もやし価格から考える日本の総ブラック企業化と独占禁止法の問題点

0

    JUGEMテーマ:経済全般

     

     今日は家計を助けるもやしの値段について意見いたします。

     

     

     

    1.困窮するもやし生産者

     

     スーパーに行ったとき、一番安いのが「もやし」です。その値段が安すぎるとして、もやしを作る団体がスーパーなどに値上げを求めています。理由は生産している人が大変な苦労をしているからです。

     

     これ、とんでもない話です。まず原料(緑豆価格)が高騰しています。にもかかわらず、もやし生産者がそれを値段に乗せられません。基本的に赤字です。

     下表は、もやし生産者協会からの抜粋資料ですが、緑豆価格が2005年の約3倍にまで上昇しているのに、小売価格は2005年比で約10%下落しています。

     

     当然、もやし生産者は値上げできなければ基本的に赤字になります。赤字が続けば当たり前ですが、儲からないので廃業します。もともと500社くらいしかなかったもやし生産業者が、もう100社消えました。

     本来は、もやし生産者が利益を乗せて売るのが正しいです。ところが、今一袋15円で売られている。これは不当廉売と言わざるを得ません。

     

     小売店のスーパーが客寄せのために「もやし15円です!」と主婦に訴え、赤字で売ります。スーパーとしては「もやしで赤字を出しても、他の商品で黒字になるからそれで問題なし!」という考え方で営業していると思われますが、これ不当廉売で独占禁止法違反です。

     

     15円でスーパーで売られるということは、スーパーは、もやしの生産者に圧力を掛けます。もやしの生産者は「本来そんな要求を受けていないが、取引先を失うよりはいいでしょう!」ということで赤字でも売る。結果、スーパーが貧乏になってもやし生産者も貧乏になります。

     

     

     

    2.つながっている国民経済

     

     スーパーで買う側は安いからいいかもしれませんが、忘れてはいけないこと、それは買う側も生産者なのです。皆さんがもやしを買う時に使うお金はどこから出てきたでしょうか?それは、本人や家族が稼いだ所得になります。

     その所得は、所得=販売価格×販売数量で決まります。もやし生産者やスーパーにもやしを安く売らせて、「私は得した!」と思っても、ご主人の所得が減ることになりませんでしょうか?

     もっとわかりやすく言えば、もやし生産者が、赤字で売らされて所得がないのに、そういう貧乏なもやし生産者がスーパーに行ったらどうでしょうか?絶対にスーパーで他の物を安く買う、値下げしたものしか買わない、今までよりも個数を減らして買う、ってことにならないでしょうか?廃業して所得が無くなってしまえば、絶対に物を買わないですね。

     

     私たちは、国民経済がつながっているということを知るべきです。私たちは消費者でもありますが、生産者でもあるのです。生産者=消費者ですし、GDP3面等価の原則でも、生産の合計=消費(=支出)の合計=所得の合計です。

     よく生産者と消費者を分けようとしますが、国民経済の概念では分けてはいけません。同じです。もし、安く売れば消費者利益になるかもしれませんが、同時に生産者の損になります。

     

     

     「不当に安く売る」は、不当廉売で独占禁止法に違反します。本来は、もやし生産者の皆さんは、スーパーマーケットでもやしが15円で売っているのを見かけたら、公正取引委員会に訴えるべきです。ところが、そういうことをやると取引を切られるのでは?ということで、生き残るために我慢をする。だからダメなのです。

     本来は、もやし生産者の方々は、カルテルを結んで一斉に値上げをするべきです。500社程度しかないので、簡単にできそうな気がします。とはいえ、こうした動きも独占禁止法違反になります。

     

     

     

    3.独占禁止法の問題点

     

     日本の独占禁止法は、第一条が、
    「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする」

    となっています。

     

     しかしながら、現実には「一般消費者の利益を確保する」ということに、やたらと重点が置かれています。「価格を引き下げることが善」というコンセプトになっているのです。

     スーパーのような大手流通業(イオンなど)の事業支配力が強くなりすぎて、納入業者や運送業者はコストが上がっている(もやし生産者で言えば緑豆価格高騰・人件費上昇、運送業者で言えば石油価格上昇のサーチャージ・人手不足による人件費高騰)にも関わらず、サービス価格、卸売価格に転嫁できていません。

     

     デフレの国にとっての独占禁止法は、「一般消費者の利益を確保すること」より「雇用や国民の実質所得の水準を高めること」に重点を置くべきだと思うのです。例えば、スーパーがもやし生産者に事業支配力を活用し、価格引き上げを認めない場合、「独占禁止法違反」とする必要があるのです。

     

     ところで、本ブログ読者の皆さんの中には、「なぜもやしだけが?」と思われる方も居られるかもしれません。

     もやしは、非常に特殊な商品で、天候に関係なく、緑豆を買って工場の中で生産できる唯一の野菜です。そのため、他の野菜と異なり、安定供給ができます。結果、値下げ圧力があります。天候不順だからとか日照不足だからとか、ないのです。

     厳密には、冬は暖房コストが上がるから、その分はコストを上げないといけないのですが、実際は転嫁できていないという状況です。その上、緑豆価格の上昇が価格反映できないとなれば、もやし生産者は全滅してしまうでしょう。

     

     私たち消費者である買う側もいろいろ考える必要があります。

     デフレだから所得がない、所得が伸び悩む、だから安いもやしを歓迎する人は多いでしょう。ところが、その分巡り巡って自分もダメージを受けるのがデフレです。よく家電メーカーのCMで「いいものを安く!」というセリフがありますが、これがダメなのです。適正ないい製品には、適正な価格を払うということをしなければ、デフレは解消しません。

     

     本のオンライン販売で言えば、本を買う際、当日配送をしたとします。そのサービスはとても便利です。でもちゃんと当日配送という便利なサービスの料金を取るべきです。そして運送会社の従業員に還元すべきです。

     でも競争が厳しいから、競争に生き残るために見えない形で、タダで当日配送をやっているというのが現状です。

     こうした過剰サービスを過剰に安く売るのが当たり前となっていて、これは日本の総ブラック企業化に拍車をかけるだけです。懸命に働いても安い所得にしかならないわけですから。

     

     直近では運送会社の最大手のヤマト運輸が値上げしましたが、これは素晴らしい決断です。「値上げを認めなければ取引しません!」という姿勢、これでいいのです。なぜならば人手不足になっているわけですから。

     そして、ヤマト運輸が値上げしたら、他の運送会社も便乗して値上げしましたが、これも正しいです。

     

     本来は運送会社もカルテルを結べばよく、すべての運送業が一斉に値上げすればいいわけですが、それ自体が独占禁止法違反になってしまうため、ヤマト運輸がきっかけで、横目を見ながら値上げに追随するという方法しかないかもしれません。

     ともあれ、運送業界は値上げしました。他の苦しい業界、もやし生産者も値上げをすればよいと思います。なぜならば、運送会社が値上げをするということは、当然コストが上がります。もやし生産者は、運送コスト上昇を理由に値上げをしなければなりません。そうしたらスーパーだって単価が上がったということで小売価格を上げなければなりません。

     

     

     

    4.政府がすべき2つのこと

     

     とはいえ、読者の皆様の中には、そうやって高い値段でもやしを買うようになっても、国民経済がつながっているといっても、自分のところにその分帰ってくるのか?という不安もあるでしょう。気持ちはよくわかります。

     

     この解決策として、政府は次の2つをやるべきです。

     

     一つ目は価格統制を認めることです。カルテルを認め、独占禁止法を緩めて、政府が買う時に高く物を買うのです。ところが安倍政権は逆をやって、医療サービス・介護サービス・公共事業など、支出削減をしています。

     安倍政権には「削ってどうするの?」と問いただしたい。介護の現場なんてひどい職場です。何しろ虐待暴力が当たり前になっていて、理由は介護報酬を引き下げているからです。介護業界で働く人は、「一生貧困でいろ!」と言っているようなもんで、政府はとんでもないことをやっています。

     かつて介護は成長産業などと言っていましたが、介護報酬を削減しているのでは名目需要が減るわけで、需要を削っておいて成長産業とか言われても、名目需要が削られては、所得も削られるわけで、好き好んで就職する人は少なく、就業しても離職率が高くなるに決まっています。

     アナリストやエコノミストも、成長産業とは、実質需要も名目需要もどちらの需要も、需要>供給となっている分野が成長産業だということを理解していないのでは?と思うことがあります。

     

     二つ目は政府がお金を使うことです。とにかく簡単なのは「お金を使うことです!」「高く買うことがいいことです!」というマインド転換をやらなければいけないのですが、国民や企業にとってデフレ環境では、物・サービスを安く買い、床屋に行く回数を減らす、国内旅行行くの減らすなどの節約をして貯金を増やすことが合理的なので、無理なわけです。

     このような「合成の誤謬」の状態を打破できるのは、政府だけであり、政府自らが「お金を使う」ことを率先してやる必要があります。単なる財政出動なので、難しい話ではありません。お金をどれだけ発行したって政府は問題ありません。にもかかわらず、その圧倒的に強い政府が緊縮・節約をやっているわけで、これでは日本が総ブラック企業化するに決まっているのです。

     

     

     というわけで、もやし生産者が困窮していること、独占禁止法の問題点を指摘させていただき、政府がとるべき2つのことを最後に示しました。安倍政権は長期政権となり、強い政権ですので、本来ならば財政出動をやろうと思えばやれます。にもかかわらず、骨太方針で閣議決定にプライマリーバランス黒字化目標が残ってしまいました。これでは追加的な支出をする際に、他の予算を削るか増税するということになり、”行って来い”になってしまうのです。プライマリーバランス黒字化目標が残っている以上、追加的財政出動は難しいと思われます。私の相場観としては、まだまだデフレ脱却から遠い。少しでも多くの国民が正しい真実を知り、正しい解決策を知るということがなければ、日本はひたすらデフレが続き、発展途上国に落ちぶれていくでしょう。そうしたことこそ、将来世代にツケを残すことになるのではないでしょうかと、改めて申し添えたいと思います。

     


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031 
    << August 2018 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    recent comment

    • 生乳流通改革という欺瞞と、イギリスのミルク・マーケティング・ボード
      富山の大学生 (06/05)
    • オランダ人の物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネス
      師子乃 (10/02)
    • オランダ人の物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネス
      mikky (12/01)

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM