南米ウルグアイの85歳のムヒカ元大統領について

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     今日は「南米ウルグアイの85歳のムヒカ元大統領について」と題して論説します。

     

     下記は時事通信の記事です。

    『時事通信 2020/10/21 14:14 「世界一貧しい」元大統領引退 ムヒカ氏、健康理由に―ウルグアイ

     【サンパウロ時事】国のトップに立っても質素な生活を貫き、給与のほとんどを寄付するなど「世界一貧しい大統領」として知られた南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領(85)が20日、上院議員を辞職した。政界からの事実上の引退とみられる。

     ムヒカ氏は上院で「新型コロナウイルス流行が(直接的な)原因だ。高齢と慢性的な免疫疾患に健康が脅かされている」と説明。「政治を捨てるわけではないが、第一線からは去る」と述べた。』

     

     上記の通り、世界で最も貧しい大統領として知られる南米のウルグアイのムヒカ元大統領85歳が、上院議員を辞任して政界からの引退を発表しました。

     

     免疫の持病があるということで、第一線からは離脱するものの、政治活動は続けるとして、新型コロナウイルスパンデミックの影響で議員の辞任を決断したものと考えられます。

     

     2010年〜2015年の間に大統領を務めたこともあるムヒカ氏ですが、大統領に就いていた際、大統領公邸に引っ越さず、畑の近くの小さな平屋小屋で奥さんと暮らし、飛行機の移動もエコノミークラスを利用していたなどの逸話があります。

     

     ムヒカ元大統領の質素ぶりは、MMT理論を理解する私から考えますと、もっと国力の強化をするためにはどうしたらいいのか?という観点の方が大きい話だと考えるのですが、ムヒカ元大統領の思想の根底にあるもの。それは、自分がお金持ちになろうという考えを捨てているという点は、政界に限らず日本の財界も含めて「今だけ、金だけ、自分だけ」という思想と比較すれば、大変すばらしい人格を持った方であると、私は尊敬に値すると思います。

     

     ムヒカ元大統領は、1960年代、軍事独裁政権に対抗する極左ゲリラの創設メンバーの一人として活動して逮捕された李例もありますが、独特の表現と語り口で、政治への参加、民主主義への重要性などを説いてきました。

     

     ”世界で一番貧しい”という称号に対してムヒカ氏は「みんな誤解している。私が思う貧しい人とは、限りない欲を持ち、いくらあっても満足しない人のこと。でも私は少しのものでも満足して生きている。質素なものだけで貧しくない。」と述べています。

     

     仏教では、人間は業に囚われるのが貧しいと解説しています。

     

     日本で考えれば、政治家に限らず、財界やビジネスマン、成長戦略会議メンバーに入っている竹中平蔵氏らを始めとする民間議員、御用学者と呼ばれる経済学者の吉川洋東大名誉教授、土居丈朗慶大教授など、業まみれのおぞましい人間が増加している中で、ムヒカ元大統領の立ち振る舞いは、その反面教師、アンチテーゼといえるのではないでしょうか?

     

     そのムヒカ元大統領は来日したことがあり、月刊誌の文芸春秋で、「日本人への警告」と題して、成長を求めず幸せを追うためには「強欲資本主義と決別せよ!」という論説が掲載されています。

     

     このフレーズは私なりに考えますと、株主尊重の資本主義ではなく、公益資本主義を目指すという考え方に近いと感じられ、賛同できると思っております。

     

     私は、株式投資の対象となる企業について、株主還元を重視しようとする会社、株主対策に重点を置く会社、いずれも投資対象から外れます。

     

     財務分析でもつい売上高営業利益率やROE(株主資本利益率)といった指標に目が行きがちですが、たとえ営業利益率が悪くても、販管費で取引先に優しい会社というのは、いざ自然災害や自分が苦しくなった際にも助けてくれるでしょう。

     

     もし売上高営業利益率を重視して、下請け会社に厳しくカツカツの値段で発注して仕事を出したとしても、下請け会社が体力の温存ができず、いざ何かあっても助けることができません。

     

     このように新型コロナウイルスなどのウイルスパンデミック以外にも、日本は自然災害多発国であり、今後も想定外の大災害が発生しないなど誰も言い切れないわけ国家です。

     

     そう考えますといざという中長期的なことを考えず、目先の販管費を引き下げて営業利益を確保するという経営については、果たしてどうなのか?という疑問を私は持ちます。

     

     ムヒカ元大統領が否定する”強欲資本主義”とは、下請けに厳しくして営業利益を確保して、それを配当や自社株買いで配当還元する経営を指すものと私は思いますし、確かに目先の利益を追い続けるという意味で、ムヒカ元大統領がいう”貧しい人”なのかもしれません。

     

     

     

     というわけで今日は「南米ウルグアイの85歳のムヒカ元大統領について」と題して論説しました。

     

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    中東和平実現に大きな成果を出したトランプ大統領

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       米国では2020/11/03に大統領選挙がありますが、オバマがバイデン不支持に回り、CNNの世論調査では、トランプ大統領とバイデンの差は、4ポイントにまで縮まり、トランプ大統領が追い上げています。

       そんな中、先月8/13、米国のホワイトハウスでイスラエルとUAEの国交正常化をトランプ政権が仲介したことを取り上げ、「中東和平実現に大きな成果を出したトランプ大統領」と題して論説します。

       

       下記は日本経済新聞の記事です。

      『日本経済新聞 2020/08/14 00:54 イスラエル・UAE、国交正常化に合意 米が仲介

      【ワシントン=中村亮、イスタンブール=木寺もも子】米ホワイトハウスは13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化に合意したと発表した。アラブでイスラエルと国交を持つのは3カ国目で、仲介役を果たしたトランプ政権の大きな外交の成果となる。中東で敵対するイランに対する包囲網を強化する。

       米国とイスラエル、UAEの共同声明によると、トランプ大統領が13日に両国首脳と電話協議して合意した。イスラエルとUAEは互いに大使館を設け、大使を任命する。両国の代表団が数週間以内に会談し、投資や安全保障、通信、エネルギー、直行便などの分野で関係を深める合意文書に署名する。イスラエルはヨルダン川西岸の一部の入植地の併合計画を停止する。

       トランプ氏は13日、ホワイトハウスで記者団に対し国交正常化合意について「歴史的」と自賛するとともに、「より平和で安全、繁栄した中東を建設するための重要な一歩だ」と強調した。イスラエルのネタニヤフ首相も13日夜にテレビ演説し「アラブ世界との新たな関係を刻む日だ」と誇った。

       アラブ諸国はイスラエルと対立し、何度も戦火を交えてきた。パレスチナ問題のため、イスラエルとアラブ主要国の国交正常化は極めて難しいとみられてきた。アラブで正式な外交関係を持つのはこれまでにエジプトとヨルダンだけだった。

       イスラエルとUAEの接近のきっかけは共通の敵としてイランが浮上したことだ。イランはミサイル開発や周辺国の武装勢力への支援を通じて中東で影響力を急速に高めたとされる。3カ国の共同声明は「(イスラエルが)さらに別の国とも外交的解決ができると確信している」と明記。サウジアラビアやオマーンなどを念頭に国交正常化を目指す考えを示したのもとみられ、イラン包囲網を形成する狙いがある。

       一方で、パレスチナ自治政府のアッバス議長は声明で合意を「裏切りだ」としてUAEを非難した。イスラム原理主義組織ハマスの報道担当者は「我々を背中から刺す合意だ」と反発した。アラブ諸国がイスラエルに次々と接近する事態をけん制した。』

       

       上記の通り、米国のホワイトハウスで歴史的合意ともいえるイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交の正常化に合意しました。

       

       これがなぜ歴史的合意といえるのか?といえば、イスラエルはアラブ諸国と戦争をしてきた宿敵同士であったからで、それが国交を結び、お互いを国家承認するということで、これまでならあり得ないことだったのですが、そのあり得ないことが実現するという意味で歴史的な合意といえるのです。

       

       トランプ大統領は、これまでの常識を覆したことが数多くありますが、このイスラエルとUAEの国交正常化も常識を覆すほどの素晴らしい成果をあげたともいえます。

       

       今後、国交正常化によってイスラエルとUAEはお互いに大使館と大使を交換し、教育や保険制度や貿易や安全保障など各種分野で相互協力関係が深まっていくことでしょう。

       

       米国メディアでは、反トランプのニューヨークタイムズ、CNNといったメディアも、この件についてはトランプ政権を賞賛しています。

       

       イスラエルの首都テルアビブでは、市庁舎ビルがUAEの国旗の色が点灯され、大変な騒ぎになりました。

       

       もともとアラブ諸国の国で、イスラエルを国家承認している国は少なく、国連加盟国中35か国がイスラエルを未承認とし、今もなお国家承認していません。

       

       35か国の未承認国家のうち、26か国は中東諸国です。

       

       その26か国の中東諸国が、なぜイスラエルを国家承認しないのか?といえば、パレスチナ問題があるからです。

       

       イスラエル対アラブの問題で、イスラエルを国家承認しない35か国は、一方でパレスチナを国家承認しているのですが、今後はこの問題に変化が起きることになります。

       

       アラブ諸国にとってイスラエルという国そのものが脅威で、理由は背後に米国があり、核兵器を保有しているからで、アラブ諸国からすれば地上からイスラエルという国が無くなって欲しいくらい脅威に思っているはずです。

       

       にもかかわらず、アラブ諸国の1つであるUAEがイスラエルと国交を結ぶとはどういうことなのでしょうか?

       

       日本経済新聞の記事にもありますが、イスラエルとUAEが急接近したきっかけは、イランを共通の敵と認識したためで、対イラン包囲網を作るとしています。

       

       そのため、パレスチナはUAEが批判しているものの、他のアラブ諸国のサウジアラビアやオマーンも、この動きに続くのでは?という見通しを報じています。

       

       となればイスラエルはイラン以外の全アラブの国と国交を結んでいくことになるでしょう。

       

       これは今までの常識では考えられないことで、解決不可能といわれた中東和平問題をトランプ政権が成し遂げてしまいました。

       

       この中東和平を実現につながるイスラエルとUAEの国交正常化は、トランプ政権最大の成果といえます。

       

       逆にパレスチナはどうなってしまうでしょうか?

       

       記事では、パレスチナ自治政府のアッバス議長がUAEに対して非難声明を出していますが、パレスチナもアラブ諸国の一つです。

       

       パレスチナはイスラエルと隣り合わせで問題が複雑化しており、長い間このままの状態でした。

       

       パレスチナからすれば味方だと思っていたUAEが敵国のイスラエルと国交を結ぶということなので、裏切られた気持ちになるのも理解ができます。

       

       しかしながらトランプ大統領は、今年2020年1月に、”PEACE TO PROSPERITY"というイスラエルとパレスチナの和平案を策定しています。

       

      <トランプ政権が策定した”PEACE TO PROSPERITY”の表紙>

      (出典:ホワイトハウスのホームページ)

       

       2020年1月にトランプ政権が策定した”PEACE TO PROSPERITY"について報じられた際、客観的にはパレスチナにとっても悪い内容ではないのですが、イスラエル寄りの内容としてメリットがないという論調でした。

       

       パレスチナ自治政府のアッバス議長は、イスラエルと国交を結ぶUAEを非難しましたが、もしパレスチナがトランプ政権が提案した”PEACE TO PROSPERITY"を受け入れれば、パレスチナは貧困から脱出できる可能性があり、イスラエルを相互に国家承認して国交を結ぶというミラクルなシナリオに発展することも十分に考えられます。

       

       その意味でまだ問題は残されているものの、今回のニュースは中東和平実現に大きくつながるビックニュースであると私は思います。

       

       

       というわけで今日は「中東和平実現に大きな成果を出したトランプ大統領」と題して論説しました。


      正式な国家として認められていないパレスチナは、なぜ土地がバラバラなのか?

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         今日は「正式な国家として認められていないパレスチナは、なぜ土地がバラバラなのか?」と題して論説します。

         

         パレスチナとは、そもそもどこにあるでしょうか?ということで、下記の地図を参照ください。

         

        <ガザ地区とヨルダン川西岸地区(オレンジ色の部分)>

         

         上記地図のオレンジ色の部分がパレスチナになります。私は隣国のレバノンとヨルダンを訪れたことがあります。このときの旅行記も過去に記事を書いておりますので、ご興味がある方は、下記を参照ください。

         

        レバノンのベイルートとビブロス遺跡

        ヨルダン訪問記(カタールのドーハ訪問のオマケ付き)

         

         イスラエル、パレスチナと聞くと、多くの人は中東というイメージはあっても、どのような問題を抱えているのか?なぜ、土地がバラバラなのか?ご存知ない方が多いかと思います。

         

         そこで、まず歴史について述べたく思います。

         

         まずパレスチナについてですが、イスラエル領の中で、パレスチナ人が住んでいる一部の土地があり、それがイスラエル領内で土地がバラバラになり、繋がっていないのですが、一つの国になっています。

         

         上記地図のオレンジ色の部分の通り、2つの地域があります。オレンジ色の2つの場所のうち、右側のヨルダン西岸地区の北に接している場所でエルサレムがあり、東側部分の東エルサレムもパレスチナです。

         

         歴史を遡りますと、このエリアは1299年〜1922年までオスマン帝国がこの地域を支配していて、中東エリア全体がオスマン帝国の支配下であり、そこにパレスチナ人だけでなく、ユダヤ人も住んでいましたが、人口的には圧倒的にパレスチナ人が多く住んでいました。

         

         18世紀まで欧州キリスト教社会ではユダヤ人は迫害されていたのですが、そのユダヤ人に大変革となったのが、18世紀末ナポレオンによる国民国家構想により、身分や血統、宗教に関係なく、国民として平等な権利を持つようになり、1791年にはフランスでユダヤ人は市民権が認められます。

         

         19世紀半ば〜後半にかけて、ユダヤ人国家を作る運動=シオニズム運動が起こります。この運動を後押ししたのが、ユダヤ人の富豪らロスチャイルド家などです。

         

         その後、オスマン帝国は第一次世界大戦で敗戦国となり、オスマン帝国が崩壊して、国際連盟が英国に統治を委託することとなり、このエリアが英国の委任統治領となってユダヤ人の入植がすすみました。

         

         その英国の委任統治時代の1937年、パレスチナ人は英国とユダヤ人を攻撃しました。

         

         英国はピール委員会という組織を設立し、パレスチナ人がなぜ英国やユダヤ人を攻撃したのか?何が原因でパレスチナ人はユダヤ人を攻撃するのか?調査をしたところ、将来的にユダヤ人もパレスチナ人も共にこの土地を支配したいと考えていることがわかりました。

         

         仮に英国の統治が終わった場合、ユダヤ人とパレスチナ人のどちらがこの土地を支配して国家を作るのか?その将来の不安があり、パレスチナ人が反乱を起こす動機がわかったため、ピール委員会は1937年、同じ土地に2つの国家を作るという解決方法を提示します。

         

         具体的には、1つの土地を分割して2つの国家にしようとしました。面積的にはパレスチナが80%、残りがイスラエルという案でしたが、イスラエルはこの地にユダヤ人が住むことができる国家が作れるのであればOKとして認めたものの、パレスチナは100%でなければ納得できないとしてこれを拒否し、攻撃を再開します。

         

         そして第二次世界大戦後、1947年に国連が問題解決に乗り出すこととなり、分割案(パレスチナ43%で残りがイスラエル)を双方に提示します。

         

        <1946年の英国委任統治時代のパレスチナの支配エリアと1947年の国連分割決議案>

         

         一方で1948年5月17日にはイスラエルが建国。両国は戦争状態になります。これが第1次中東戦争で、パレスチナ紛争とも呼ばれています。このときパレスチナは、イスラエルを崩壊させようとして他のアラブ諸国を巻き込んで戦いましたが敗れます。

         

         その後も、1956年にスエズ動乱と呼ばれる第2次中東戦争、1967年には第3次中東戦争が勃発しますが、いずれもイスラエル側が勝利します。

         

         戦争に勝利したイスラエル政府は全部自分の領土とすることも可能でしたが、西岸地区とガザ地区はパレスチナに返すこととし、2国化体制にしようとしました。

         

         パレスチナは、これも拒否してその後も局地的なテロが続き、2000年にクリントン大統領の下で、イスラエルのバラク首相、アラファトPLO議長が、米国のキャンプデービッドで会談。パレスチナに合意してもらえるようバラク首相は西岸地区、ガザ地区、東エルサレムもパレスチナの領土でいいと提示しましたが、この案もまとまらず。

         

         8年後の2008年にも話し合いが行われましたが、ここでも合意できませんでした。

         

         もともとはオスマン帝国時代にパレスチナ人が多く住んでいた土地だったのですが、様々な戦争などの経緯を経て、イスラエル人が増え、パレスチナは土地がバラバラになってしまいました。

         

         パレスチナはイスラエルとの戦争で敗れてイスラエルは歩み寄ろうとしたものの、パレスチナはユダヤ人が入植してきたということで、イスラエルとの合意を拒否し続けてきた歴史があり、現在は、難民問題を抱えて貧困にあえいでいる状況にあります。

         

         こうした状況下で2020/01/28、トランプ大統領が新たな案を提示。その貧しさにいるパレスチナが経済繁栄する案が、トランプ大統領の案です。

         

         小さな政府や減税、規制緩和、民間をPPPで活用するという内容で、この案がパレスチナにとってベターか?わかりませんが、貧困にあえぐパレスチナを繁栄させようと考えた案としてトランプ政権が考えたものです。

         

         パレスチナがトランプ政権の提案を受け入れるか?否か?未だ答えは出ていません。

         

         私はかつてヨルダンのアンマンを訪れた時、パレスチナ人のガイドさんにガイドをしてもらったことがあります。トランプ政権の案を受け入れて、貧困化から脱することができることができるならば、そうなって欲しいと私は思います。

         

         

         

         というわけで「正式な国家として認められていないパレスチナは、なぜ土地がバラバラなのか?」と題して論説しました。


        レバノンのデフォルトと過去デフォルトした国の事例について

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           私は昨年末と今年の正月にかけて、レバノンに行ってきましたが、そのレバノンがデフォルトしました。

           そこで今日は「レバノンのデフォルトと過去デフォルトした国の事例について」と題して論説します。

           

           下記は日本経済新聞の記事です。

          『日本経済新聞 2020/03/08 03:14 レバノン、初のデフォルトへ 首相「国債返済を延

           【イスタンブール=木寺もも子】中東の小国レバノンのディアブ首相は7日、まもなく償還期限を迎える12億ドル(約1260億円)の外貨建て国債について、支払いを延期すると表明した。経済の低迷や放漫な歳出で長らく財政危機に陥っていた。政府は債務再編による財政再建を目指すが、すでに破綻寸前の経済や政治混乱がさらに悪化する恐れがある。

           返済期限は9日に迫っており、初めての債務不履行(デフォルト)となる。ディアブ氏は7日夜のテレビ演説で「これ以上の経済の消耗を防ぎ、国益を守るためには返済を延期するしかない」と述べた。債務再編に向けてすべての債権者との交渉に臨むという。

           ディアブ氏は、レバノンの政府債務が900億ドルと国内総生産(GDP)の170%に達し、2020年中に計46億ドルの債務と利息が返済期限を迎えると明らかにした。

           日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の逃亡先であるレバノンは1990年まで続いた内戦後、復興のため多額の資金を外国から借り入れた。18の宗派が共存するため議席や政治ポストなどを分け合う仕組みを取り入れると、各派閥が抱える公的部門が肥大化し、財政赤字も拡大した。

           借金を補ってきた経済成長も、2011年から始まった隣国のシリア内戦や近年の原油安による湾岸経済の低迷などで失速し、歳入の半分を利払いに費やす状態に陥った。18年の経済成長率は0.2%だった。

           デフォルトは時間の問題だとみられ、ドルに対して固定している通貨は19年9月以降、闇市場の実勢レートで半分ほどになった。資金不足から銀行は預金者に対して引き出しを制限し、多くの企業などが休業に追い込まれる状況が続く。政府は無理に返済すれば破綻寸前の国民経済がもたないと判断した。

           もっともデフォルトになれば外国からの資金調達はさらに難しくなる。大手銀バンク・アウディのマルワン・バラカット・チーフエコノミストは「歳出の段階的削減や徴税機能の強化、政府財産の売却などの抜本的な改革を含む債務再編案が必要だ」と指摘する。約3カ月の政治空白を経て1月に発足したばかりのディアブ政権が指導力を発揮できるかは不透明だ。

           レバノンではイラン革命防衛隊との関係が深いイスラム教シーア派政党ヒズボラが政権に参画していることで、欧米などから支援も受けにくい。ヒズボラは国際通貨基金(IMF)への支援要請に反対の立場だ。

           一方、経済規模の小さいレバノンのデフォルトによる国際金融市場への影響は限定的だとの見方が多い。国債の大半は国内銀行が保有する。レバノン銀への外国銀行の与信残高も40億ドル程度と小規模にとどまる。

           ただ、新型コロナウイルス感染拡大で新興国から投機マネーを引き揚げる動きが出ている。レバノンのデフォルトが投資家心理に働き、慢性的な経常赤字や財政赤字を抱える他の新興国にも影響を与える恐れがある。』

           

           上記記事の通り、レバノンのディアブ首相が債務不履行を発表しました。金額は12億ドルで、日本円で約1200億円ほどの外貨建て債務の支払い期限を延期すると発表。これをもってデフォルトとなります。

           

           通常、国家がデフォルトした場合、まず通貨が大暴落します。レバノンの通貨は、レバノン・ポンドといって、変動相場制ではなく米ドルに固定されて1ドル=1,500レバノンポンドとなっていました。

           

           レバノンは、市民による反政府デモが起きていたのですが、香港のような民主化を求めたデモではなく、経済破綻しているということでデモが続いていたのです。

           

           具体的には、銀行からのキャッシュの引き出しを制限するということで、カルロス・ゴーン氏ですら、レバノンに逃げ込んだものの、ATMからお金を引き出すのに制限がかかっています。

           

           そのため、お金が引き出せないということがきっかけで、市民の不満が爆発してデモが発生しました。

           

          <レバノンのベイルート市内で銃弾を受けたホテル>

          IMG_2310.JPG

          (出典:2020/01/01に杉っ子が撮影)

           

           

           

           ここ数年間、レバノン政府は赤字体質が続いていたため、財政を立て直そうとしていましたが、立て直すことができないまま2020年1月に新政権が誕生しました。

           

           レバノンは自国でモノが作れません。私がレバノンに往訪した際についてくださったガイドのアリー・ハムイエさんによれば、レバノン政府は産業の育成をせず、金融業や不動産業にばかり力を入れてきたとのこと。農業や工業などの産業の育成を蔑ろにしたことで、自国民に必要な食糧や日用品などすべて海外から輸入せざるを得なかったと仰っていました。

           

           実際にレバノンは輸入品に依存していまして、輸入するには外貨が必要です。外貨が無くなってしまった場合、輸入ができず国民生活は困窮します。

           

           そうやって外貨建て債務が積み重なった場合、たとえレバノン・ポンドをレバノン中央銀行が通貨発行して返済しようとしても、外貨建て債務の場合は、その返済のために通貨発行したレバノン・ポンドを外貨に交換しなければならず、レバノン・ポンドを外貨に交換するというオペレーションそのものが、さらなるレバノン・ポンド安となり、実質的な外貨建て債務がさらに負担が大きくなるという事象に繋がります。

           

           なので新政権は、通貨発行しても返済できないということでギブアップしたといえるでしょう。

           

           これはアルゼンチンやアイスランドが過去デフォルトしたのと似ています。アルゼンチンの場合も外貨建て債務、具体的には米ドル建て債務でデフォルトしました。

           

           アルゼンチン政府は、多額のドル建て債務を返済しようとした場合、大量のペソ売りドル買いをしなければドル建て債務の返済はできませんが、ペソ売りドル買いが、ペソ安ドル高につながり、ペソをたくさん発行してもペソ安となってしまって返済ができなくなってしまいます。

           

           アイスランドの場合も同様で、ユーロ建て債務が返済できずデフォルトしました。本来、アイスランド政府は自国通貨のクロ―ネという通貨を発行できますが、アルゼンチンのケースと同様に、クローネ売りユーロ買いが、クローネ安ユーロ高となることで、クローネを大量に発行してもクローネ安となって返済ができなくなってしまうのです。

           

           アイスランドと国名が似ているアイルランドは、ユーロに加盟していて、ユーロ建て債務が返済できずにデフォルトしています。外貨建て債務でデフォルトしたアルゼンチンやアイスランドと異なり、アイルランドはユーロに加盟しているために自国通貨がありません。しかもデフォルト直前まで財政黒字を計上していました。

           

           アイルランドの場合は、外貨建て債務ではなく共通通貨建て債務によるデフォルトで、ユーロに加盟している国は、たとえドイツであってもデフォルトすることはあり得ます。

           

           アイルランドのケースでは、金融機関がユーロ建て債務を抱えたまま破綻し、アイルランド政府が救済したことでユーロ建て債務を抱えました。いくらアイルランド政府が財政黒字だったとしても、金融機関がユーロ建て債務を抱えたまま経営破綻して、それを救済するとなれば、たちまち共通通貨建て債務を抱えて、政府の財政が破綻することがあり得るのです。

           

           よく政府の負債といえば、「”いわゆる”国の借金」などといって、負債対GDP比率が238%の日本は将来破綻するなどという言説がありますが、日本政府の借金は、レバノンや、上述でご紹介したアルゼンチン、アイスランド、アイルランドのケースと異なり、100%円建て債務であるため、何ら問題がなく、財政破綻する確率は”極めて低い”ではなく、財政破綻する確率は”ゼロ”です。

           

           

           というわけで今日は「レバノンのデフォルトと過去デフォルトした国の事例について」について論説しました。

           読者の皆様のおかれましては、日本が財政破綻することはあり得ないということを十分にご承知かと思います。

           一方で、レバノンのデフォルトをきっかけに、日本の財政破綻を煽る言説が蔓延る可能性があると思っております。

           どうか読者のみなさまにおかれましては、日本は100%財政破綻しないし、100%内国建て債務なので物理的に財政破綻することはあり得ず、日本政府の財政について心配する必要がないことをお伝えいただきたく思います。

           

           

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          レバノンのベイルートとビブロス遺跡

          主権国通貨ルーブルを持つロシアがデフォルトした理由
          憲法改正で財政規律条項を入れる動きに反対!

          「プライマリーバランスの黒字化」を破棄せよ!(アイスランドのデフォルトについて)


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