フランス大統領選挙で垣間見る「フランス国民の分裂」と「欧州経済」

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    さて、フランス大統領選挙の決選投票で大勢がもう間もなく判明します。

     

    下馬評では、マクロン前経済大臣が優勢と伝えられています。

    マクロンが勝つと、自由貿易・規制緩和・緊縮財政が推進されます。

    ルペンが勝つと、EU離脱という「革命」的な方向に進み、保護貿易・規制強化・財政出動へという流れになるものと思われます。

     

     イギリスのメイ首相も、アメリカのトランプ大統領も、「保護貿易」「規制強化」「財政出動」を推進しようとし、または既に実行に移しています。

     

    <2017年4月23日第1回フランス大統領選挙で得票1位だった県(出典:AFP通信)>

     

     4月23日に行われた第1回フランス大統領選挙では、候補者で50%の過半数の票を得ることができず、このたびの決選投票に持ち込まれました。上述はAFP通信社からの出典ですが、フランスの東北部と南部の地方はルペンが勝ち、それ以外の地方とパリではマクロンが勝利しました。

     

     この第1回フランス大統領選挙にでは、パリでは、マクロン候補が得票率36%、ルペン候補はたったの5%とマクロン候補が圧勝しています。

     また、人口が多い上位10都市で見た場合、ルペンが所属する国民戦線の地盤のニース、マルセイユ以外では圧倒的にマクロンの圧勝です。フランスの東北部は、炭鉱業が衰退して地盤沈下が著しい工業地帯で、アメリカのラストベルト地帯(イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州の工業地帯)と同じ錆びれた製造業地帯と言ってもよいでしょう。この地域では、ルペン候補が圧勝しました。

     

     マクロン候補が勝てば、「自由貿易」「規制緩和」「緊縮財政」が推進されます。この場合、競争激化に加えて緊縮財政で政府部門もお金を使わなくなることから、デフレが促進され、物・サービスの値段はさらに下がり、結果的に労働者全体の賃金は下がっていくことになるでしょう。

     ルペン候補が勝てば、EU離脱となって「保護貿易」「規制強化」「積極的な財政出動」が推進されるでしょう。この場合、イギリスのメイ首相、アメリカのトランプ大統領と同様に、自国民ファーストというコンセプトで「保護貿易」「規制強化」「積極的な財政出動」の組み合わせにより、フランスは内需拡大となって国力は強化されます。

     

     グローバリズムを推進すると、物・人・カネの国境を越えた移動の自由を推進することで、国民が「所得階層別」「地域別」「属性」で分断され、国民統合が壊されていきます。産業革命による生産性の飛躍的な向上を興したイギリスを中心とした最初のグローバリズムでは、この壊された国民統合を復活させたのは、戦争(第一次世界大戦)でした。

    今回のグローバリズムへの反応がどのような結末を迎えるか?興味を持っております。

     

     株式市場では既にマクロン候補が勝つことを織り込んでいるという報道が見受けられますが、マクロン候補が勝つ場合、EUに踏みとどまるということで環境が激変しないということから、株価は短期的中期的に上昇するでしょう。とはいえ、「自由貿易」「規制緩和」「緊縮財政」が推進されることになるため、デフレの方向に進みます。スロートレード(各国がデフレで購買力が下がり、物が買えなくなるという事象を通じて貿易総量が減ること)が加速されることになると思われます。

    ルペン候補が勝つ場合、EU離脱で環境が激変して先行き不透明として短期的に株価は下落するでしょう。とはいえ、「保護貿易」「規制強化」「積極的な財政出動」が推進されればフランスの国内需要が高くなり、中長期的には世界経済に好影響をもたらす可能性が高いです。内需が強くなり、国民の購買力が上昇すれば、他国からの輸入も増えます。結果、日本経済にとっても長期的にはいい方向に向かうと思っています。

     

     短期的に最もダメージを受けるのは、輸出に依存する国家です。例えばドイツは輸出依存度は高く「輸出額÷名目GDP」が40%を超えますが、日本は「輸出額÷名目GDP」は16%程度です。もともと日本はGDPの60%を国内需要が占めています。米国も国内需要国にもかかわらずトランプ大統領は、更に国内需要を盛り上げる政策を打っています。即ち日米は共に外需依存度が低く国内需要国なのですが、ドイツやスイス、アジアで言えば中国・韓国といった国は、外需依存度が高い国であるため、影響を受けるでしょう。こうした国々も自国民ファーストで保護主義をとれば国力が強化されますが、おそらくフランス以外の国力の弱い国々への輸出を増やそうとするので、いつまで経っても輸出依存度が高いまま、相対的に国力は弱いままです。

     

     外需依存度が高い国=国力が弱い国です。ドイツが強い国かと言えば、EUとユーロ通貨統一とシュンゲン協定によって、ドイツ以外のEUの国々から貿易黒字を積み上げているというだけの話。EU離脱やユーロ離脱がドミノ倒しのように始まった場合、外需依存のドイツはダメージを受けることになるでしょう。

     

     それでもドイツは高速道路などのインフラが進んでいるので、EU域内の国々と比較すれば、生産性が高い国であることには変わりません。生産性の高い国が、生産性の低い国の関税を認めなければ、水は高いところから低い所へ流れるがごとく、絶対に貿易黒字は積み上がります。ユーロ通貨統一は、単に通貨が統一されただけでなく、ユーロ加盟国間では関税がかけられない、金融政策が自由に打てない(公定歩合の上げ下げなど)といった問題点があるのですが、ドイツはユーロ通貨統一ということで各国の主権(関税や金融政策)を縛っているため、対ドイツの貿易赤字を減らすべく関税をかけたくても、EUに加盟してユーロに加盟している以上、関税をかけることができません。

     

     そんなわけで、今日はフランス大統領選挙について私見を述べさせていただき、今後の株式相場や欧州経済がどうなるか?見通しを述べさせていただきました。


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