるところに資産運用商品「理財」の看板が目立つ。

     当局は市場に大量のマネーを供給する一方で、国内資産の流出を防ぐため海外投資を厳しく規制している。行き場を失ったマネーは有利な運用先を求め、高利回りの理財に殺到している。(後略)』

     

     

     「理財」という言葉、皆さん聞きなれないと思います。これは中国国内で販売されている高利回りの資産運用商品です。

    野村證券の用語解説を下記の通り記載します。

    『中国国内で販売されている高利回りの資産運用商品。元本保証されていないものも多い。「理財」は中国語で資産運用を指す。
    上限規制がある中国の預金金利より高い利回りが提示されていることから、中国国内の投資家や国有企業などの巨額の資金が流入している。
    国債や社債などの安定的な資産のほか、銀行の正規融資を受けられない中国の中小企業や不動産開発会社、地方政府などに対し資金を供給し、投融資先の債券や貸出債権を小口化して販売するなど、シャドーバンキングの代表的な商品となっている。
    理財商品の債務不履行(デフォルト)等をきっかけにシャドーバンキングの資金の流れが止まり、中国の実体経済に波及するリスクが懸念されている。』

     

     上記野村証券の用語解説の通り、「理財」は中国語で元本保証されていないものがほとんどの資産運用商品を指します。日本と異なり、国民皆保険制度がない中国では、万一の病気などのアクシデントに備える意味でも、銀行預金ではなくこの「理財」という資産運用商品にお金を突っ込む人は多いです。

     ですが、理財商品の債務不履行(デフォルト)事件をきっかけに、資金の流れが止まって中国の実体経済に対する波及リスクを指摘する声があります。習近平はバブルを恐れ、見せしめに理財商品をデフォルトさせたこともありました。そうしたこともあり、上記記事のような「金融リスク警戒」といった論説になっているのでしょう。

     

     最近の中国経済は民間の投資・消費が縮小し、あまり伸びなくなってきています。その民間投資の縮小分を政府主導でインフラ投資で底上げしようとしています。マクロ経済的には、財政出動をしていて、正しい政策をやっており、変な話ですが日本が見習う点は多いです。

     

     毎日新聞の記事にある「中国経済が安定期に入る」という言い方、これは聞こえはいいかもしれません。中国のGDPは、月末閉めてからたったの2週間程度で速報値が出ます。(因みに日本のGDPは、1次速報、2次速報、確報値と、確報値が出るまでに2か月程度の時間がかかっています。)

     わずか2週間程度で出される速報値の6.9%増という数字自体怪しいということはさておき、経済が安定期に入るということであれば6.9%なんて高い成長はあり得ないです。欧米先進国並みの3%くらいとかなら、安定期に入ったといえるでしょう。

     

     とはいえ、もし3%だった場合、習近平は2010年時点で、目標に掲げた10年間で2020年までにGDPを倍にするという目標が達成できなくなってしまうため、GDP成長率は常に7%前後でなければなりません。

     

     ぜひ、電卓をたたいて皆様にご確認いただきたいのですが、1.07を10乗しますと、2以上になります。よく資産運用の世界で、元金を10年で倍にするためには、何%の利回りで資産運用しなければならないでしょう?というような問いかけがあります。答えは7%です。

     投資元金を7%で10年間運用を続けますと、元金は2倍になります。

     

     というわけで、習近平は10年でGDPを2倍にすると公言していますので、実体経済がどうであろうと、必ず中国の経済成長率は7%前後で発表されます。おそらく目標の2020年まで必ず7%前後となるでしょう。

     下記のグラフは毎日新聞の記事の抜粋なのですが、ずっと7%前後の経済成長率が続いています。

     

     

    (出典:毎日新聞の記事)

     

     記事では、中国の家計当局が、上半期の国民経済は着実に前進を遂げ、経済目標達成に向けた確かな基礎を築いたと自信を示しています。では、AIIB(アジアインフラ投資開発銀行)や一帯一路は、何のためにやるのでしょう?

     中国は、国内の供給能力が、ものすごい過剰な状態(デフレギャップ=「需要<供給」の状態)になっています。供給した製品あるいは過剰な供給力そのもの(設備)の使い道がないため、AIIBやら一帯一路といった戦略を打ち出しているのです。

     

     とはいえ、そうした政策の方向性・考え方は正しいです。なぜならば、AIIBや一帯一路で西側の国々にインフラ投資をして、そのインフラ誰が作るんですか?となれば、中国企業が作ることになるでしょう。中国は政府支出を増やすだけでなく、インフラ整備を通じた民間の政府支出増に力を入れようとしており、こうした政策は中国の経済成長(=GDP成長)に繋がります。

     こうした中国政府のこのような戦略的にやっている点については、日本も見習うべきだと考えます。

     

     中国経済について、2017年の下期に懸念することがあるとすれば、中国国内の不動産市況です。下記はSANKEI.BIZの記事の抜粋です。

    『SANKEI.BIZ 2017.4.8 16:03 中国の不動産バブル「なかなか崩壊しない」逆に危惧する声 経済発展の未来を奪う金融機関

    中国では以前から、不動産バブルの崩壊を憂慮し、Xデーの到来に戦々恐々としている人が多い一方で、「バブルがなかなか崩壊しない」という現実を逆に危惧してやまない声もある。

    いわゆる「不動産バブルによる中国経済の人質論」というものだ。例えば、昨年9月15日付の中国青年報に、社会科学院の魯洲研究員が登場して、「不動産市場は中国の実体経済を確実に人質に取ってしまった」と論じたのが一例である。あるいは今年3月に、香港環球経済通信社の首席経済学者である江濡山氏が「不動産は経済だけでなく政府と民衆をも人質に取った」と訴えている。

    「不動産が中国経済を人質にとってダメにした」という彼らの論調の根拠は、バブルが膨らんできている中で、中国経済に占める不動産業と不動産投資の比重が、あまりにも大きくなりすぎたということである。

    2016年、中国の国内総生産(GDP)に占める不動産投資額の比率は何と23・7%(国際通貨基金試算)に上っている。日本の場合、同じ16年における不動産投資の総額はせいぜい4兆円程度で、GDPの1%にも満たない。この対比から見ても、中国における不動産業の異常な肥大さがよく分かる。

    不動産業がそこまで肥大化してしまうと、それが伝統的な製造業やIT産業などの新興産業の生存と発展の余地を奪ってしまう。問題をさらに深刻化させているのは、産業の「血液」ともいうべき銀行からの融資も、もっぱら、不動産市場へと流れていくことである。(後略)』

     

     上記記事の通り、不動産への投資額がGDPの23.7%を占め、猛烈に不動産価格が高騰しています。

     この高騰をどこかで止めるべきなのですが、中国政府が歯止めをかけないため、不動産価格が人民が反乱を起こすレベルにまで上昇し、一般人は買えないレベルになってしまっているのです。そのため、どこかのタイミングで不動産は引締めせざるを得ないと思います。

     ただ、日本のバブル退治のように、1992年に実施した土地の総量規制など、急激な引締めをしない政策手法は賢いとも言えます。

     ですが、中国の不動産市況を含め、中国経済は引き続き注視していく必要があると思います。

     

     

     というわけで、今日は中国のGDPが、必ず7%前後になってしまう理由をご説明しました。


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