医療崩壊を防ぐために鉄道崩壊は許されるのか?

0

    JUGEMテーマ:道路・交通のフリートーク

    JUGEMテーマ:公共事業の経済効果

    JUGEMテーマ:デフレ・インフレ

    JUGEMテーマ:政界批判

     

     今日は2020年4月〜6月期の連結決算発表が出揃った鉄道事業各社JR上場14社と主な私鉄14社の決算結果を取り上げ、「医療崩壊を防ぐために鉄道崩壊は許されるのか?」と題して論説します。

     

     下記は日本経済新聞の記事です。

    『日本経済新聞 2020/08/12 22:00 鉄道大手18社、全社が最終赤字 4〜6月期

     鉄道大手18社の2020年4〜6月期の連結決算が12日に出そろい、全社が最終赤字だった。主要18社が四半期決算でそろって赤字になるのは初めてで、赤字幅は合計で約4900億円。特に私鉄はJRに比べて鉄道以外の収益比率が高い。新型コロナウイルスが広がり、鉄道と同様に固定費比率が高いホテルなどのレジャー事業も大打撃を受けた。

     東急が12日に発表した20年4〜6月期の連結決算は、売上高が前年同期比25%減の2097億円、最終損益が201億円の赤字(前年同期は163億円の黒字)だった。外出自粛が響き、不動産以外の鉄道やレジャーなど主要事業がそろって営業赤字だった。同日に発表した阪急阪神ホールディングスも鉄道やホテル、開幕延期したプロ野球の収益が落ち込み、189億円の最終赤字(前年同期は213億円の黒字)だった。

     私鉄の鉄道収入は前年同期に比べ40〜55%程度落ち込み、新幹線を持つJR東日本(6割強)ほどではないが傷は深い。中でも空港路線を主力とする京成電鉄(55%)や京浜急行電鉄(50%)、特急の観光利用が多い近鉄グループホールディングス(52%)や小田急電鉄(50%)は外出自粛の影響が大きい。各社の鉄道事業の損益分岐点比率は8〜9割程度とみられ、利益を確保できなかった。

     鉄道以上に落ち込みが激しかったのがホテルなどのレジャー関連だ。私鉄14社の関連事業の営業損失を合計すると900億円強の赤字。休業中の施設の一部の固定費を特別損失に計上するケースも多く、実際は鉄道を中心とした運輸事業(1000億円強の赤字)を上回る規模だ。関連事業は6〜9割程度の減収となった企業が多く、運輸より大きい。

     プリンスホテルなどを運営し、通常時のレジャー事業の売上高が全体の4割程度を占める西武ホールディングスの最終赤字額は287億円と、私鉄で最大だった。同じく4割程度の近鉄GHDも、傘下の旅行会社の売り上げが激減して最終赤字は2番目に大きい239億円だった。

     レジャー関連は鉄道ほどではないものの、ホテルを代表に固定費比率が高い。ある私鉄幹部は「ホテルの損益分岐点比率は6割程度」と話す。21年3月期通期の業績予想を発表している京急や東武鉄道など3社は、レジャー事業を30億〜170億円の営業赤字と見込んでおり、各社の損益悪化は長引く可能性がある。

     足元ではコロナ後に向けた懸念も浮上している。一つはテレワークの定着による鉄道の採算悪化で、各社で客足の戻りに差がつく可能性もある。都心への通勤・通学客が多い路線を持つある私鉄の幹部は「当社の沿線はテレワークの定着率が高い」と危機感をあらわにする。6月の定期収入を比べると、東急や京王、小田急などは前年同月比3割減で、2割減の東武や西武より回復が鈍い。

     オフィスなど不動産は直近でも業績は底堅く「今のところ大きな解約の動きはない」(東急)という。ただ今後、オフィス縮小が広がり訪日客の減少が続くと、不動産開発やホテルといった今後の投資見直しを迫られるリスクもある。都心から人が離れれば、郊外での沿線開発がより重要になる可能性もある。』

     

     上記の通り、JR上場4社と主な私鉄14社の決算が出そろいましたが、全社が最終赤字となったというニュースです。

     

     18社の全てが最終赤字になった理由は、言うまでもなく旅客需要が激減したためで、在宅ワークの普及、出張自粛で、新型コロナウイルスの影響は長引くとの見方が強くあります。

     

     国交省のホームページに月毎の鉄道旅客数量、鉄道貨物数量の統計数字が出ておりまして、2020/8/12付で2020年5月までの指標が公表されています。

     

    <鉄道旅客数量の推移(対前年同月比)>

     

     

    <貨物数量の推移(対前年同月比)>

    (出典:e-Stat)

     

     

     上記は旅客数量と貨物数量の月別推移のグラフですが、2020年5月の時点で貨物数量が▲20%台のところ、旅客数量は40台後半のマイナスと落ち込み幅が貨物数量に比べて倍以上と大きいです。

     

     具体的には、2020年4月47.4%(JR4社43.7%、JR以外民鉄53.7%)、2020年5月46.6%(JR4社40.8%、JR以外民鉄56.4%)となっており、最大手のJR東日本は四半期決算としては過去最大の1.535億円の最終赤字を計上しています。

     

     日本モビリティマネジメントという団体が今年4月〜5月の緊急事態宣言中の間にかけて、シンポジウムを実施し、何度も警告と出していたのですが、これは全く予想通りの結果となったといえるでしょう。

     

     今回取り上げたのは大手鉄道事業者ですが、日本経済新聞の記事で取り上げられていない地方の鉄道事業者もたくさんあり、この状況が続くとそうした地方の鉄道事業者だけでなく、上場JR社・民鉄にも倒産が出てくる可能性を否定することはできません。

     

     私はずっと政府補償など何らかの形の支援が必要であるとずっと主張をし続けて参りました。

     

     緊急事態宣言(ロックダウン)を解除したことで、幾分の回復の兆しがあるとはいえ、全く元通りになっていません。このままの状態が続けば、鉄道事業者の経営は厳しいと言わざるを得ないでしょう。

     

     第二波、第三波が来て、冬になって本格的に人の移動量が減るとなれば、経営が持たないという状況になるのは、想像に容易いです。

     

     既に埼玉県では丸建自動車というバス会社が経営破綻していますが、その意味では既に交通崩壊が始まっています。

     

     医療崩壊を防ぐためにロックダウンをすれば、交通が崩壊するということです。

     

     一旦、交通が崩壊してしまえば、崩壊しっ放しで、例えば橋が落ちても復旧できなくて橋が落ちたままとなります。

     

     鉄道会社がなくなれば、2度と鉄道を動かすことはできません。外資などがスポンサーとして入ってきたところで、元通りのサービス(始発時間、終電時間、1時間当たりの本数、快適な鉄道車両を供給するためのメンテナンス投資や新規車両発注など)を提供することはできなくなるでしょう。

     

     都心の鉄道は最悪で上述のサービスレベルを低下した状態で存続したとしても、地方の場合は存続できなくなってそのまま鉄道サービスを再開できないという状況ですらあり得ます。つまり一度崩壊すると後遺障害がずっと残る可能性があるのです。

     

     医療崩壊の場合、コロナ対応できない病床の稼働が低いということでその病床を削減することさえせず温存すれば、医療供給量そのものは、そのまま保持することもあり得ます。

     

     しかしながら交通崩壊はそのままなくなってしまうのです。

     

     アフターコロナのモビリティサービスのレベルが下がれば、長い後遺障害を持つことになります。

     

     そのため、医療崩壊ばかりにフォーカスが当たって報道されていますが、交通崩壊についてももっと真剣に考えて取り上げていかなければならない私は思います。

     

     一般的に鉄道事業者の経営は、人件費、車両購入費、定期メンテナンス費など、固定費の負担が大きく、JR東日本で8割、航空業界でも6割、一般的な製造業で2割〜3割と比べて高い状況にあって、相対的に損益分岐点は左下にシフト(固定費を削減)しにくい業界です。

     

     JR東日本、JR西日本では時間帯別運賃の導入の検討を始めるともいわれているのですが、JR各社は企業努力でそうしたことを検討するとしても、限界があります。

     

     JR東海は一番経営の打撃を受けていますが、都市内交通よりも都市間交通の方がロックダウンの影響が大きかったということでしょう。

     

     上場JR各社は、基礎体力があるからといって支援しなくていいとは言うつもりは全くありませんが、基礎体力のない東京の交通事業者はたくさんあり、大阪市交通局などの地方の鉄道は普通に政府が運営しても何ら問題ありません。

     

     米国の場合、シアトル市は交通機関が全て無料という地域がありますが、警察や軍隊のサービスと同様に、バスや鉄道のサービスも政府が運営するものと位置付けているからと思われます。

     

     日本もかつてJR各社は国鉄で政府が運営していました。日本は民営化をやりすぎ、結果として欧米と比べて政府が小さくなりすぎてしまい、公共交通も民営でやっています。

     

     今こそ、政府の資本を注入しなければ公共サービスは崩壊するでしょう。

     

     そうした警鐘を鳴らしたとしても、プライマリーバランス黒字化や緊縮財政を推進する財務省の連中は、何ら策を打つことはないでしょう。

     

     第2次補正予算31.9兆円のうち、予備費10兆円が計上され、未だ5兆円は使途が決まっていません。日本モビリティ・マネジメントの試算では、3.5兆円資本注入すれば、鉄道以外にも航空業、バス、タクシーなどすべての業界を救うことができるのですが、緊縮財政とプライマリーバランス黒字化が正しいという発想の財務省からみれば、3.5兆円を使うのは惜しいと思っているに違いありません。

     

     

     ということで「医療崩壊を防ぐために鉄道崩壊は許されるのか?」と題して論説しました。

     医療崩壊も大事ですが、交通崩壊もヤバイということがご理解いただけたと思いますし、その交通崩壊も結局は財務省の緊縮財政が導いているということもご理解いただけたものと思います。

     JR東日本では終電時間の繰り上げを検討しているともいわれており、交通サービスのレベルの低下は都市部といえども進行していく可能性がありますが、そうした動向を踏まえますと、やはり民営では限界があります。

     私は政府が交通産業への資本注入を速やかに行うこと、一刻も早くそのことを決断していただきたいと思うのです。

     

    〜関連記事(コロナウイルスによる交通崩壊)〜

    航空業界へ資本注入する世界各国政府と、融資と空港使用料の猶予に留まる日本

    交通崩壊の危機で倒産ラッシュの恐れ

    地域モビリティを守ることなしに地方創生を語るなど寝言同然です!

     

    〜関連記事(コロナウイルスによる交通産業以外の倒産)〜

    新型コロナウイルスの感染拡大で1000超の店舗閉鎖となる外食産業

    ”コロナを機につぶれるべき中小企業は、つぶれろ!”と提言している専門家会議メンバーの小林慶一郎氏

    粗利益補償こそがコロナ対策で一番優れている理由について


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
      12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    27282930   
    << September 2020 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    recent comment

    • 大阪都構想とは大阪市役所を廃止するのではなく大阪市という政令市を廃止することです!
      Ode (09/19)
    • 政治主導よりも官僚主導・族議員の昭和時代に戻ることが日本を強くする
      Ode (09/15)
    • 京都大学の上久保靖彦教授による新型コロナウイルスの日本人集団免疫獲得説について
      Ode (08/25)
    • 最高益となった41社が巣ごもり需要を取り込んだとするどうでもいい報道と粗利益補償の必要性
      Ode (08/21)
    • よくぞ言った!経団連の山内副会長”熊本豪雨災害は一種の人災”発言の真意について!
      Ode (08/04)
    • 日本国民の人命よりも”オリンピック開催”と”財政再建”を優先する安倍政権
      棚木随心 (03/16)
    • 地獄と化した武漢の真実が日本に伝わらない理由(日中記者交換協定について)
      アホでもわかるから書く必要はない (02/04)
    • レバノンのベイルートとビブロス遺跡
      棚木随心 (01/22)
    • 四国新幹線の署名活動について
      ・・・ (12/14)
    • サムスン電子について
      あ (10/20)

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM