レバノンのデフォルトと過去デフォルトした国の事例について

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     私は昨年末と今年の正月にかけて、レバノンに行ってきましたが、そのレバノンがデフォルトしました。

     そこで今日は「レバノンのデフォルトと過去デフォルトした国の事例について」と題して論説します。

     

     下記は日本経済新聞の記事です。

    『日本経済新聞 2020/03/08 03:14 レバノン、初のデフォルトへ 首相「国債返済を延

     【イスタンブール=木寺もも子】中東の小国レバノンのディアブ首相は7日、まもなく償還期限を迎える12億ドル(約1260億円)の外貨建て国債について、支払いを延期すると表明した。経済の低迷や放漫な歳出で長らく財政危機に陥っていた。政府は債務再編による財政再建を目指すが、すでに破綻寸前の経済や政治混乱がさらに悪化する恐れがある。

     返済期限は9日に迫っており、初めての債務不履行(デフォルト)となる。ディアブ氏は7日夜のテレビ演説で「これ以上の経済の消耗を防ぎ、国益を守るためには返済を延期するしかない」と述べた。債務再編に向けてすべての債権者との交渉に臨むという。

     ディアブ氏は、レバノンの政府債務が900億ドルと国内総生産(GDP)の170%に達し、2020年中に計46億ドルの債務と利息が返済期限を迎えると明らかにした。

     日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の逃亡先であるレバノンは1990年まで続いた内戦後、復興のため多額の資金を外国から借り入れた。18の宗派が共存するため議席や政治ポストなどを分け合う仕組みを取り入れると、各派閥が抱える公的部門が肥大化し、財政赤字も拡大した。

     借金を補ってきた経済成長も、2011年から始まった隣国のシリア内戦や近年の原油安による湾岸経済の低迷などで失速し、歳入の半分を利払いに費やす状態に陥った。18年の経済成長率は0.2%だった。

     デフォルトは時間の問題だとみられ、ドルに対して固定している通貨は19年9月以降、闇市場の実勢レートで半分ほどになった。資金不足から銀行は預金者に対して引き出しを制限し、多くの企業などが休業に追い込まれる状況が続く。政府は無理に返済すれば破綻寸前の国民経済がもたないと判断した。

     もっともデフォルトになれば外国からの資金調達はさらに難しくなる。大手銀バンク・アウディのマルワン・バラカット・チーフエコノミストは「歳出の段階的削減や徴税機能の強化、政府財産の売却などの抜本的な改革を含む債務再編案が必要だ」と指摘する。約3カ月の政治空白を経て1月に発足したばかりのディアブ政権が指導力を発揮できるかは不透明だ。

     レバノンではイラン革命防衛隊との関係が深いイスラム教シーア派政党ヒズボラが政権に参画していることで、欧米などから支援も受けにくい。ヒズボラは国際通貨基金(IMF)への支援要請に反対の立場だ。

     一方、経済規模の小さいレバノンのデフォルトによる国際金融市場への影響は限定的だとの見方が多い。国債の大半は国内銀行が保有する。レバノン銀への外国銀行の与信残高も40億ドル程度と小規模にとどまる。

     ただ、新型コロナウイルス感染拡大で新興国から投機マネーを引き揚げる動きが出ている。レバノンのデフォルトが投資家心理に働き、慢性的な経常赤字や財政赤字を抱える他の新興国にも影響を与える恐れがある。』

     

     上記記事の通り、レバノンのディアブ首相が債務不履行を発表しました。金額は12億ドルで、日本円で約1200億円ほどの外貨建て債務の支払い期限を延期すると発表。これをもってデフォルトとなります。

     

     通常、国家がデフォルトした場合、まず通貨が大暴落します。レバノンの通貨は、レバノン・ポンドといって、変動相場制ではなく米ドルに固定されて1ドル=1,500レバノンポンドとなっていました。

     

     レバノンは、市民による反政府デモが起きていたのですが、香港のような民主化を求めたデモではなく、経済破綻しているということでデモが続いていたのです。

     

     具体的には、銀行からのキャッシュの引き出しを制限するということで、カルロス・ゴーン氏ですら、レバノンに逃げ込んだものの、ATMからお金を引き出すのに制限がかかっています。

     

     そのため、お金が引き出せないということがきっかけで、市民の不満が爆発してデモが発生しました。

     

    <レバノンのベイルート市内で銃弾を受けたホテル>

    IMG_2310.JPG

    (出典:2020/01/01に杉っ子が撮影)

     

     

     

     ここ数年間、レバノン政府は赤字体質が続いていたため、財政を立て直そうとしていましたが、立て直すことができないまま2020年1月に新政権が誕生しました。

     

     レバノンは自国でモノが作れません。私がレバノンに往訪した際についてくださったガイドのアリー・ハムイエさんによれば、レバノン政府は産業の育成をせず、金融業や不動産業にばかり力を入れてきたとのこと。農業や工業などの産業の育成を蔑ろにしたことで、自国民に必要な食糧や日用品などすべて海外から輸入せざるを得なかったと仰っていました。

     

     実際にレバノンは輸入品に依存していまして、輸入するには外貨が必要です。外貨が無くなってしまった場合、輸入ができず国民生活は困窮します。

     

     そうやって外貨建て債務が積み重なった場合、たとえレバノン・ポンドをレバノン中央銀行が通貨発行して返済しようとしても、外貨建て債務の場合は、その返済のために通貨発行したレバノン・ポンドを外貨に交換しなければならず、レバノン・ポンドを外貨に交換するというオペレーションそのものが、さらなるレバノン・ポンド安となり、実質的な外貨建て債務がさらに負担が大きくなるという事象に繋がります。

     

     なので新政権は、通貨発行しても返済できないということでギブアップしたといえるでしょう。

     

     これはアルゼンチンやアイスランドが過去デフォルトしたのと似ています。アルゼンチンの場合も外貨建て債務、具体的には米ドル建て債務でデフォルトしました。

     

     アルゼンチン政府は、多額のドル建て債務を返済しようとした場合、大量のペソ売りドル買いをしなければドル建て債務の返済はできませんが、ペソ売りドル買いが、ペソ安ドル高につながり、ペソをたくさん発行してもペソ安となってしまって返済ができなくなってしまいます。

     

     アイスランドの場合も同様で、ユーロ建て債務が返済できずデフォルトしました。本来、アイスランド政府は自国通貨のクロ―ネという通貨を発行できますが、アルゼンチンのケースと同様に、クローネ売りユーロ買いが、クローネ安ユーロ高となることで、クローネを大量に発行してもクローネ安となって返済ができなくなってしまうのです。

     

     アイスランドと国名が似ているアイルランドは、ユーロに加盟していて、ユーロ建て債務が返済できずにデフォルトしています。外貨建て債務でデフォルトしたアルゼンチンやアイスランドと異なり、アイルランドはユーロに加盟しているために自国通貨がありません。しかもデフォルト直前まで財政黒字を計上していました。

     

     アイルランドの場合は、外貨建て債務ではなく共通通貨建て債務によるデフォルトで、ユーロに加盟している国は、たとえドイツであってもデフォルトすることはあり得ます。

     

     アイルランドのケースでは、金融機関がユーロ建て債務を抱えたまま破綻し、アイルランド政府が救済したことでユーロ建て債務を抱えました。いくらアイルランド政府が財政黒字だったとしても、金融機関がユーロ建て債務を抱えたまま経営破綻して、それを救済するとなれば、たちまち共通通貨建て債務を抱えて、政府の財政が破綻することがあり得るのです。

     

     よく政府の負債といえば、「”いわゆる”国の借金」などといって、負債対GDP比率が238%の日本は将来破綻するなどという言説がありますが、日本政府の借金は、レバノンや、上述でご紹介したアルゼンチン、アイスランド、アイルランドのケースと異なり、100%円建て債務であるため、何ら問題がなく、財政破綻する確率は”極めて低い”ではなく、財政破綻する確率は”ゼロ”です。

     

     

     というわけで今日は「レバノンのデフォルトと過去デフォルトした国の事例について」について論説しました。

     読者の皆様のおかれましては、日本が財政破綻することはあり得ないということを十分にご承知かと思います。

     一方で、レバノンのデフォルトをきっかけに、日本の財政破綻を煽る言説が蔓延る可能性があると思っております。

     どうか読者のみなさまにおかれましては、日本は100%財政破綻しないし、100%内国建て債務なので物理的に財政破綻することはあり得ず、日本政府の財政について心配する必要がないことをお伝えいただきたく思います。

     

     

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