中国の環球時報が報じる米国債保有縮小と米国のデフォルトリスク

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     私は2018/12/21に「米国債残高1位の中国は米国債売却で反撃するという言説について」という記事を書き、中国が保有する米国債売却をテーマとした記事を書きました。

     直近でロイター通信でこの話題について報じられたため、今日は改めてこの問題を取り上げ、「中国の環球時報が報じる米国債保有縮小と米国のデフォルトリスク」と題して論じたいと思います。

     

     まずはロイター通信の記事をご紹介します。

    『ロイター通信 2020/09/04 06:54 中国、米国債保有を段階的に縮小も 関係悪化で=環球時報

     [上海 4日 ロイター] - 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は専門家の話として、米中間の対立激化を受けて、中国が米国債の保有を段階的に削減する可能性がある、と報じた。

     上海財経大学のXi Junyang教授は、「中国は通常の環境下でも、米国債の保有残高を8000億ドル程度にまで徐々に引き下げるだろう」との見方を示した。詳細な時間軸は示さなかった。その上で、「もちろん、全額売却するのは軍事衝突の発生など極端な場合のみだ」とした。

     中国は米国債の保有残高で世界2位。6月の残高は1兆0740億ドルで、5月の1兆0830億ドルから減少した。

     中国は今年に入って、米国債保有残高を一貫して縮小させている。

     保有残高が8000億ドルとなれば、現在の水準から25%以上圧縮することになる。アナリストは、中国が米国債の大量売却に動くことを「核オプション」と呼び、世界金融市場の動揺の引き金になると指摘している。

     また同紙は、米国債売却のもう1つの理由として、米国のデフォルトリスクを挙げる。米国の政府債務の対国内総生産(GDP)比率は、第二次世界大戦終戦以降で最大の水準である約100%まで急上昇しており、世界的に安全ラインとされる60%を大きく超過している。

     

     上記ニュースでは、環球時報というメディアがあります。

     

     環球時報は中国共産党機関紙の人民日報系のメディアで、その環球時報が中国の米国債保有縮小を報じているとしています。

     

     米中覇権戦争は貿易戦争から金融戦争へと展開しており、米国議会、トランプ政権は、中国をウイグル人、香港の民主化デモの弾圧の問題で、香港自治法を制定し、中国に対して厳しい制裁措置を講じています。

     

     金融制裁では、米国株式市場に上場する中国系企業に対して上場廃止することや、中国の5大銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行、中国交通銀行、中国農業銀行)を中心とした中国国内の銀行に対して、ドル決済システムのSWIFTから追放することなども検討されています。

     

     こうした米国の対応に対して、中国の対抗策として、中国が大量に保有する米国債の売却というものがあります。

     

     この米国債の売却にどういう目的があるのか?といえば、米国金利を急騰させることが目的と推察しています。

     

     米国債とは債券であるため、債権を大量に売却すれば債券価格は下落する一方で、金利は逆に上昇します。

     

     そして米国金利の指標になっているのが米国債の金利であるため、米国の金利が上昇することになります。

     

     中国共産党の狙いは、国債金利を急騰させることで米国政府の借り入れコストを増大させ、米国企業の設備投資の資金調達コストや、個人が住宅を購入する際の住宅ローンの金利を上昇させ、米国の経済成長を抑制させることが狙いではないかと考えられます。

     

     こうした見方は以前からも指摘されていたことで、中国が米国債を大量売却するのでは?という言説の論拠でもあります。

     

     しかしながら現実的には中国が米国債を売却してもマーケットにほとんど影響を与えていません。ウォールストリートジャーナルが2019/05/14に報じた記事では、仮に中国が大量の米国債を売却したとしても、市場が巨大マーケットであるため、何ら影響はないとしています。

     

     下記は米国の10年物国債のチャートです。

     

    <10年物米国債の月足のチャート>

    (出典:SBI証券)

     

     上記は10年物の米国債の金利のチャートですが、金利は上昇するどころか、0.5%〜1.0%のレンジにまで下落しています。

     

     この右肩下がりのチャートはトランプ大統領が政策金利を引き下げるようFRBに圧力をかけ、米国債の金利も下落していて、10年物の米国債に限らず、5年物も30年物も米国債の金利は下落しています。

     

     ロイター通信の記事では、中国が今年2020年に入ってから少しずつ米国債を売却し、5月の1兆830億ドルから、6月は1兆740億ドル減少したことが報じられていますが、チャートを見る限り、債券市場のマーケットへの影響は限定的だったといえます。

     

     しかしながら過去から、中国が米国債を大量売却するシナリオ自体、可能性は低いものの手段としてあり得るという言説がありました。

     

     私はそうした言説に対して否定的な立場で論説を展開してきましたが、それには理由があります。

     

     まず中国の米国債売却は、中国の外貨準備高が減少することを意味します。

     

     中国は、内需型経済の米国や日本と異なり、輸出がGDPの5割以上を占める輸出国で、技術を盗んで自国の工場で安く生産して輸出で貿易黒字を積み上げてきました。

     

     その貿易黒字はどうするのか?といえば米国債で運用します。

     

     なぜ米国債で運用するかといえば、銀行預金の場合、万一経営破綻した場合にペイオフ制度で守られるのは1000万円程度であるためです。

     

     米国債は銀行預金よりも安全なのです。

     

     そのため、米国債で主に運用し、外貨準備高が積み上がります。

     

     中国の人民元は決して強い通貨ではなく、ハードカレンシーではないため、米国債を売却して外貨準備高を減少させることは、ある意味で自分の首を自分で絞めるのと同じです。

     

     米国債以外に運用するとして米ドルキャッシュを持っていたとしても、めぼしい安全な投資先がないため、米国債を買うしかありません。結局売却して米ドルのキャッシュを手にしたとしても、米国債を買わざるを得ないという現実の問題があるのです。

     

     また米国債売却によって米国金利を上昇させて経済成長を抑制させようとして、仮に米国金利が上昇すれば中国が保有する米国債に評価損が発生します。

     

     国債を売却するということは、債券市場で売り注文を出すことに他ならず、それは自動的に売れるのではなく、買い手がいて始めて売れるものです。即ち現実的な売買は、買い手と売り手がマッチするまでは少しずつ売却していくことになるため、一回の大量売り注文で、一回の売買が成立して売れるということは現実的にはあり得ません。

     

     さらに仮に米国債が下落したとなれば、今度はドルが売られてドル安になるシナリオもあり、この場合は人民元高となります。

     

     輸出立国にとって自国通貨高は非常に困る話であり、中国の場合はトランプ政権による追加関税をかけられてただでさえ苦境に陥っています。

     

     米国との貿易で稼ごうにも関税をかけられて対米輸出利益は減少してきた状況で、人民元高となれば輸出利益はさらに減少します。

     

     関税と人民元高は、中国にとって大きなダメージになることでしょう。

     

     そもそも米国サイドからみても、中国が米国債を売却しても何ら困ることはありません。例えばゼロ金利に苦しむ日本の金融機関とか、為替リスクはあっても金利が上昇すれば米国債を喜んで買うでしょうし、日本の金融機関のみならず、欧州各国やアジアなど、米国債を買いたい国はいくらでも存在します。

     

     ロイター通信の記事の最後には、米国債のデフォルトリスクについて触れていますが、これについては論外で、米国にとって自国通貨の米ドル建ての国債の残高が増大したとしても、FRBが買い取ればいいだけの話であり、米国のデフォルトリスクなどそもそも存在しません。

     

     これは日本の借金問題1000兆円の話と全く同じであり、環球時報が指摘しているとしても、ロイター通信が報じているとしても、話にならないくらいアホらしい指摘です。

     

     

     というわけで今日は「中国の環球時報が報じる米国債保有縮小と米国のデフォルトリスク」と題して論説しました。

     

     

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