一律10万円給付によるマネーストック増加の理由とリフレ派のウソ

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     今日は先月9/22に日銀の黒田総裁が菅総理と会談した内容について触れ、「一律10万円給付によるマネーストックの増加とリフレ派のウソ」と題して論説します。

     

     下記は日本経済新聞の記事です。

    『日本経済新聞 2020/09/24 日銀総裁、菅首相と会談 企業支援「必要なら延長」

     日銀の黒田東彦総裁は23日、菅義偉首相と首相官邸で会談した。菅氏と首相就任後に会談するのは初めて。終了後、記者団に「首相とは政府と日銀が十分に意思疎通し、しっかり連携して政策運営していくことで一致した」と説明した。同日夕の記者会見では企業の資金繰り支援について「必要と判断すれば期限を延長することも十分あり得る」と語った。

     黒田総裁は安倍晋三前首相のもとで2013年3月に就任し、安倍氏と定期的に経済・金融情勢の意見交換をしてきた。黒田総裁によると、菅首相との会談も同様の趣旨で、日銀の金融政策運営についても説明した。

     政府と日銀は13年1月に共同声明をまとめた。日銀は物価上昇率2%の目標に向けた金融緩和、政府は機動的な経済政策や持続可能な財政の運営をうたった。

     黒田総裁は政府・日銀の役割分担で「経済に大きなプラスの効果があった」と指摘し、「今後もこうした考えに沿って政策を行うことに変わりはない」と述べた。同日夕の記者会見でも政府との協調関係の継続について「新首相と合意できたのは良かった」と語った。会見では、新型コロナウイルスで苦しむ企業の資金繰りを支援する総枠約130兆円規模の特別措置を延長する可能性に改めて言及。現在の期限は21年3月末。「3月末ギリギリまで待つのではなく、適切な期間内に決定する」との考えを示した。』

     

     上記は先月の黒田総裁と菅総理が会談をしたという記事です。

     

     企業の資金繰り支援については必要と判断すれば、資金繰りを支援する総枠約130兆円規模の特別措置を延長することも十分にあり得るとしています。

     

     私は資金繰り支援の期限延長は大切なことであり、これは引き続き金融緩和を継続しておけばいいだけの話です。

     

     この手の話題の際、よくある話として、中央銀行は政府とは独立していなければならないとする言説がありますが、あれは全くのウソで、経世済民が叶うのであれば、中央銀行は政府と独立する必要はなく、むしろ政府の言うことを聞く人材を中央銀行の総裁に据え、政府と一緒にアコードしておけばいいのであって、日銀と政府が仲が悪いというのではアコードができなくなります。

     

     即ち、日銀は日本経済の足を引っ張ることができます。デフレであるにもかかわらず金融引締めをすれば、さらにデフレが深刻化します。

     

     このように経済の足を引っ張ることはできても、日本経済をプッシュすることは不可能です。

     

     ここにリフレ派が主張する日銀は政府とアコードして金融緩和をしておけさえすれば、デフレが脱却できるという言説のウソがあるのです。

     

     デフレからインフレになるためには、モノ・サービスとお金の交換が多くなされなければなりません。日本円という通貨が、株式や土地や外貨と交換されても、それらはモノ・サービスとの交換ではないため、GDPにカウントされず、経済成長に資することはないのです。

     

     日銀はデフレのときは、ヒモみたいなもので、ヒモは引っ張ることはできても、押すことはできません。日銀というか、中央銀行というのは、その程度の存在であって、「足を引っ張ることだけはやめてね!」と政府が日銀にお願いをして、日銀が「はい!わかりました!」と仲良くアコードできていれば終わります。

     

     この程度のことをいちいちニュースで取り上げることなど不要なくらいです。

     

     そしてこれを取り上げて大きく報じることこそ、リフレ派の人らの功罪といえます。

     

     リフレ派の人らは、日銀がヒモではなく、硬い棒のように思っていて、アベノミクスは金融緩和さえやれば成功できるというイメージを醸成しました。

     

     ところが金融緩和をやっても、硬い棒で日本経済を押すかの如くの効果は得られず、ヒモのように柔らかくて日本経済を押してプッシュすることはできませんでした。

     

     デフレというのは貨幣量が少ないからデフレになっているのではなく、需要の過不足がデフレを生じさせるものであり、どれだけ金融緩和だけをやったところで、日銀当座預金が増えるだけで日本経済は全くよくなりませんでした。

     

     しかしながらこれは全く当たり前のこと、いわば当然の帰結です。

     

     日銀当座預金というのは、私たち日本国民や民間企業が使うことはできない口座であり、日銀当座預金をマネーストック、即ち現金、預金にするためには、政府が日銀当座預金を使って民間からモノ・サービスをするしかありません。

     

     あるいはコロナ禍という状況では現金を給付金という形で、ばら撒くのも効果があります。

     

    <マネタリーベース・マネーストック・貨幣乗数の推移>

    (出典:日本銀行)

     

     上記の赤い矢印と○をしているところを注目ください。

     

     まず言葉の定義を簡単に解説しますと、マネタリーベースというのは、「マネーストック+日銀当座預金」と思ってください。またマネーストックというのは、「現金+預金+硬貨」と思ってください。貨幣乗数とは、「マネーストック/マネタリーベース=貨幣乗数」で算出されます。

     

     その上でオレンジ色のマネタリーベースのグラフを見てみましょう。

     

     2013年12月に安倍政権が誕生して金融緩和をはじめ、毎年80兆円の日銀当座預金を増やしてきました(オレンジ色のグラフ)。途中、2016年からカーブが緩やかになっていますが、黒田日銀総裁が国債が枯渇するのを防ぐため、オーバーシュートコミットメントを導入して国債の買取額を縮小したために緩やかになっています。

     

     一方で黄色のグラフはマネーストックですが、マネタリーベースを増やしても、マネーストックは増えません。

     

     これは繰り返しになりますが、日銀当座預金をどれだけ増やしても、マネーストックが増えるはずがありません。政府が財政出動してこそ、モノ・サービスの対価として民間が政府から政府小切手を受け取り、政府小切手を従業員の給料や下請け業者の支払いに充当させるために銀行に行って預金に変えます。この政府小切手を銀行に持ち込んだ時に初めてマネーストックが増加するのです。

     

     リフレ派の人らは、これを理解しておらず、デフレは貨幣量が少ないという理解であるのが間違っています。

     

     貨幣量をどれだけ増やそうとしてマネタリーベースを増加させても、モノ・サービスとお金のやり取りが増えるわけではありません。このことをアクティブマネーが増えているわけではないといういい方もしますが、GDPというのはアクティブマネーが増加すればするほど増えます。

     

     1万円札は、単に1万円ではなく、10人のコミュニティの中で、モノ・サービスとお金の交換を行えば、1万円札は10万円の所得を生み出します。1人が1万円のモノ・サービスを生産し、各人が消費してコミュニティの中で回せば、1万円の生産=1万円の消費=1万円の所得が10回行われ、10人の経済圏の中で、10万円の生産=10万円の消費=10万円の所得となることは、GDP3面等価の原則の鉄板原則です。もし10人コミュニティだけではなく、これが100人になれば、100万円の生産=100万円の消費=100万円の所得となり、アクティブマネーは10倍に増加したことになります。

     

     このようにして経済成長というのは果たされるのです。

     

     そう考えますと上記グラフで、マネタリーベースが増加する右肩の上がり方に比べて、マネーストックの上がり方が鈍いのは当然の帰結といえるのです。

     

     また、丸くした部分は、コロナ禍で今年2020/4/27に第1次補正予算によって、25.7兆円のうち12.1兆円の財源が一律10万円給付に充当されました。このとき、12.1兆円のほとんどが受領されたため、現金と預金が増加したのです。

     

     一律10万円給付をすれば、マネーストックが増えることも、これまた当たり前の話で、何しろマネーストックは現金と預金と硬貨の合計だからです。

     

     一方でマネーストックが増えても、アクティブマネーが増加しなければGDPは増えず、デフレ脱却が果たせません。

     

     それどころか消費増税という消費に対する罰則課税を課している状況では、積極的に消費を増やそうという人はいないのです。たとえ生活が苦しい人が10万円使ったとしても、毎月給料が増えることが確信できない状況で、毎月の消費を前月比で増やそうという人はいないのです。

     

     この当たり前のことですら、リフレ派の人は理解していないように私には思えます。

     

     

     というわけで今日は「一律10万円給付によるマネーストック増加の理由とリフレ派のウソ」と題して論説しました。

     日銀は金融緩和だけを継続すればいいだけの話であり、邪魔さえしなければいい程度の話なのですが、これを大きく取り上げることで、財政出動をしなくてもデフレ脱却できるかの如く報じるマスコミの責任は非常に重いと思っております。

     アベノミクスの失敗は、まさにそこにあると言えると思いますし、財政出動をやらずに緊縮財政に転換して、硬い棒で日本経済をプッシュするどころか、棒で日本経済の足を引っ張ったのが消費増税でした。

     コロナ禍以前の2019年10月〜12月の実質GDPは▲7.1%と既にボロボロであったことを踏まえれば、消費に対する罰則課税というつっかえ棒を取り除くべきで、そうすればアクティブマネーが増加に転じるでしょうし、合わせて政府が公共事業を増加させれば、日本経済を棒でプッシュすることに繋がり、アクティブマネー増加に拍車を掛けます。

     そう考えれば、早く消費税減税の議論がなされるべきであると同時に財政出動も急ぐべきであろうと、私は改めて思うのです。

     

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