財務省の役人は、なぜ緊縮財政なのか?

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    JUGEMテーマ:プライマリーバランス

     

     今日は、日本経済新聞の7/5付の記事「自民2回生”財政黒字化撤回を”規律派とさや当て」という記事を取り上げ、なぜ財務省の役人が緊縮財政の考え方なのか?について論じたいと思います。

     

     記事の概要は次の通りです。

    『日本経済新聞 2017/7/5 22:52 自民2回生”財政黒字化撤回を”規律派とさや当て

    財政政策をめぐる自民党内の議論が活発になってきた。当選2回の衆院議員グループは5日、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標を取り下げるよう政府に提言した。一方、財政規律を重んじる野田毅税制調査会最高顧問らも勉強会をつくり賛同者の獲得に動く。消費増税の是非の判断も控え、さや当てが始まっている。

    提言は同党衆院の2回生約100人のうち28人の連名。呼びかけ人代表の安藤裕氏らが首相官邸で萩生田光一官房副長官に提言書を渡した。

    経済成長を優先するため、赤字を気にせず公共事業や教育分野の歳出を思いきって増やすよう求めた。19年10月に予定する10%への消費増税の凍結に加え、5%への減税検討も訴えた。家庭の教育費の負担を軽くするため、教育国債の創設も提案した。安藤氏は「今はデフレを脱却できるかどうかの分かれ道。財政出動が必要だ」と強調する。

    党内では吉田博美参院幹事長や西田昌司参院議員らのグループも4月、PB黒字化の撤回を求める提言を参院約100人の連名で政府に出した。財政再建より経済成長を重視する安倍晋三首相の援軍が増えている。

    一方、財政規律派は野田氏を会長とする勉強会を5月に立ち上げた。これまでに2度会合を開き、石破茂前地方創生相や野田聖子元総務会長らベテランも多く出席した。事務局を務める村上誠一郎元行革相は「金融緩和や財政出動に頼るアベノミクスは行き詰まった。早く現実路線に転換しないといけない」と話す。

    政府は6月にまとめた経済財政運営の基本方針(骨太の方針)にPB目標と並んで国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率を下げる目標を掲げ、経済重視の姿勢を打ち出した。来年にはPB目標を堅持するかどうかや消費増税の是非を判断する見通しだ。』

     

     上記の通り、自民党の当選2回の衆院議員グループ28人が7/5(水)、「日本経済を成長路線に乗せると同時に財政再建を果たすのに必要な財政政策に関する提言書」を官邸と自民党執行部に手渡しました。

     

     まず、財政政策に関する提言書の内容について、

    ●プライマリーバランス黒字化目標の撤回

    ●消費増税10%(2019年10月予定)は凍結 できれば減税

    ●公共事業・教育支出といった投資系の支出を拡大してデフレ脱却

    という内容になっており、非常に真っ当な提言です。

     

     なぜ、自民党議員の2回生がこんなことをしているのか?理由は日本にはプライマリーバランス黒字化目標が今も残っています。2017年骨太方針の中でも、閣議決定でプライマリーバランス黒字化目標が入ってしまっているのです。

     

     1990年の半ば頃の時点で、日本の高齢化が始まっていて、社会保障支出が増えていくことは、誰の目にも明らかでした。社会保障支出の具体的な内容は、介護医療年金です。

     

     当時は既にバブルが崩壊しており、総需要=GDPが足りなかったという状況でした。その状況で社会保障支出が増えていくということ、これを放っておけばよかったのです。そうすれば、社会保障支出=需要=GDPですので、もしかしたら、需要増=GDP増=経済成長となって、デフレが勝手に脱却できていた可能性がありました。

     

     ところが財務省の人たちは、上記のような考えをしませんでした。

    ●これから社会保障支出が増えていく

    ●まず絶対的に増えていく社会保障支出の拡大を抑制する

    ●抑制しきれない分を、他の予算を削って、なお埋まらない分を増税する

     

     この発想、まさに家計分野・お小遣い帳の発想です。この発想で、公共投資・防衛費・科学技術予算・教育支出、全部削られました。社会保障支出は増大していきますが、これも抑制されました。さらには消費増税(3%→5%)を実施。

     これが今の財務省のスタイル・発想・考え方なのですが、1990年代からずっと続いています。

     要は、政府から出ていくものを削減して、財源は増税でという発想です。

     

     出ていく方として高齢化が進む日本にとって社会保障が増えるのは仕方がないけど、抑制させてもらう。さらに増税して余暇の予算をカットする、こんなノリで緊縮財政をやってきました。

     その結果、どうなったでしょうか?

     

     1998年から日本のデフレ化が本格的に始まったのです。

     1990年代、その思想に基づいて始まったのが、1997年の橋本内閣の緊縮財政。消費増税を実施し、公共投資削減を開始して、そこからデフレになりました。

     

     社会保障支出は、何もしなければ普通に日本は毎年1.2兆円ずつ増えていきます。3年間で3.6兆円増えます。ところがこれを3年間で1.5兆円に圧縮しろ!として、今やっています。

     2015年に介護報酬が削減され、2016年度に診療報酬が削減され、介護の現場・医療の現場が地獄と化しています。

     2018年度は、介護報酬と医療報酬の同時改定が行われる予定であり、また抑制することを財務省は狙っています。

     

     公共投資についていえば、安倍政権は増やしているという印象をお持ちの読者もおられるでしょう。

     実際はまったく増やしていません。2014年度は、公共投資を増やし、名目GDPで1.9%増を果たし、税収も6.9%増収しました。

     ところが、2015年度、2016年度と削減して、2016年4月〜2017年3月で見て、公共投資の額は2013年度を下回りました。

     

     このようにして複数年計画で家計簿と同じように「赤字は悪!将来世代にツケを残す!財政を立て直さなければ!」という発想で緊縮財政をやってきた結果、どうなったかと言えば、みんなどんどん貧乏になっていき、インフラはボロボロになり、防衛力は中国との軍事バランスが壊れているくらい弱体化し、社会保障の部分も医療・介護が崩れかかっているのです。

     科学技術でも、論文の引用件数は世界第10位。以前は5位でした。もはや科学技術大国ではありません。

     教育の現場も荒廃しており、めちゃくちゃな国家になっていくことでしょう。要は発展途上国化です。

     

     このすべての原因は、財務省の緊縮財政主義、プライマリーバランス黒字化に代表される家計簿財政、これが原因です。

     

     国は家計とは違います。ほとんどの人は、家計を中心に考え、家計が大きくなったのが国家と考えている人が多いと思いますが、実際は通貨発行権があるから家計簿と同じではありません。

     

     財務省は同じように勘違いをしています。要は支出が増えるのであれば、歳入を増やすか他の支出を削減するしかないのでは?という発想しか持っていません。

     

     

     というわけで、今日はなぜ財務省の役人が緊縮財政なのか?ということについて論じました。家計簿と同じように国家を考え、プライマリーバランス黒字化目標に拘ることの愚かさを指摘いたしました。

     日本がデフレを脱却するために必要なことは、このプライマリーバランス黒字化目標を破棄しないと話になりません。

     プライマリーバランス黒字化目標が、内閣に閣議決定されているため、すべての予算がこれに縛られて影響を受けてしまっているのです。

     まず、プライマリーバランス黒字化目標を破棄した上で、消費税は減税し、更には財政出拡大が必要です。公共投資だけやれ!とは言いません。宇宙開発でも教育費充実でも医療介護充実でも防衛強化でも何でも、全部やりましょう!

     それらをやらなければ、普通に小国化、発展途上国化し、2040年頃には中国のGDPは日本の10倍に達して、軍事費は20倍くらいの差が付くことになるでしょう。そうなったとき、日本は普通に中国の属国化するしかないと思うのです。

     そのような日本を将来世代に引き渡すことこそ、ツケを残すことになるものと、私は思うのであります。


    コメント
    全く仰る通りなのですが、私の疑問は、日本きっての優秀頭脳(の筈の)集団の財務省が、なぜお小遣い帳会計脳味噌なのか、というところです。
    まさか、ですが、彼らは複式簿記などの教育の機会に恵まれず、更に悪い事に、自らの受けた教育は全宇宙を網羅する全能の原理である、という認識なのでしょうか?

    財務官僚は民間の経営者をヘッドハンティングしましょう!
    • 吉住公洋
    • 2018/09/26 2:48 AM
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